第11話 発見

 白夜は目覚めた時、ふよふよと浮いているのを感じていました。


「ここはどこだろう。」


 見覚えのある場所では無いのです。でも自室と病室以外、ほとんど見たことのない白夜にとって、西洋の貴族の部屋だからと言って特別も何もありません。いいえ、あらゆるものが特別でした。


 天蓋付きのベッドに金髪の男の子が眠っています。その側には、やはり金髪の美しい女性が添い寝しておられます。顔立ちがそっくりなので親子なのでしょう。


「やっと見つけたよ。」


 不意に、目の前に黒髪の女性が現れました。どこからか入って来たのではなく、いきなり目の前に湧き出していらっしゃいました。


「お姉さんは私を知っているのですか?」


 異常な出現の仕方だったのですが、そんなことより顔見知りは家族と病院の関係者だけなので、知らない人から話しかけられる事の方が不思議でした。


「うーん。なんか思ってたリアクションと違うねえ。まあ、いっか。

 私は白朔と言う。神様だよ。」


「神様? 初めまして怜堂白夜と申します。びゃくさく様ですか? なんだかお名前に親近感が沸きます。」


「白夜の新月って意味だからね。まあ、勝手に信者達が付けて、忘れてった名前なんだけどさあ、なんか意味ありげだろう? でも、深い意味なんて無いのさ。気にしないどくれ。」


「まあ! 白夜の新月!!

 見えないけれど、そこに在るお月様。それも、白夜の空になんて。

 私はあの日、消えてしまったと思っていたけれど、ちゃんと白朔様が見守って下さっていたのですね!!」


 感激で大きな瞳をウルウルさせている白夜に対して、言いづらそうに白朔様は、


「それがさあ、見失っちゃってたんだよ。あんたを異世界に飛ばしたのはよかったんだけど、ちょっと考え事してたら、どこの世界に飛ばしたのかがわかんなくなっちゃってさあ。ずっと探してたんだけど、あんたの存在が薄くなっちゃって、気配を感じられなかったんだ。

 それが、さっき突然、気配を感じたってわけさ。」


 と白状するのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る