第4話 ヒメさま、加護を附与する!

 翌日、オレは何故か清々しい気分で朝を迎えた。

 身体中の疲れが綺麗さっぱり消え去ったような、爽やかで晴れ晴れとした感覚だった。

(まあ、昨日はいきなりの異世界で緊張もしたしな……)

 そんな事を思っていると、部屋の戸がノックされた。

「はい、どうぞ」

 応じたオレの声を受けて戸が開くと、チンチンが着替えの入った大きな籠を持って入室した。

「おはようございます、ご主人さま」

「おはよう、チンチンさん」

 この世界では日本と同じように、名字が先にきて名前が後にくるようだ。

 そして、彼女たちは名前で呼びあっているようで、オレにも名前呼びでどうぞと言われていた。

 その癖、オレの事は『タダノさん』とか呼ぶのだが(まあ、それ以外の呼ばれ方も多いけれど(笑))。

 『ご主人さま』は止めて、とチンチンにきつく申し入れたのだが、断固として聞き入れて貰えなかった。『閣下』とか呼ぶヤツも居るし(まあ、あれは『翻訳機能』のだと思うが)。

「お着替えを持って参りました」

「ありがとう」

 それで話は済んで彼女が退出するのを待っていたのだが、チンチンはオレのベッドの横に立ったまま動く気配がなかった。

「えっと?…着替えるから…」

 暗に退出を促すオレに彼女は当たり前のように言った。

「お手伝い致します」

 それで気付いたのだが、チンチンは『メイド服』を着ていた。

 『ジョブ』が『奴隷』の彼女が『メイド服』を着用して控えられては、オレに逃げ場は(笑)なかった。

 仕方なくベッドから降りてチンチンの前に立つ。

 当然だが、元の世界のオレは平凡な庶民だった。メイドにかしずかれて着替えを手伝って貰うなどという羨ましい経験は、皆無だ。

 想像すらした事がない。

 こんな事なら、その手のマンガでも、もっと読んでおけば良かった。

 メイドさんにエッチなコトをしまくる『薄い本』なら随分読んだが(着替えシーンなどでてきた試しはなかったさ(笑))。

 そんなショウモナイ事を考えている間にオレはパジャマの上下を脱がされていた。

 当然、だ(朝の起き抜けだから非常に宜しくない状況だ(笑))。

 まあ、後は着ていくだけなのでを乗り切れば、と思ったのだが ――

 チンチンがオレのパンツに手を掛けたのだ。

「ちょ、待っ!?」

 オレが脱がされる訳にはモノを引っ張りあげると、チンチンが不思議そうな顔で見あげてくる。

「いや、これは…じ、自分でやりますすすぅ!」

 オレの切なる『お願い』にチンチンはとても良い笑顔で(それはもう、清々しい笑顔で)答えたのだった。


「大丈夫でございます、ご主人さま……昨夜の『お浄めの儀式』の折に、しっかりと、拝見しておりますれば…」


 更にチンチンは笑顔を崩さず続けた。


「朝の殿方は、殊の外〝お元気〟だというコトも、イクイクさまから詳しく伺って居りますので、ご主人さまがお気になさる必要はございません♡」


 語尾にハートマークなど飛ばして言われては、オレはどうするコトもできなかった!

 あの『犬耳狼娘イクイク』を呪いながらオレはスッポンポンにされたのだった。


「今朝はまた一段とご立派な佇まいでございますねっ♡♡♡」


 視線をホールドさせて、うっとり、と見詰める美少女メイドにオレは視線を逸らす他なかったのであるが。


「あのぅ…お辛そうですが、宜しければお口で……えっと、おXxX致しましょうか?……イクイクさまから、ヤリ方はご教授戴いておりますれば?」


 その申し入れには、断固、としてお断りさせて戴いた。

 彼女は、幾分…いや、かなり、残念そうだったのであるが。

 そして、チンチンがオレの足下に広げた『黒の極小ビキニパンツ(男モノだ)』に足を通したのだった。

 その後は、する、する、と着替えが進み、防具は都度『効能』の説明を受けながら装着していった。

 実は、あの〝顔が〟しそうなビキニ(男モノだ)パンツにも『防御率向上』の効果が付与されていたそうだ(いや、ヒメさまがずから魔法で付与されたと、後に本人から聞かされたのであるが)。


 その後一階に降りてメンバーと合流という流れとなったのだが、その折、オレの脱いだパジャマを洗濯してくると駆けていったチンチンが、パンツに顔を埋めていたように見えたのは、気のせいだろう。

「おお、タダノうじ…見違えましたぞ!」

 再会早々にマータから誉め言葉を戴いた。

「馬子にも衣裳にょ♡」

(おいっ!)

 まあ、この世界に『馬子にも衣裳』などという諺がある筈もないが、似たような意味のあざける言い廻しでもあるのだろう。

「閣下、見惚れましたぞっ♡」

 イクイクやチチもそれぞれ頷いて言葉を掛けてくる中、ヒメだけがオレの下腹部辺りの『防具』を気にしているようだった。何故だ?


