第9話 報告
「被害は!?」
ザイルが走りながら問うと、周囲には誰も居なかったはずなのに、突如、人が現れ報告する。
「はっ。先ほどの襲撃班を捉えた牢付近で、巨大な爆発がありました。」
「仲間が助けに来たのか?」
「いえ。それが牢の内側で爆発が起きたようです。」
「あの男が脱走を企てたのか?」
「いえ。恐れながら、あの男は爆発で死亡したようです。」
「口封じか?」
「それもあるのでしょうが、あの男自体が爆弾だったようです。」
「なんだと?」
ザイルは足を止める。
「アッシェン。説明を。」
報告をしていた男が跪いて説明を始める。
「スカーレットが襲撃班の尋問を開始しようとしたところ、男の魔力が突如として増大し、フレアボムの暴走が起こったそうです。
スカーレットは火属性に対して極めて強い耐性を持っている為、軽傷で済みましたが、牢番は焼死。
牢のあった尖塔の壁も一部が吹き飛んでおり、倒壊の恐れがあるため、周囲を立ち入り禁止とし、タウニーが応急処置をしております。」
「では、あの男の背後を洗う事は出来なくなったと言う事か。」
「素性ぐらいは割れるかも知れませんが、その先は厳しいでしょう。」
「まあ、黒幕はアイツだろうが、証拠が無ければ追求されないってところか。」
「申し訳ございません。」
「しっかしエルの野郎は、面倒ごとを押し付けやがる。今回の損害も倍にして請求してやる。」
「それだけ、陛下に信頼されているのでしょう。」
「その割には、ワシばっかり損な役回りが回ってくるんだが。
ワシは今、アルだけを見て過ごしたいと言うのに。」
「王位継承者が決定するまでは難しいでしょうね。」
「それよ! なんでワシが監督官なんだ? そんなの、他のやつにやらせときゃいいだろう?」
「中立を守れる方がザイル様しかいないという事でしょう。」
「まるで裸の王様だな。」
これにはアッシェンも返答に困っていた。
「しかし、魔力暴走で自分ごと吹っ飛んじまうなんて、聞いた事ないぞ。」
「はい。普通は上手く魔法が発動しないまま意識を失うくらい。稀に障害が残る事もあるそうですが、自爆は聞いた事がありません。
なんらかの仕掛けがあったと考えるべきでしょう。現場に何かないか探させております。」
「それと、その手の技術を持ってそうな奴って言うと、、、」
「はい。限られてまいりますので、そちらからも。」
「頼んだぞ。」
「それと、万が一の可能性を考慮すると、アル坊ちゃんも調べておくべきでしょう。」
「な、なんだと!? アルは被害者で、まだ2歳だぞ。」
「だからこそ、安全である事を証明しておく事が肝要かと。」
「む、むう。なら、ワシも立ち会う。」
アッシェンは黙って頷いた。
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