第15話 帰国

   ■ヒメノ・ヒメ視点■


 わたくしはとても酷い夢にうなされて目を覚ました。

 手に嫌な汗が、じっとり、と浮かんでいた。

 モブがチンチンを解呪できたので役目を終えて元の世界に戻ってしまう……そういう夢だった。

 とてもありそうで怖くなった。

 着替えもせずにモブの部屋まで来た。

 戸を開けるのが怖かった。モブの居ない生活など考えられなかった。

 震える手で戸を開けた。

 居た。

 ベッドが人の形に膨らんでいた。

 それでも、わたくしは確かめずにいられなかった。

 ベッドに登り、向こう向きの身体を上に向けた。

 モブだ。

 愛する人の姿に心臓の鼓動が増した。

 こんなにも、わたくしはこの人が必要だったのだ。

 涙がでた。

 わたくしはモブの横に潜り込んだ。

 王国に戻ったら、暫くは二人きりになるのは……多分、望み薄だ。


 わたくしは決心した。

 世間から、はしたない、と後ろ指を指されても構わない。

 今から、になろう。





 オレが目を覚ますと、目の前に金色の叢とピンクの渓谷があった。

 渓谷は蜜を、じゃなく水を湛えているようだ(笑)。

 昨日充分過ぎるほどに堪能し、弄り捲くったチンチンの『渓谷』ではないようだ。となれば、他に『金色の叢』の持ち主は1人しか知らない。

「ヒメさま、おはようございます」

 うっかり『さま』付けで呼んでしまったが、それについてはノーリアクション(ノーペナルティ)だった。

「ぷあっ……モブぅ、昨日は本当にありがとう」

 ぱっくん、していたを吐き戻して、ヒメが上機嫌で答えた。現在の体勢はどうやら先日イクイクに教えた『6と9のアソビ』のフォーメーションのようである。

「今朝方ね、嫌な夢を見たの……モブがチンチンを解呪できたので役目が終わって元の世界に戻ってしまう、そんな夢を…」

 何だかオレもそんな予感があったなあ。

「だから、飛び起きてここへ来たの……モブが寝ていてどんなに嬉しかったか」

 そしてヒメが、もじ、もじ、しながら続けた。

「最初は添い寝をしていたんだけどぅ……あのね、お礼だったら……えっと、その…ぱ、ぱ、ぱっくん、した方が良いと思って……」

 つまり、これは、昨日のチンチンを解呪したお礼という解釈で良いだろうか。

 そうであるならば、『ぱっくん』のお返しに『ぺろ、ぺろ』するのが良いのではないか?

 それでも『高貴な渓谷』でもあるので一応お断りを入れた。

「おひいさま、オレも『ぺろ、ぺろ』して宜しいですね?」

「は、はいぃ?」

 イミフな反応?

 はて?

「えっと、ここを『ぺろ、ぺろ』させて戴こうと思っておりますが?」

 『高貴な渓谷』を、つん、つん、して尋ねると小さく悲鳴があがった。

 はて?


「そ、そそ、そこは……母上さまから、婚儀が決まったのち、お床入りまでは、決して自分で触ってはならない……と、きつく言われているのぅ!」


 はて?

 何処かで聞いたような科白だ。

 ああ、昨日チンチンも言っていたんだ。成るほど、この異世界の皇室の教育、半端ねー(笑)。

 しかし、昨日チンチンも問題なく受け入れてくれたし、ヒメも大丈夫だよな?

