第2話 ステータスウインドーに驚きが!

「ヒメ、多分こちらのだと思うにょ?」

 オッパイの大きな魔法使い風の美少女がそう言うと、露出過多の筋肉美少女も頷いた。

「うむ、わたしもそう思う…」

「確かに『空間転移』した場所は『おばばさま』のご指示の場所でした……飛竜ワイバーンは想定外でしたが、この場所で出会った『東方から来た異邦人』となれば……」

「うむ、し彼で間違いあるまい」

「奇妙な魔法を使ったしにょ♡」

(『顔が平たい』の、必要な情報かよ?)


 三人がオレを、ちら、ちら、見ながら小声で話しあっている。あとの二人は一歩下がって控えているようだが、立場や身分が違うのだろうか。


 そして、露出過多の筋肉美少女がオレを見てこう言葉を掛けてきた。

「突然の話で申し訳ないのだが、我々にご同行願えぬだろうか?」

「近くの街の酒場で何か食事と酒でも用意するにょ!」

 オッパイの大きな魔法使い風の美少女がそう付け加えた。良く見ると彼女には『犬耳』が生えていた。

(『犬耳』だあ~~~っ♡……それだけで付いていきたい(笑))

 まあ、オレとしても、突然の『異世界転移』で途方に暮れていたのもあった。

 さっきは街を目指そうと思っていたが、問題は、今夜の食事と宿をどうするかだ?

 今の予期せぬ戦闘で体力も使ったし、腹も減ってきていた。


 そして、ここからが、実は重要だ。

 何故なら、オレはパジャマ姿だ。つまり、一文無しなのだ(いや、一万円札を持って居たとしても、使える訳もないのだが)。

 今夜の宿もなし、金もなし、のオレとしてもだったので素直に応じると、近くの街までそこの酒場で話をする事になった。


(『飛んで』?)


 その疑問は直ぐに氷解した。

 ヒメと呼ばれた美少女の周りに四人が集まり手を差し伸べて身体に触れている。いや、オッパイの大きな魔法使い風美少女など彼女と腕を組みオッパイを押しつけている(笑)。

 多分だが(異世界モノを読み漁ったオレの勘によれば)ヒメと呼ばれた超絶美少女が『転移魔法』を発動して『瞬間移動』するのだろう。

「貴方さまも、お早くわたくしに触れてください」

 そう言われて、自ずと視線は、オッパイとか、胸とか、オッパイとか、に向かったのは、まあ、自然の摂理というモノだ(笑)。

 しかし、当然の事に、ジト目、が返ってきたのだった。

「マントですわ!…マントの先に触れるだけで大丈夫ですから!」

(いや、オッパイ美少女ちゃん以外ももっと身体に触れてるじゃん?)

 まあ、反論は諦めて地面に擦りそうなマントの先を摘まんだ瞬間 ――

 視界がブレた。

 次の瞬間、オレたちは門の前に立っていた。


 ―― すげーっ! まほー、すげーっ!!!


 それから、街の門の衛兵に『通行証』のような物を見せて我々は中に入ったのだが、一人だけ違和感のあるオレ(パジャマだし、裸足だし)はあれこれ詮索されたのは言うまでもない。


 そして、目当ての酒場に入り食事と飲み物を注文してから、中央の(坐った位置も中央だ)〝超絶美少女〟が話し始めた。

「まずは、自己紹介からさせてくださいませ……わたくしは『ヒメノ・ヒメ』と申します。『ヒメ』とお呼びください」


 その言葉に呼応するように、頭の中に〝文字列〟が浮かんだ。

(えっ? これって、ステータスウインドー*?)


  名前=ヒメノ・ヒメ(本名=ヒメ・ビジュラ(皇女)・真名【ヒ※※】・※※※※※※※※※)

  性別=女(経験値=処女)

  年齢=18歳

  種族=ハイエルフ

  レベル=108

  ジョブ=聖職者(聖魔法遣い、第七皇女)

  HP=7028/9882

  MP=39400/55357

  STR=398

  VIT=955

  DEX=2543

  AGI=3367

  INT=19762

  LUC=9924


 この手の〝文字列〟はゲーム好きのオレ的には結構馴染みのあるモノだ。

 しかし、『本名』が別に表示されているというのは本名を伏せているという事だろう。『真名』の後半から先が非表示なのは(多分)オレとの信頼関係に因るのだろうか(さっき、怒らせたしね(笑))。


(ちょ、ちょ、まて~~~っ!?……『性別=女(経験値=処女)』って、何だ~~~~~~~っ?)


 、ステータスウインドーに表示して大丈夫なのか?

(ムフフぅ、ヒメさんは『処女』なのね~~~(笑))

「わ、わたくしの顔に……な、何か?」

 当然、ツッコミを戴きました。

「いえ、失礼しました。オレの生まれ育った国には『エルフ』、いえ、『ハイエルフ』という種族は居りませんでしたので、思わず見惚れてしまいました」

「まあ、ヒメの美貌に見惚れるのは当然にょ♡」

 オッパイの大きな『犬耳』美少女がフォローしてくれたが、君の『犬耳』も、さわ、さわ、したい!


