第25話 新しい未来
■ヒメノ・ヒメ視点■
休み前の夜、チンチンと2人でモブから、たっぷり、と〝お情け〟を戴いたあと、モブの肩口に顔を埋めて朝まで眠る。
ここが、わたくしのお気に入りだ。
あのダンジョンの落ちた穴の底で、不安に押し潰されそうなわたくしの心を救ってくれたのが始まりだ。
多分わたくしを救うために魔力が枯渇して目覚めないモブに添い寝して、それでも消えぬ不安に、思い切って抱きついて彼の肩口に顔を埋めた時、無意識か、それともただの
そのまま、わたくしは大きな安らぎに包まれて眠る事ができたのだ。
だから、わたくしがモブに添い寝する時は、ここが、定位置である。
反対側は空いているから、チンチンが……えっと、その…つ、使っても…い、良いのよ……
でも、チンチンが、そこに、顔を埋める事はない。
チンチンのお気に入りは(笑)モブの脇腹だ。〝お掃除〟を終えてからそこに、ぴとっ、と身を寄せると、待っていたようにモブの両腕がわたくしとチンチンを優しく抱き締める。
そのまま、わたくしたちは3人で朝まで安らかに眠るのだ。
あ、嘘です、ごめんなさい(笑)。
眠りにつくのが『朝』です(笑)。
妖精さん、妖精さん、わたくしの『嘘』を天使さまの元へ運んで浄めて貰ってくださいっ!
『嘘』には魔力が宿ると大魔導師さまが仰った。それも『穢れた魔力』だ。だから『嘘』をついたら直ぐに『妖精さん』を呼んで天界にいらっしゃる『天使さま』に穢れを浄めて戴くのよ……
まあ、わたくしが5歳の頃の話だから、
それでも、わたくしは今でもうっかり『嘘』をついたら妖精さんを呼ぶ癖が消えない(笑)。
『嘘』で思い出した訳でもないけど、あの『買いグーひ』というの、楽しかったなあ……お母さまに知られたら、絶対に暫くは外出禁止よね(笑)。
でも、チンチンと3人並んで歩きながらお互いの〝食べ掛け〟を口にする……罪悪感が半端なかったわ(笑)。
食事のマナーとか、本当に厳しかった。歩きながら食物を口にするなど……第七皇女のお屋敷に居た頃なら在り得ないわよね(笑)。
そんなお母さまも、ここ(モブ屋敷)にいらしてからは、モブに言わせると何だか〝はっちゃけている〟らしいから、大丈夫かしら。
何故だかモブって、ああいう悪い事、得意よね。スルのも。サセルのも。
わたくしも、どん、どん、えっちでイケナイ女になっていくわ(笑)。
でも、モブって『えっちな女』が大好きなの知ってるんだからね。
■
来ちゃった(笑)。
あのめくるめく夜が明けて、わたしは直ぐに家を売った。
その翌日、ここ(モブ屋敷)に来てモブさまに『入居』をお願いしたら、「そういうのはヒメの管轄だから」と一番避けたかったお返事が……(笑)。
それで今、わたしはお
豪奢な応接セットの上座にお
わたしは手前に跪いて……いや、ちゃんとソファーを宛がわれているが。
改めて『入居』をお願いしたのだが、お
お隣の
「ここからでは冒険者ギルドに通うのにも遠過ぎるのでは?」
お
「お
わたしは昨夜のシミレーション通りに返事をする。
「ああ、そうでしたね……モブの昂りを諫めてくださったのでしたね」
お隣で
『諫める』とか、意味違いますけれどぉ?
