第17話 虜囚

 第三皇女に捕らえられてから、3日3晩、オレは拷問を受けていた。


 例の魔法の発動を阻害する『魔道具』を填められた両腕を天井から吊るされ、両足首には重りの付いた鎖が填められている。

 それ以外は〝素っ裸〟にされ、代わる代わるメイドたちに〝ナニ〟を嬲られ続けていた。

 3日3晩だ。

 いや、〝拷問〟だろ?、これ?

 幾ら美形の若いメイドたちからの責めとは言え、これは〝拷問〟だっ!

 その証拠に時々思い出したようにこの〝拷問〟を指揮する不っ細工美形なメイド長が訊いてくる。

「そろそろ喋る気になったか?」


 如何にも悪のアジトで〝拷問〟している女が言いそうな台詞だろう?


 何を聞きだそうとしているかと言えば、『飛行魔法』や他の未知の魔法のレジメだ。

 まあ、魔法ではないし『魔法陣』のレジメなど、そもそも存在しない。

 更に、この不っ細工美形なメイド長は『闇魔法』を使えるらしく(物凄く嫌そうな顔でオレの唇から流し込んできたが(笑))、どうやら『精気』と共に『魔力』を吸い取れるらしい。

 つまり、部下に『ぱっくん』させて『どっぴゅん』させればオレの魔力が枯渇する……らしい。

 しかし、3日3晩、責められ続けてオレは未だ一度も『どっぴゅん』していない。

 まあ、不っ細工美形なメイド長は常時この拷問部屋に詰めている訳ではないからして、未だそのコト未どっぴゅんに気付いていない。『ぱっくん』担当のメイドたちも交代制なので、やはり気付いていない。

 別にオレが必死に我慢している訳ではない。担当のメイドたちが特別下手という訳でもない。多分だが、チンチンがあの回廊で注入してくれた『闇魔法』の方がレベルが高いのだろう。


 それより、なにより、腹減ったなぁ(笑)。


 3日3晩、飲まず食わずだ。こっちの方が『拷問』だっての(笑)。

 そんな事を考えていると扉が開いた。

「どうだ、喋ったか?」

「いえ、まだです」

「もう顎が疲れました……メイド長、代わってください!」

「いや、わたくしは…(こんな不細工な男のモノなど、絶対に嫌だ)…」

 そこへ初めて屋敷の主第三皇女が現れた。

「おい、もう吐いたか?」

「いえ、まだ……」

 メイド長の返事に第三皇女がまなじりを吊りあげた。

「お前が咥えてさっさと吐かせろっ!」

 主の命令では逆らえない。

 美しい顔を最大限歪めてマジ嫌そうにメイド長が、ぱっくん、してきた。

「お前もマジ下手糞だなあ、メイド長さんよっ!」

 オレはここぞと挑発する。

「さっきの『顎が疲れた』と言ってたの方が丁寧で気持ち良かったぞ?」

 わざとらしく挑発して、大して美人でもなかったさっきのメイドを、ちら、見ると嬉しそうにしている。

 一方でプライドを傷つけられたメイド長が咥えたまま上目遣いで睨んできた。

 そのタイミングでオレは腰を突きだしてやった。

「ぐふっ!?……おげぇ、げほっ!?」

 メイド長の咽奥をピンポイントで抉ったようで嘔吐えずきながら吐き戻した。

「……ったく、何をやっとるかっ!」

 第三皇女が怒りも顕わに怒鳴った。

「メイド長、お前の責任だ……下の口で咥え込んでやればコヤツも鼻の下を伸ばして何でも吐くだろう!」

「わ、わたくしが……で、ございますか?」

「他に誰が居る?……さっさとしろっ!」

「い、嫌でございます……こんな不細工な男のモノなど、絶対に、絶対に、嫌でございます!……死んでも嫌でございます!」

「メイド長、二度は言わんぞっ!」

 主人の一喝で流石のメイド長が震えあがる。

 メイド服のスカートの中に手を入れショーツを脱いだ。黒だ。エロい(笑)。

 そのままスカートを被せて腰を寄せる。

 オレが天井から吊られて立った状態なので、爪先立って腰を前にだせば入るかも知れない。

 しかし、この女メイド長、入れた振りで済まそうと見える。

 オレとしてもこんな女メイド長で〝脱童貞〟とか真っ平なので入れようとしたら膝打ちしてやろうと思っていたが、とんでもないクズだった。

 指摘してやろうと思ったが主人第三皇女が気づいてスカートを持ちあげた。

 そのまま何も言わずにメイド長の顔を殴り飛ばした。

 見事に2メートルはすっ飛んだ。

 その側に立っていたメイドを指差して第三皇女が命令する。

「お前、パンツだけでなくスカートも脱いでここへ来い!」

 真っ青になったメイドB(笑)が言われた通りの恰好で遣ってきた。

 流石に今度は入れられそうだ。

 オレは、第三皇女を睨んで言ってやった。


「止めろっ!……オレは初めてはヒメさまと決めてるっ!」


「なんじゃ、わらわとシタイとは、身の程知らずじゃの?」

「違ーうっ!! 誰がキサマみたいな〝アバズレ〟とっ!……経験人数47人って、呆れて言葉もねーよっ! どんだけヤリ捲くったんだよっ! あの宰相のジジイも咥え込んだのか? いや、あのジジイ、つのか?」