「う、うん……オレは『タダノ・モブ』です……」

 オレは咳払いしてから名乗った。

(何故だろう?……心に浮かんだをオレは答えていた。)


 続いて〝露出過多な筋肉美少女〟が言った。

「わたしは『オ・マータ』……皆からは『マータ』と呼ばれている」


  名前=オ・マータ(本名=マータ・レジェ(近衛騎士)・真名【マレク】・キルティラファ)

  性別=女(経験値=処女)

  年齢=25歳

  種族=ダークエルフ

  レベル=338

  ジョブ=剣士(近衛騎士)

  HP=297051/391589

  MP=2403/2557

  STR=18238

  VIT=25673

  DEX=4398

  AGI=3556

  INT=2563

  LUC=824


 ダークエルフ、きた~~~~~っ!(笑)

 彼女は、すらり、と背が高く露出の多い恰好をしていた。

 良くある『ビキニアーマー』のように金属製ではなく、パレオを巻いたセパレート水着のような感じだ。しかし、パレオ風スカートの下はパンツではなくショートパンツだという(許し難し!)。

 まあ、その『装備』の為、筋肉質な体形が強調されていた(腹筋とか割れてるしぃ(笑))。

 因みに『幅広のロングソード』が得物だ。


 次いで〝犬耳の獣人美少女〟である。

「あーしは『イク・イクイク』……『イク』でも『イク、イク~~ぅ♡』でも好きに呼んで良いにょ♡」

 妙なアクセントと身体をくねらせる色っぽい仕草で彼女が言った。

 魔法使いのローブごとオッパイも、ぶる、ぶるるん、と揺れた。『ローブ』って、体形を隠すモノだと思っていたが、全然、まるで、一切、隠せていない(笑)。

「サイズ、知りたいかにょ♡」

「め、滅相もございません!」

 ヒメさんの圧のある視線ビームを受け、オレは直ぐに視線を逸らせた。


  名前=イク・イクイク(本名=イク・レジュ(近衛魔術師)・真名【イクク】・ランボルン)

  性別=女(経験値=処女)

  年齢=19歳

  種族=白狼マーナガルム

  レベル=297

  ジョブ=魔法戦士(近衛魔術師)

  HP=13988/25435

  MP=28705/32025

  STR=2354

  VIT=13387

  DEX=2352

  AGI=2006

  INT=8630

  LUC=6248


(狼さんか、カッケーっ! ← 何がだ?(笑))

 『魔法戦士』というのは、魔法も使えて物理攻撃も可能ということだろうか?

 因みに得物は一応『杖』のようだ。


 続いては左端の小柄だが体格の、がっちり、した美少女だ。オッパイもとても大きい。

「あたしは『アル・チチ』です……どんな呼び方でも構わないです、閣下!」

(いや、『閣下』って、なに?……多分だが、『翻訳機能』が誤変換を起こしているのだろう。)


  名前=アル・チチ(本名=アルタ・チル(鍛冶師)・真名【チチル】・チチ)

  性別=女(経験値=2人)

  年齢=22歳

  種族=ドワーフ

  レベル=163

  ジョブ=槍使い(槍術士、鍛冶師)

  HP=206051/208189

  MP=23986/25442

  STR=10221

  VIT=34113

  DEX=532

  AGI=567

  INT=1342

  LUC=995


 ステータスウインドーを見るまでもなく『ドワーフ』かなと思っていたが ――

(きた~~~~~っ! 『女(経験値=2人)』っ!)

 流石、ドワーフでも美形は違う、という事か( ← んっ? ドワーフ差別?)


 最後は右端の小柄な美少女だ。どことなく調子が悪そうに見える。

「わたくしは『パイ・チンチン』と申します、ご主人さま……」

(え?……『ご主人さま』って、ナニ?……これも誤変換か?)

 いや、疑問に思いながら彼女を見ると首輪を填められていた。

(ど、奴隷ぃ?……しかし、それなら同じように席に着き、食事も同じものが彼女の前に並んでいる……のは、何故だろう?)

 オレの疑問を感じとったイクイクとヒメから追加情報が開示された。

「『チンチン』は既に奴隷の立場から我々が解放しているにょ!……しかし、その首輪にはが籠められていて外せないにょ!」

「『チンチン』は、わたくしたちの大切な仲間ですので、どうかタダノ・モブさまも敬意を持って接してくださいませね」

 ヒメは『チンチン』と発声する時、何故か恥ずかしそうだった。(何故だ?……彼女が発声するのは日本語ではないし、固有名詞は変換されている訳ではないように感じるが?)