わたしは仕方なくあの夜の状況をあれこれ説明をしている内に、モブさまに愛されていた時の多幸感やら、何度も気を失うほどの絶頂を繰り返していた事を
すると、何故かお
「そうよね、モブのって、凄いのよねっ♡」
ちょろ…い、いえ、いえ……素直な反応…恐れ入りましてございます。
結局、入居を許されて個室まで戴いた。
ただ、わたしはここではなく別の場所で仕事をしなければならない。なので、お家賃を……と申しでると鼻で笑われた。そんなことより1人でも多くの優秀な冒険者を育ててくれ、とのお返事だった。
確かに考えてみれば、この【タダノ・ヒメノ屋敷】は『第七皇女殿下』時代の資産をそっくり持ち込んでいる。それは、ご母堂さま(ここでは『大奥さま』)のチン王国の第一皇女殿下時代のアイントハルフ王国へのお輿入れ時の貢ぎ物が原資となっている(裏の話をすると、本来、後宮序列二位のお立場だったご母堂さまを差し置いて宰相の娘をその地位に据える見返りとして、『お輿入れ時の貢ぎ物』全てをいずれお生まれになるお子に相続させる密約があったのだ)。
更に、今ではアイントハルフ王国の『預かり』の立場ではあるがそのチン王国の現在の第一皇女殿下がこの【タダノ・ヒメノ屋敷】の第二夫人である。
それだけではない、数年後にはモブさまがこの辺境都市ウルヒを治める領主さまとなる。辺境都市と莫迦にはできない。この都市には多数の『ダンジョン』と、優れた卒業生を多数輩出する『魔法学園』がある。つまり、それらに関わる全ての収益を概算するだけでも並の都市の比ではないのである。
加えて、モブさまの『異世界』の知識。← は、まだ開花していないが、いずれ巨万の富をこの地に
はっきり言って、この【タダノ・ヒメノ屋敷】の資産は、既にアイントハルフ王国の国家予算を超えている。
そして、わたしの場合は、入隊式でなく、入居式だったが……
良い歳の女が『裸エプロン』で尻振りダンスなどと、
ただ、それを察してくださったのか『大奥さま』が一緒に踊ってくださった。もう、大奥さまのお部屋に足を向けて寝れません。
でも、お陰でこの【タダノ・ヒメノ屋敷】の皆さんの『お仲間』になれた気がする。
そして、この〝
お姉さまほどではないが『回復魔法』をスタンバっておく(勿論、モブさま用ではなく、自分用だ(笑)…気絶して終了とか、ご免である(笑))。
だって、次回からは良くて週1、多分2週間に1度、しかも若い人たちと10人くらいご一緒する……そうだ(笑)。イクイクさまから申し送りがあった(笑)。ちらっ、とメンバーを訊くとラクとかクルと一緒らしい……一回りも歳が違うのよぅ(笑)。
でも、考えてみればこの【タダノ・ヒメノ屋敷】を開かれた当座は10人くらいしか住んでいなかった筈だ。それが、今では170人超え(入居時のわたしの序列は174位である(笑))。しかも、全員若い美人さんで、全員モブさまの〝お手付き〟って……まあ、コメントは致しません(笑)。
それより、今夜に備えてお風呂で隅々まで磨きあげますわよぅ♡♡♡
*
「そう言えば、あそこのメイド長は使えそうだったなあ…」
オレは、ふと、思い出して口にだしていた。
今はオレの寝室でヒメが満ち足りた顔で首元に抱き付いている。ここがヒメのお気に入りらしい。
そんなオレの掛布の下半身が盛りあがっているのはチンチンが、ぱっくん、しているからだ。まあ、あれだ、〝お掃除なんとか〟いうヤツだ。ヒメが時々代わると言ってもチンチンが
このお屋敷では、基本的に週休2日制だ。働く時は一生懸命働く。その分休む時も一生懸命だ。尤も、休めない部署もある。厨房とか掃除・洗濯とか門番・守衛とかである。そこは交代制でお願いしている。