「まあ、それはそれ、これはこれ、というコトで宜しいかと?」

「えっと……い、良いの、かしら?」

「はい、夕べはチンチンも同じように言っていましたが、問題なく受け入れてくれました」

「えっ?……チンチンにはもう、ぺろ、ぺろ、したの?」

 負けず嫌いなんだよな、ヒメって(笑)。

「はい、ですから、おひいさまにも、ぺろ、ぺろ、させて戴ければ幸いです」

「わ、わわ、判ったわ……『ぺろ、ぺろ』を許可します」


 はい、『ぺろ、ぺろ』のご許可、戴きました(笑)。


 オレは心を込めて『ぺろ、ぺろ』を開始したのだった。

 それから数分 ――

 『ぺろ、ぺろ』慣れしていないヒメの『お口』が疎かになっていた。

 ここは、あれだ。

 体勢を入れ替えて、昨日のチンチンのように『ま●ぐり返し』で責め続けるのが良さそうである。

 オレは上にいたヒメを裏返してから足元に移動して、呆気にとられる彼女に視線を絡ませてから、両方の膝裏に宛がった手を持ちあげて『ま●ぐり返し』で押し開いた。


「ひぃ!」


 まあ、声は洩れるよね(笑)。

 しかし、この体勢で責め続ければ、きっと、幸せな世界に旅立ってくれるだろう。

 ヒメには満足して貰えるだろうとオレは思ったのだった。

 それから小半時、オレは丹念に、丁寧に、ヒメを解し続けた。昨晩、チンチンとの間で培ったスキルを存分に生かして、オレは頑張った。

 だからだろうか、すっかり蕩け顔でヒメが訴えたのだった。


「ね、ねえ、モブぅ……何だか切ないのぅ……こ、これより先に…す、進むのは……ま、まま、まだ、早い…か、かかかし、ら?」


 オレは、昨晩チンチンとの間に築きあげた経験値は、既に使いきってしまった。

 しかし、ヒメは貪欲に更なる高みをお望みのようである。

 これはもう、覚悟を決める時だ。

 その高みへヒメと共に昇るのならば、本望だ。

 オレはヒメの身体をベッドに下ろし、『正常なる位置取り』にシフトした。

 ヒメを見ると、昨日のチンチンと同じように両手で覆った指の間から、真っ赤になりながらもオレの行為を見詰めていた。

 オレは、ギリ、な位置まで腰を進め、大きく息を吸った。


 と、その時 ――


 何やら戸の辺りで声が聞こえた。

「こ、こら、押すな…」

「ダメにょ~戸が開くにょ~っ!」

 そして、6人が雪崩れ込んできたのだった。


 良いんだ、判っていた事じゃないか。これがオレの人生の縮図だ。こういうオチですよね、オレの人生って(泣)。



 結局ヒメの〝猛アプローチ〟は帰国したら今のようには自由に会えないだろうとの危惧からだったようである。実際、その危惧は現実のモノとなるのだったが。


          *


 帰国の途に就いては、先ず2人の竜騎士に先行して王国の首都メカラに戻って貰い、我々の成果を喧伝して貰った後に6人で入場するのが良いだろうという事になった。

 半日ほどの時間をずらし首都の城門の近くに『転移魔法』で移動していた我々は、お祭りムードの住民たちに喝采されながら、一先ずヒメのお屋敷で旅の疲れを癒す事になったのだった。

 第七皇女殿下ともなると大したお屋敷である。

 若い執事2人が大きな扉を左右に押し開く。

 足元から奥に向かって真っ赤な絨毯が続くその左右に美形のメイドが、ずらり、勢揃いして腰を折っていた。

 その奥に、たゆん、とした女性が和風テイストの服装(後で聞いた話だが東方出身のオレに合わせてくださったとか)で出迎えてくれていた。

 ヒメのご母堂さまだとイクイクが耳打ちしてくれた。

 ヒメの母上という事は、『お妃さま』だと思っていたのだが、後宮の序列三位だそうである。第三夫人というのだろうか。

 何しろ皇女殿下も第十四皇女まで居るとこの時初めて知ったのだった。国王、頑張ったね(笑)。

 ヒメのご母堂さまはとても可愛らしいお方である。惚れてしまいそうだ。

 い、いや、いや、いや、国王陛下の奥方さまである。滅多な事を考えただけで、打ち首獄門である。

 ヒメを固く抱き締めていたご母堂さまが、ほかの5人を差し置いてオレの前に立った。

 こういう場合、跪くのか?