 それよりステータスウインドーに疑問が大きい。


  名前=パイ・チンチン(本名=パイ・繝薙ず繝・繝ゥ・真名【繝√Φ繝】・繝√Φ)

  性別=女(経験値=処女)

  年齢=18歳

  種族=闇堕ちエルフ

  レベル=187

  ジョブ=奴隷(弓遣い、闇魔法使い、第一逧?・ウ)

  HP=4238/13253

  MP=3420/87542

  STR=28

  VIT=129

  DEX=57

  AGI=254

  INT=14322

  LUC=38


 『本名』や『真名』がを起こしているのも、呪いの影響だろうか?

 『種族』の『闇堕ちエルフ』というのも尋常ではない。

 『ジョブ』の方のはヒメの欄を見ると『第一皇女』で間違いなさそうだが(お姫さまなのに奴隷堕ちしたのか?)。

 あと、『INT』以外は滅茶滅茶ステータスが低い。『HP』と『MP』も戦闘に参加しているようにも見えなかったが酷く消耗している。これらも間違いなく呪いの影響だろう。



 自己紹介が終わり、食事を摂りながら彼女たちから聞いた話をまとめるとこんな感じだ。

 ここはザンダラー大陸の中央にあるアイントハルフ王国*の辺境都市ウルヒ*。

 ここへ彼女たちが遣ってきたのはチンチンの呪いを解く『鍵』がこの街の郊外にあるダンジョンに隠されているからだそうな。

 そもそも、何で彼女は『奴隷』に堕とされ『呪い』まで掛けられたのか。

 何でも近隣の2つの国が戦争になって、負けた国の皇女が『奴隷』に堕とされた。それがパイ・チンチンだった。実は、彼女に横恋慕したもう一方の国の王太子が戦争を仕掛け、彼女を奴隷に堕として我が物にしようと企んだらしい。

 そこを、彼女と親交のあったヒメが先に介入して危ういトコロで奴隷商人からチンチンを買い戻す事ができた。

 しかし、買い戻したうえで奴隷の身分は『解放』したが、彼女の首に嵌められた奴隷の印である『首輪』にはのろいが掛けられていて外せなかったのだそうだ(そういえば、『ジョブ』はまだ『奴隷』のままだったな)。

 そして、この国の高名なまじない師の『おばばさま』により、解呪の方法が語られた。


 方法には2つある。

 1つは呪いを掛けた相手(例の王太子である)を殺す事。しかし、それでは別の戦争が起きてしまう。

 もう1つが、今回の方法だった。曰く、「今日のこの日、あの時間、あの場所で、出会った東方から来た異邦人と6人パーティを組んで、とあるダンジョンを攻略して〝ある秘宝〟を手に入れ、彼女に使えば呪いは解かれるであろう」……と。

 そこで彼女たち5人は準備を整えてあの場所に『転移魔法』で『瞬間移動』してきたのだが、何処で飛竜ワイバーンが紛れ込んだのか判らないという。(もしかしたら、それも呪いの影響かと思ったが口にはださなかった。)


「しかし、どうしてオレが『東方から来た異邦人』だと思ったのですか?」

 確かにオレは『東方から来た異邦人』と言えるだろうが、そんな名札をぶら提げている訳ではない。

 それを不思議に思って訊くと、直ぐに答えが返ってきた。

「東方人は黒い髪と黒い瞳を持って居ますから」

 そう言われて改めて5人を眺めると……


 ヒメは金髪碧眼で耳が長いのはエルフ族の証拠に違いない。

 マータは同じ『耳長』でも褐色の肌であってみればダークエルフという種族だろう。

 イクイクは『犬耳』を見ればイヌ科の獣人だと判る(狼だったが)。

 チチも見た目通りドワーフだった(オッパイはかなり大きいが(笑))。

 最後にチンチンだが、ヒメと親交があった理由の一つだろう、彼女もエルフ族の見た目をしていた(ただし、ヒメと比べるとオッパイはかなり控えめだが)。


 こうして彼女たちと比べると、確かにオレこそ『異世界人』にさえ見える。となれば、黒髪・黒目のオレを東方人と認識したのも納得だ。


 それにしても、この5人だけでもゲームとかラノベで親しんだ『異世界』のキャラクターたちのオンパレードだった。

 オレは、『異世界転移』したのだと心底思い知らされたのだった。


 そんな彼女たち(しかも美少女)に請われては、オレには『断る』などという選択肢はなかった。


 その日はこの酒場の上にある部屋に一泊して、明日『冒険者ギルド』で登録(勝手にダンジョンに入る事はできないらしい)してからくだんのダンジョンに向かう事となったのだが……

 宿泊するに当たって予期せぬ難題が持ちあがった。

 二階にある部屋に向かって階段をのぼり、部屋の前で(当然彼女たちとは別の部屋だ)「お休み」の挨拶をした時だった。

 チンチンがこんな事を言ったのは ―― 


「ご、ご主人さま……今宵のは、わたくしが参りますが……な、なにぶんの〝おボコ〟でございますので、ご配慮戴きたく……はううぅ!」



            【つづく】

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