そして、最近、週終わりの休日前の夜はこの2人の〝最強タッグ(そう呼ばれているらしい)〟がローテである。
何しろ『回復魔法』と『催淫魔法』の遣い手が揃っていては、〝半永久機関〟である(笑)。
いや、笑えないけど。
尤も、全てのローテにレベルの差こそあるが『回復魔法』の遣い手がカップリングされている。
プーとか、ナコチとか、メイド長とか……やれ、やれ、である(笑)。
ご母堂さまもローテの隙間を見つけてはお渡りくださるのは内緒、いや、公然の秘密だ。
「メイド長は使えそうとはどういう事です?」
ヒメがオレの呟きに問い掛けてきた。
オレは
「成る程、それは良いかも知れませんね……」
ヒメがお気に入りのオレの肩口に顔を埋めたまま答えてから、ついっ、と顔をあげた。
「ん?…モブぅ、
「いや、違うから」
「では、何故
「〝愛し合って身体を重ねた者にしか【真名】は判らない〟……昔からの言い伝えですよね?」
いつの間にかチンチンが、ぱっくん、を終えてオレの右横(ダンジョン同様、左隣がヒメ、右隣がチンチンらしい)に身体を横たえて会話に加わってきた。
オレは返事の前にチンチンの唇を奪い〝労をねぎらって〟から答えた。
「オレには顔を見た女の人の【真名】が見えるんだよね」
「「えっ?」」
2人の姫が異口同音に声をあげた。
「まあ、異世界転移のチートかも知れないけどね」
チンチンにもオレが『異世界人』である事は伝えている(今のトコロ知ってるのは、ヒメとチンチン、大魔導師さまにギルマスだけだが)。
そして、突然思いついたようにヒメが言った。
「そう言えば、わたくしにはモブの【真名】が見えないわ……チンチンは?」
「わたくしにも見えません」
「まだ、愛が足りないのかしら?」
ヒメが《あれ》を抓った。
おやめください、気持ち好くてクセになります。
「実は、オレの【真名】はオレにも見えない……いや、【真名】だけでなく、何故か【本名】も伏字になっていて判らない」
「「なんですって?」」
2人が顔を見合わせた。
「まあ、転移者というのもあるかも知れないけど……考えてごらんよ『愛し合って身体を重ねた者同士は【真名】が判る』というのなら、この屋敷に居る全員がオレの【真名】を知っている事になる」
「あっ……そうよ…ね」
「お殿さまは誰に対しても〝手を抜いたりしない〟ですものね」
「当然じゃないか、皆んな可愛い〝オレの女〟だものっ!」
「という事は……あれは只の伝説?」
「夫婦は真実の愛で結ばれなさい……という先人の教えかも知れないね」
オレの言葉にヒメが、ちろん、とジト目をくださる(笑)。
「少ぅし、上手く
「そう言えば、男の顔はあまり見てないけど、判るかなあ?」
オレは何気に話題をズラしてどうでも良い事を口にしてから、ふと、思った。
「あれ?……このお屋敷って女性ばかりだよね?……門番も、守衛も……」
オレの言葉にヒメが何やら気拙そうに掛布に顔を隠した。
「それは勿論、お
「えっ?、そうなの?」
「だってぇ……」
掛布から半分顔をだしたヒメが、もじ、もじ、しながら答えた。
「…このお屋敷で仕事をする、という事は……モブに抱かれる、という事じゃない……」
「えっ?、そうなの?」
「そうでございます」
何故かチンチンが自慢気に答えた。
「勿論、『避妊魔法』は全員に掛けてるけどぅ……万一お子ができたら『お世継ぎ』の可能性もあるのだしぃ……変な女を側には置けないわよぅ」
「う~む(笑)」
何故か2人の姫に、しっかり、手綱を握られてる感、満載ですが?