 慌てて腰を沈め跪いたオレの手をとり立たせたご母堂さまが言った。


「貴方がモブさまですね……娘を救ってくださりありがとうございました」


 オレの事は、念話ででも聞いていたのか、いきなり名前で呼ばれた。

 そして、いきなりのハグだった。

 ヒメの母上を実感できるボリュームだった。

 良い匂いがご母堂さまの首筋から立ち昇る。

 ヤバい、と思ったがオレの血流が下の方に集まるのを止める事、能わず。

 しかもご母堂さまに、すっかり、バレて~ら(笑)。

トノさまをお持ちね♡」

 高貴な笑みを湛えたままそう言いつつ、ご母堂さまは暫くオレをハグから開放してくれなかったのであるが。



 それからの第七皇女殿下のお屋敷での日々をどう語れば良いか。

 帰国後一週間というモノ、『疲れを癒して戴く』との理由でヒメは疎か他の5人の仲間(ピーとプーは第三皇女の元へ帰らされたと聞いた)にも会えず仕舞いだ。

 それどころか、行動の全てに選りすぐりのメイドたちがついて廻る。

 しかも、朝・昼・晩、メイドたちに、ぱっくん、され捲る日々だった。

 着替えの時に始まり、食前・食中・食後、3時のオヤツも、風呂でも、トイレでも、ぱっくん、され続ける始末だ。

 流石にトイレの後は辞退を申しでたのだが、「お願いします、わたくしたちの仕事を奪わないでくださいませぇ……首にされますぅ」と泣きつかれてしまった。

 終いにはメイドの手配を統括していたメイド長が言った。

「まだ、ぱっくん、していない者は居るか?」

 やっと終わりと思ったら、

「それでは、二周目、いくわよっ♡」

(おいっ!)


 このメイド長、美女が居並ぶ第七皇女家のメイドたちの中でも群を抜いて美形なので、否やは全くないのだが、部下が、ぱっくん、している間中オレの唇を奪いにくるのだ。しかも、オレの手首を掴んで彼女の胸やらお股やらに誘うのだ。

 胸もメイド服の第二ボタンまで常時オープン仕様で、指を差し入れさせて戴くに常に直の柔肌が迎え入れてくださる。お股の方も同様である為大変に、ぱっくん、が捗って困る。

 しかも、このメイド長、名前をミク・マルク(本名=ミク・ルージュ(メイド)・真名【マルチ】・アイントラハト)といい、王家に連なる家系の出であるそうだ。見れば綺麗なエルフ耳だ。

 更に25歳で処女である。いや、25歳の処女を莫迦にしているのでは決してない。世の中には仕事に打ち込んでいたら気が付いたらクリスマスを過ぎていた……という女性も多いだろう。(因みにこのお屋敷のメイドの8割くらいが処女だった。何人か二桁の剛の者も居たが。)

 問題は、処女のミク・マルクさんが、何故にオレの指をお股に誘うか……という切実な案件である。万が一にも大切な《お道具》の内側にキズでも付けたり、(指でそこまではと思うが)一部でも破損させでもしたら大事である。

 その癖、ぱっくん、は未だ未実行である。不思議に思って訊いてみると、


「最後の夜に心を込めて頂戴いたします♡」


 との返事であった。もしかして、処女性との関連かと深読みしたが違ったらしい。

 『最後の夜』との言い回しに不吉なモノを感じたのだが、杞憂であって欲しい。



 それから丁度一週間が経過した朝だった。

 イクイクが来て言った。

「拝謁の日程が決まったにょ、明日にょ!」

 いきなりだなあ。

 国王陛下に拝謁するのだ。手順のレクチャーをしてくれる事になった。ありがたいコトである。

 終わった後で濃厚な、ちゅー、をされた。

 曰く、「おひいさまからお預かりした、ちゅー、にょ♡」

 嘘をつけっ!


 しかも、その他いつものメンバーが交代でレクチャーにやって来た。

 忘れないように、との事。まあ、大事である。

 しかし、その度濃厚な、ちゅー、をしていった。それも口を揃えて「おひいさまからお預かりした、ちゅー、だ」との事。良いけどね。

 思えばマータとチチと、ちゅー、するのは初めてだったかも知れない。

 ピーとプーは第三皇女の元へ戻されたと聞いたから、残るはチンチンだけか。

 淋しいような、懐かしいような。あの【解呪の夜】以来である。

 他の3人同様のレクチャーが終わり(流石、元皇女殿下だ、とても判り易かった)、チンチンが寂しそうに出口に向かう。

 あれ? おひいさまから預かった、ちゅー、は?

 部屋の出入り口にメイド長が不動の姿勢で待機しているので遠慮した?

 オレはチンチンを追い掛けて腕を取り、振り向かせた。

「これをおひいさまにお渡ししてっ!」

 そう言づけてメイド長の真ん前で濃厚なキスをした。

 舌と舌を絡めて、唾液を混ぜ合い、卑猥な水音を部屋に響かせて、オレは息が切れるまでチンチンの口腔をまさぐり続けたのだった。

 チンチンが幸せそうな顔で部屋を辞してオレはメイド長に視線を投げた。

「何か?」

 鹿爪らしい声で訊かれた。

「最終日の、ぱっくん、愉しみにしているよ」

 笑いながらそう言うと……

 えっ? 嘘っ? あのメイド長が頬を染めて視線を逸らせた?



 しかし、翌日……拝謁に向かう城中の廊下でオレは逮捕されてしまったのだった。



            【つづく】

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