 その後、遅れて合流したチンチンを交え、優雅に朝食を済ませた我々は『冒険者ギルド』へ向かったのだった(今日は登録だけ済ませるらしい)。



 『冒険者ギルド』では、美少女5人の中にブサメンが1人交じっているのを胡散臭げ見られたが、『鑑定士』のお姉さん(ヒューマン、非処女、経験値=8人(おおぅ!))が、それぞれの『レベル』と『ジョブ』を鑑定して『ギルドカード』を作っていった。

 もしかして、オレの鑑定眼の方が能力が上か……と思ったが、勿論、口にはださない。

 結果的に、レベル300超え(Bランク)1人、200超え(Cランク)1人、他は100台(Dランク)で、パーティとしては『Cランク』となった。

 因みに、オレは『鑑定不能』となり、パーティの〝オマケ〟扱いだった(笑)。一応『Fランク』でギルドカードは作って貰えたが(笑)。

(まあ、良いけどぉ(笑)。実際はレベル1000超えだったりする……もしかすると1000超えると鑑定不能になるのか?)

 因みに何故オレのレベルが1000を超えていたかというと、あの飛竜ワイバーンに対する『※ スキル【かばう】』が(倒したのではないが)大きなレベルアップの要因となったらしい。



 『冒険者ギルド』を出ると、『武具屋』と『防具屋』を回る事になった。

 予算は潤沢にあるらしい。

 まあ、隠しているが『第七皇女』だしね(笑)。

 『武具屋』では唯一武器を携帯していないオレの為に皆で、あれや、これや、と大騒ぎだった。

 まあ、初めてだし『ショートソード』辺りが無難だろうという事になったのだが、チチが思いついたように言った。

「東方では『刀』という武器を使うと聞いたコトがあります」

 流石『鍛冶師』だ。

「『刀』かあ、ちょっと、惹かれるなあ(笑)」

 オレがそう言うとイクイクが直ぐに反応した。

「探すにょ♡」

 店員に案内されて辿り着いたのは店の奥の雑多な場所だった。

「現在当店にあるのは、この一振ひとふりだけですね」

「何だか〝ハズレ〟っぽい剣にょ?」

 イクイクが言えばマータも胡散臭そうに見遣った。

「他の店に行くかい?」

 オレは取り敢えず手に取って抜いてみた。

 『刀』と言っても、刃渡りが30センチもなさそうな『短刀』という分類だろうか。

 軽く振って見ると、オレには馴染みそうな長さ、重さ、だった。

 するとチチが近寄ってきて、そっと、耳打ちした。

「宿に戻ったらあたしが『鍛冶』して最高の切れ味に致しますので、お決めください」

 そして、店員を振り返り、声を大きくして言った。

「大分ゾンザイな扱いだったようですね、半値にオマケなさい!」

「ひぃ!…か、畏まりました…」

 チチの勢いに押されて店員は頷いたのだった。


 次に向かったのは『防具屋』である。

 武器と違い身にまとうモノだと女性陣の目の色が変わった。

 まあ、オレなど実用性最優先だが彼女たちのは半端なかった。

 それぞれ、お目当ての防具のコーナーで、一つ、一つ、手にとっては身体に当てて鏡の前で確認している。

 そんな時だった。

「きゃあああっ、可愛いぃいいいっ♡」

 ヒメが〝ピンク色の声〟をあげた。

 見ると、大きなピンク色のハートマークが付いた胸当てだった。

「どうかな? どうかな?」

 金属製のようだがそれ程重くないようで胸に当てて皆に訊いて廻っていた。

 まるで『不思議の国のアリス』のハートの女王が身に着けていたモノに似ている気がした。

「とてもお似合いですよ」

 そう言うとヒメは、にへら~っ、と相好を崩した。買うのは決定のようだった。

 その後、全員一品ずつヒメのポケットマネーで購入して貰い、ほく、ほく、顔で宿へと戻ったのだった。

 オレにもヒメが選んでくれたという袋を手渡しながら小声で言ってきた。

「後で『加護』を付与してあげますから……」

 それは、ちょっと楽しみでもあった。



 それから数時間後、夕食も入浴も済ませて、後は寝るだけというオレの部屋。

 オレは、この国の皇女さまにパンツを晒している。


 どうしてこうなったかと言うと ――

 夕食が終わって部屋へ戻りしなにヒメが、そっ、と耳打ちしてきた。

「身体を浄めて待って居てください……先ほどの『防具』に『加護』を付与しますので…」

 『防具』に『加護』を付与するのに『身体を浄め』る必要があるのか良く判らなかったが、取り敢えずオレは風呂で身体を綺麗に磨きあげた(笑)のだった。

 それから、さほど時間が過ぎずにヒメが遣ってきた。

 いつも見慣れた『聖職者』の装備ではない、私服姿のヒメにオレの視線は釘付けだった。

 髪型もいつもの、きりっ、としたポニーテールではなく、ふわ、ふわ、のナチュラルウエーブが掛かって肩から背に流れている。

 服装もドレスとまでは言わないが流石に高貴な純白のワンピースで、腰に巻いた金糸で編んだ腰紐がアクセントになっている。

 しかし、いつもヒメのスカートは何故にそんなに短いっ!?