「でも、チンチンも元気になったし、2人が居ればオレは幸せだけどね」
オレは微妙に話題を逸らせた(笑)。
「お殿さまとお
「もぅ、なに言ってるのぅ……わたくしはチンチンが側に居てくれるだけで嬉しいのにぃ♡」
「そうだよ、こんな美少女のお姫さま2人を〝両手に花〟できるなんて、オレの人生のLUC(ラック=幸運度)を使い切ったかも知れない(笑)」
「それに就いては【寿命を延長する秘薬】を研究しています」
チンチンが当たり前のように言った。
「いや、なにそれ?」
「だ、だってぇ……モブには長生きして欲しいもの……」
恥ずかしそうにヒメが言った。
「わたくしたちエルフは
チンチンの言う事は正しい。正しいが……
「あれ、それってもしや……」
先日の大魔導師さまとギルマスとの【秘密のミッション】が思い浮かぶ。まあ、ヒメたちも承知だとは聞いていたが。
「騙すつもりはなかったの、ホントよ!」
「でもお殿さまがギルマスさまに本気になられたら…と、お
「だってぇ、いつの間にか、ここに住んでるしぃ…」
「あ、えっと、それは……何でも、離婚して広い家に1人で居ると淋しい……とか、言ってたかな?」
しかし、オレのその言葉を完スルーしてヒメが訊いた。
「それで、ギルマスのは……よ、良かったのぅ?」
「莫迦だなあ、オレの一番はヒメ、二番はチンチン、これは何があっても変わらないっ!」
そして、オレは視線を泳がせて続けた。
「あ、あっちだって……そ、その順番は変わらないさあ」
オレは本心でそう言ったのだが、その言葉に納得したのかしなかったのか、ヒメは興味なさそうに話を変えた。
「それは、まあどうでも良いわ……いずれ正式な『側室』とか、あれこれ『しがらみ』も、嫌でも増えるしぃ……何処ぞの姫やら、何処ぞの貴族の娘やら、縁を結ぼうと貢ぎ物を抱えて擦り寄ってくる……」
まあ、第七皇女時代の自分の立ち位置を思いだしたのかも知れなかった。
「いや、こんな辺境領主にそれは無いんじゃない?」
オレが首を捻るとチンチンが意外な事実を伝えてきた。
「いえ、既に他国から3件、国内の貴族から4件、お話が来ております……まだ、わたくしの処で止めており、お
「やはりね……
「申し訳ございません」
「別に構わないわ……わたくしのトコに話が来ないというのは〝大した相手ではない〟という事でしょう?」
「そうでもないのですが……今はまだ他になすべき事があろうかと」
「ああ、それはそうね」
オレの頭の上を2人の会話が行き来する。
「でもね、良い女が何十人、何百人、増えても、モブは譲らないっ!……モブは、わたくしとチンチンのだからねっ!」
「勿体ないお言葉です」
「それは違うわ……わたくしこそチンチンに返し切れない恩を感じてるのよ」
「はて?……わたくしには思い当たる節がございませんが……」
チンチンの言葉にヒメは少し
「…………あの【解呪の儀式】の夜、当然2人は結ばれると誰もが思っていた……だって、廊下にまで響く悲鳴をあげ続けて、漸く解呪がなって…」
ヒメがチンチンに手を差し伸べる。
「…モブに恩を返すには《それ》しかないじゃない!」
チンチンもヒメの手を握り首を左右に振った。
「お殿さまの《初めて》は『第一夫人』になられるお
「わたくしに、モブの《初めて》残してくれて、本当にありがとう」
ヒメとチンチンの話にオレは口を挟めない。
……と、オレの胸の辺りで握りあっていた2人の手指が降りてゆく。
いや、いま《そこ》を握るのは如何なものかと……
「イクイクが言ってたわ……2人で握っても余るのって、相当凄いらしいわよっ♡」
「流石、お殿さまですぅ♡」
「いや、えっと……」
「でも、まあ、今後どんなに良い女が現れても、《これ》はわたくしとチンチンの所有物なの、判った?」
「肝に銘じておきます、お
その後3人で濃厚な、ちゅー、を交わして唇を離すと、ヒメが急に泣きそうな顔で言った。
「でも、でもね、わたくしは……わたくしは、ね……」
何か胸に
「わたくしは、モブを見送るなんて、絶対に嫌だからねっ!……あの世に召される時はモブの腕の中で逝きたいの!」
「いや、何年……何十年先の話だ……」
「何百年先の話、にするべく研究しております」
チンチンの顔が、マジ、過ぎて怖いんですが(笑)。
しかし ――
「判った……その時は必ずオレの腕の中で見送ってやる」
ヒメがオレに抱きついてきた。
「絶対だからね、約束したからねっ!」
「わたくしも、お
(いや、『手配』って何?……マジ顔、怖いんですが?)
その夜はいつにも増して周回を重ねる事になってしまったのだった。
こんなにもオレを好きでいてくれる2人のお
オレとオレたちが迎える新しい未来を見据えて、これからやらなければならない事が山積みである。
本当に、誰が、何の目的で、オレを、この世界に呼んだのか。まだ見えてこない何かと戦えるだけの力を蓄えよう。オレはそう決心したのだった。
【第一章 おわり】
【つづく】
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