第23話 新しい世界
オレは最近はヒメに任せきりだった竜騎隊の訓練場にやってきた。
いや、只の朝の散歩だが(笑)。
まだ早朝だったせいか人も見当たらない。
……すると、まだ歳若い美少女が『竜舎』から、ぴょこん、と顔をだした。
何か匂いでもかぐような仕草をしてオレに気づくと、ちょこ、ちょこ、歩いて近づいてくる。何故か裸足だ。
オレは多分この屋敷に住まう(つまり仕事を持った)女性は全て把握しているつもりだった。
しかし、彼女の顔に見覚えがなかった。
何処からか紛れ込んだか、とも思ったが門番や守衛が見逃す筈もない。
危険な感じはしなかったが一応警戒しながら見ていると、オレの側まで来ていきなり、ぴとっ、と胸に顔を埋めてきた。
「えっ?……えっと、君はだれかな?」
頭を優しく撫ぜながら訊いてみる。
撫ぜられたのが嬉しいのか目を細めて「くぅ~」と声を洩らした。
誰かの妹だろうかと考えていると、竜舎からプーの妹のプル(現在、竜騎隊の見習いである)が顔をだして慌てた風に、きょろ、きょろ、している。
「どこ行っちゃったのよぅ……
その声に反応してオレに貼りついていた美少女が振り返ってまた「くぅ~」と鳴いた(えっ?、鳴いた?)。
「ああっ――っ!、そんなトコに居た~~~っ!……って、お殿さま~~~っ!」
プルが猛ダッシュですっ飛んできてオレから美少女を剥がした。
「も、もも、も、申し訳ごじゃいまへんんっ!!」
美少女は『剝がされた』のが不満そうな顔でオレを見ている。
「えっと、プルたちの妹さん?」
オレの質問に、きょとん、としてから慌ててプルが言った。
「こ、この子は姉の騎竜です!」
「はいぃ?」
「ええと、この子は姉の騎竜の
色々と衝撃だ(笑)。
名前の
『
それから……と、プルは言い難そうに頬を染めて言葉を続けた。
「空を飛行中に、この子の上で姉と『魔力補填』をしたり……い、イチャイチャしてるのを見て……う、う、うらやま…しかった…のでは…と…」
確かに最近プーとプルに手伝って貰って『飛行魔法』の距離を延ばす訓練をしていた。つまり、飛行魔法でプーの騎竜と並走しながらMPが減ってくるとこの騎竜の上で魔力の補填(つまりエッチい、ちゅー、だ)を受けていたのだ。
当然その時手放しという訳にはいかないので、騎竜の操作というか運行を妹のプルにやって貰っていたのだ。
他人の騎竜の操作は経験にもなるからとの事だったのだが。
イチャ、イチャ、してたかなあ?
ああ、少しはしてたかなあ(笑)。
最近、プーとか竜人たちの『夜のターン』の時、彼女たちの尻尾を弄った時の反応が可愛くて、空の上でのMPの補填中にも良く弄っていた。
でも、それを見ていて自分もして欲しくなって人化したというは、些か無理があるのでは?
「ですから、次の…あ、アレの…と、とき…」
何かヤバめな発言がでそうな気がして、オレは慌てて言った。
「そ、そろそろ、朝食の配膳とか手伝いがあるから…えっと、またね…プーの?…名前、なんだっけ?」
オレはありもしない仕事(朝食の配膳)にかこつけて、その場から逃げだしたのだった。
しかし、異種族……いや、
騎乗中の〝不適切行為〟に感化された……とか、ホントなら笑えないんですが?
*
それから数日後、今度はロリ美少女が屋敷に遣ってきた。
いや、外見で判断してはいけない。
見掛けは〝ほぼ幼稚園児〟にしか見えないこの女性は実は……
名前=ナプ・シクル(本名=シクル・ビジュラル(王族)・真名【※※※】・ナプルポップ)
性別=女(経験値=※※※)
年齢=153歳
種族=サキュバスハーフ
レベル=3085
ジョブ=大賢者(闇魔法遣い、※※※※※)
HP=421765/421765
MP=1698452/1698452
STR=552
VIT=329
DEX=12982
AGI=38527
INT=128973
LUC=12893
【真名】が非表示なのは納得だが、『女(経験値=※※※)』← ここも非表示の女性は初めて見た。まあ、153歳で『処女』とか……まあ、無い事も無いか?
それに、レベル、MP、INT、がバカ高い。ジョブの非表示の部分、怖いんですけど(笑)。って言うか『大賢者』で『闇魔法遣い』って、相反してないですか。
しかも、開口一番 ――
「お主、奇妙な術を遣いよるのう?」
こ、怖いんですが?
その時、チンチンが応接室に飛び込んできた。
「お、お師匠さまっ!」
成るほど、チン王国でのチンチンの魔法の師匠だったらしい。
応接室に入ってきたチンチンがオレの隣でなくロリババアの隣に、ぴとっ、と坐った。
チンチンや、女性相手でも、少々フレンドシップが過剰な気がするよ(笑)。
その夜。ヒメの部屋にチンチンが居ない(勿論、そこはチンチンの部屋でもあるのだが)。
「チンチンは今夜はあのお師匠さまと客間で休むそうです」
「ふ~ん」
「モブったら、ヤキモチかしらあ?」
「いや、相手も女性だし……」
「なんでもぅ、女性だけれど、女性を喜ばせる《お道具》をお持ちだそうですよ?」
「なっ!?」
(あのロリババアなら有り得るっ!)
しかし、翌日それとなく訊いてみると、
「わたくしの〝ここ〟はお殿さまにしか開きませんわっ♡」
との返事だった。も、勿論、信じてたさあ……うん、勿論……
*
更に数日後、今度はこの街にある『魔法学園』の理事長が屋敷に遣ってきた。
何でもヒメとチンチンに魔法実技の講師になって貰いたいそうである。
我々〝外様〟がこの街に根を張るにはとても良い機会なので喜んでお受けした。
それにしても、この『魔法学園』は他国からも評判を聞きつけて入学希望が絶えないそうである。理事長はお若い美人さんだったが、大したものである。
更に翌日は、教会の司祭さまが遣ってきた。
こちらの方も、お顔もスタイルも素晴らしく、信者が多いのも納得である。
何のご用だったのか、さっぱり、判らなかったが彼女の視線が些か怖かった。
またある日は、街の行政を司る執行官さまが屋敷を訪れた。
何故かこの方も大変な美人さんだった。
税金の納付に関するお話だったが『執行官さま』というのは行政府の長だと思うが、そのような案件は窓口業務の平事務員でも良いのではと思った次第。
はて、さて……
何やら〝千客万来〟だが、それだけ我々の存在がこの地方都市にも影響を与え始めている証ではないだろうか。
と、思っていたのだが ――
その夜……
「なんでモブに関わってくる女性は、下半身のフットワークの軽そうな美人ばかりなのよぅ!」
何故か連日の来訪者に対し、ヒメが、ボヤいている(笑)。
「
「あの冒険者ギルドのギルドマスターだって、バツイチの独身で、すっごい、美人だって言うしぃ!」
「先日来た『魔法学園』の理事長って、まだ26歳だっていうのにあの色気、理不尽だわっ!」
「教会の司祭さまって、なんのご用だったのよぅ!」
「今日来た執行官さまって、絶対にモブに気が有ったわよねっ!」
いや、メイド長以外は手をだしてないですが?
【つづく】
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