 いや、後ろから見ると床を擦りそうな長さなのだが、『聖職者』の装備の時と同様に前は股下、ぎり、なのだ。

 膝を突いたら絶対見える。

 いや、男としては『ウエルカム』だが、パーティメンバーとしては、色々困る。

 まして、今、個室で二人きりなんだが?

 ヒメ、男にはもう少し警戒しようよ(笑)。


 そして、今オレは、この国の皇女さまにパンツを晒しているのだ。


「先ほど差しあげた『おぱんつ』を穿いていますね?」

「い、いえ、穿いていません…あれは『防具』だったのでは?」

「わたくしが『加護』を付与すれば只の『防具』が立派な『上級装備』になります」

 成るほど『聖職者』半端ねー(笑)。

「身体は浄めてありますね?」

「はい」

「では、穿き替えなさい」

「へっ? 今、ここで?」

「何か問題でも?」

「いえ、ヒメさまにお目に掛けるのははばかられまして(笑)……ちょっと、トイレで穿き替えて参ります」

「構いませんよ……ここでなさい」

「えっ?」

「気にしなくても良いと言っています……だいたい、昨日はわたくしの手で『お浄めの儀式』を行ったのですもの」

「はいぃ?」

 そうだった、チンチンも言っていた。オレが気絶している間に……一体、何があったっ!?

「5人でタダノさんの身体を分担して浄めたのです……特に、その…あ、あなたの身体の中央は……わ、わたくしが担当…い、いたし…ました……ので、今更…か、隠す必要などありませんわ」

(いや、ヒメさまになくても、こっちはあり過ぎなんですが~~~~~っ!)


 そして、今オレは、この国の皇女さまの前でパンツを穿き替えたのだ。


 その間、ヒメの視線はオレの股間に釘付けだった(笑)。

「それじゃあ、そこに坐って」

 ヒメがベッドを示し、オレが坐ると彼女は股の間に身体を入れ、膝を突いた。

(だ、だからそのスカートで膝を突いたら絶対見える……うおぉ、ヒメさま見えてますぅ♡)

 どうやら装備品の【防御率がMAXになる純白パンティ】ではないようだ。フリルなど付いたピンクの可愛いおパンツである。防御率は不明だが攻撃力はMAX間違いなしである。

「わたくしの手からは、自然とが滲みでるらしいのね……だから、子供の頭を撫ぜてあげるとそれだけで頭が良くなったりするの」

 何やら思い出したのか嬉しそうに、くす、くす、笑いながらヒメの両手がオレの股間に伸びる。

 多分、ヒメはオレが今穿いている(ヒメから買って戴いた)真っ赤なビキニパンツ(勿論、男モノだ)に両手を当てる事で『加護を附与』しようとしているのだろう。

 ヒメの掌からは暖かいが滲みでているような気がする。

 暫くそうして両掌を宛がっていたヒメが、小首を傾げて訊いた。

「何だか昨日より硬くなっていない?」

 そして、オレが反応できずにいる間に、ぺろんっ、とパンツを捲ったのだった。


「ひぃんっ!」( ← ヒメではなくオレの悲鳴だ(笑))


 そのまま、ヒメの手が握った。

「うん、間違いない……昨日より硬いし、おっきい♡」

(いや、昨日の状況は想像しかできませんが、今現在、ヒメさまの〝私服のピンクのおパンツ〟を拝みながら、ヒメさまのお手で握られている状況を鑑みるに、我が人生で最高に〝硬く〟最高に〝大きく〟なっている自信がありますっ!?)

 更にヒメがトンデモ発言を為さった。


「殿方の『ここ』って、硬くて大きな方が誇らしいのでしょう?」


(それは、勿論、仰る通りでございますが……)

 オレが返事に窮しているとヒメが更なるトンデモ発言を為さったのだった。


「そうだわ、毎晩わたくしが加護を附与してあげるわね……ええ、それが良いわね、そうしましょう♡」


 それから、ふと、思いついたように彼女が言った。

「あのね、二人きりの時は名前で呼ばない?……わたくしも『モブ』って呼ぶから、あなたも『ヒメ』って、ねっ♡」

 幸せそうにそう言ったヒメはオレの股間に顔を埋めて、はにかんだ、のだった。

 いや、そこは美少女が顔を埋める場所ではございませんので~~~~~っ!

 オレ……絶対、誰かに後ろから刺されるよね?



            【つづく】

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