 オレは〝糞アバズレ〟に捲くし立てたが、多分『経験人数47人』とか指摘しても多過ぎて自分のコトと理解できていないのだろう。まあ、オレには間違いないのだが。


「オレが初めてを捧げるのは、第七皇女、ヒメ・ビジュラ・真名【※※※】・アイントハルフェン殿下だーっ!」


 オレは最近手に入れた『※ スキル【視線遮断】』を使ってメイドたちに見えないようにして〝糞アバズレ〟に向かって、ヒメの【真名】の部分は口を動かすだけにして叫んだ。

 オレが使うのはこの世界の言葉ではない。口を動かすだけで『おん』が正確に伝わるか心配だったがヒメの【真名】をメイドたちに知られる訳にはいかない。


「な、何故キサマごときが、アヤツ第七皇女の【真名】を知っている?」


 大丈夫、伝わった。

 オレは第三皇女の動揺に手応えを感じて言ってみた。

「お前の【真名】をここでバラシてやろうか?」

「なっ!……は、ハッタリを申すでないっ!」

 オレは『※ スキル【視線遮断】』を使ってもう一度〝糞アバズレ〟にだけ見える位置で口を動かし、第三皇女の【真名】を口にした。


「なっ!?」


 〝糞アバズレ〟の顔色が変わった。

「その頭でも理解できたかい?」

「な、ナンのコトじゃ?」

「ホント、頭悪いなあ……ここでメイドたちにお前の【真名】をバラしても良いのか、と言ってる!……そこのメイドたちに【真名】を知られたら、お前の将来は奴隷堕ち、いや性奴隷一直線だろうがっ!」

「なっ、なにぃっ!?」

 奴隷商人の中には【真名】を使って女奴隷を性奴隷に堕とすスキルを持った者が居る。

「さあ、判ったらオレを解放しろっ!……おい、そこの不っ細工なメイド長、オレの縄を解けっ!」

 オレの言葉に美形を醜く歪めコメカミに青筋を立てたメイド長が第三皇女を見遣る。尤もメイド長の頬は真っ赤に腫れあがったままなので、笑えるのだが。

 第三皇女が引き攣った顔で頷くとメイド長がオレの縄やら鎖やらを解きに掛かった。その作業をしながらメイド長がオレの耳元で囁いた。


「次にお目に掛かる折には『殿下』の真名をお教えくださいませ」


 喰えないメイド長だった。

 一方、第三皇女は悔し紛れにトンデモ発言をした。


「しかし、あんな女第七皇女傍惚おかぼれしていたとは、お笑いじゃの……アヤツ第七皇女は、今回のウルヒでの不手際の謝罪の為、辺境都市ウルヒを治める辺境領主に下賜かしされる事が決まったわっ!」


「なっ!?」


「本妻もるし、側妻そばめも多数る、はてさて、どんな扱いになるのやら?」


 その事実は衝撃だったが、今はここを離れるのが吉だ。

 オレは足の枷を外し終えたメイド長の耳元で囁いた。

「おい、さっき脱いだ黒いヤツパンティを寄越せ……次に会った時返してやる」

 この女メイド長はゲスでクズだが多分使える。

 先ほどの第三皇女の【真名】を餌に手駒にしようと思ったのだ。

 案の定、メイド長はオレにズボンを穿かせるついでにそのポケットに黒い布切れを忍ばせてきた。

「ついでにこの『拷問部屋』の鍵を寄越せ!」

 多分第三皇女が自分で鍵を開ける筈がないと思った通りメイド長が持っていた。

 ここにこいつらを閉じ込めても大した時間稼ぎにはなるまいが、やらないよりはマシだろう。


 身繕いを済ませたオレは第三皇女を一睨みして『拷問部屋』をでると直ぐに鍵を掛けた。

 そのまま階段を登り、オレはバルコニーから夜空に飛び立ったのだった。

 行き先をどうするか?

 ヒメには会いたいが第七皇女の屋敷は今は色々とまずかろう。


 オレは飛行魔法で高く舞いあがり、ウルヒのあの拠点としていた酒場を目指したのだった。



            【つづく】

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