第12話 神性持ち

「あんたさあ。3年くらい前に一度だけ目覚めたでしょう。一瞬だけ。」


「そうなのですか? 覚えがないのですが。」


「2歳のときだからねえ。無理もないか。とにかく一瞬だけあんたの意識が覚醒したのを感じて、すっ飛んできたけれど、すぐに意識が消えちゃって、また見失ってたんだ。でも、この世界にいるのはわかったから網を張ってたのよ。

 だから、今回はすぐに飛んでこられたってわけ。」


「私を探して下さってたんですね。ありがとうございます。でも、どうして神様が私を?」


 可愛らしく小首をかしげる白夜。


「そっかあ。あんた、もうあのとき意識が無かったんだよね。

 じゃあ、今の状況も分かってないでしょう?」


「今の病状って事ですか? 高熱が出て意識が途切れそうになると、急に体が浮き上がるような感覚になって、とっても綺麗な景色が見えるようになるのですが、、、、」


「ああっ、、、いいよ。それ以上言わなくて。

 あんたはね、今、別の世界に来ているんだよ。はっきり言っちゃうとさ、死んじゃったわけ。

 でもね、完全に魂が消滅する寸前にあたしが盗んじゃったの。」


「ええっ!? 私は神様に攫われたんですか?

 『◯と◯◯の神隠し』って読んでもらった本の中にありました!」


「あれは神隠しってよりかは、自分達で紛れ込んじゃった話だけどさあ。

 あんたの体は向こうに置いて来たから、とっくにお葬式が行われてるよ。行方不明になってはいないから安心おし。」


「でも白朔様は私を探していたのですよね?」


「ぐっ。痛い所を突きおって。

 その、なんだな。大事な事を伝えてなかったと言うか、そのう、、、うっかりしとったのだ!」


「神様なのにうっかりさん?」


「ぐはあっ!」


 白夜のまるっきりイノセンスな疑問がクリティカルヒットしてしまった白朔様でした。


「弟に言われた時にはぶん殴ってやったんだが、白夜に悪意は無いんだし、、、、、」


 ぶつぶつと独り言を言う白朔様に、


「私に何を教えに来て下さったのですか?」


 上手く白朔様の自尊心をくすぐる言い方をする白夜です。


「そう! それ。教えに来たのよ!!

 あんたはこの世界の貴族の息子に生まれ変わったのよ。

 訳あって、この世界でのあんたの両親は子供が出来なかったんだよね。だから、あんたの魂をからっぽの胎児に放り込んだのさ。」


「からっぽの胎児ですか? 胎児とはお母さんのお腹の中にいる赤ちゃんの事ですよね?」


「そこを聞いてくるなら、先に話しちまうか。

 まず、あんたが向こうの世界で病弱だったのは、あんたの魂の質量が大き過ぎた為さね。

 あんたの先祖に神がいるだろう? どうやら覚醒遺伝して来ちまったらしいのさ。あんたにね。」


「私が神様の覚醒遺伝!?」


 目を丸くして驚く白夜です。


「そうそう。まあ、あんたって存在の4分の1くらいは神性を持っている。だが、それが人間の体に宿るには無理があるんだよ。」


「だから、病気になってしまったのですか? 心は神様なのに、体が人間だったから。」


「そうそう。上手くまとめたね。

 次からはあたしもそう言うふうに説明するよ。」


 白朔様に褒められて、えへへとニヤける白夜を見ながら、『こんな事がもう一度あるとは思えないけどね』と、腹の中で呟く白朔様です。


「で、この世界のあんたの父ちゃんもさあ、神性持ちだったのさ。こっちは体の方さね。馬鹿みたいに頑丈で、生命力が溢れてる。」


「はあ。凄い方なのですねえ。」


「でも、それが仇となって子供が出来なかったのさ。受精はするんだけど、生物としてのスイッチが簡単には入らなくてね、受精卵が16分割の先に進めず流れちまう。

 だからこの夫婦は、何度も妊娠してるんだが、流れた事も知らないんだ。」


「なんて、気の毒な話なのでしょう。」


 白朔様は、しゃあしゃあと説明口調で流しているのに、すっかり感情移入してうるうるしている白夜です。


「そこへ、パンチ力抜群のあんたの魂を放り込んだってわけさ!

 狙い通り、肉体も精神も神性持ち同士。完璧な赤ん坊が生まれたってわけさ!!」


 ふんす! と鼻を鳴らしてドヤ顔を決める白朔様です。

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