第4話 初めての呪言
辺境伯様はビクッとした後、小刀を握った腕をブルブル震わせておられました。
「う、う、動けない、、、」
「テメェ、何ふざけてんだあ!
それより、余計な事を言いやがったのはどいつだあ!?」
よかった。辺境伯様をお諌めできたみたいです。では、気になっていた事を尋ねて見ましょう。
『あなたは、う◯ちさんなのですね?!』
日本語でイメージした質問はこうです。しかし、実際に口から出た言葉はこうでした。
「おんどれが、クソじゃあ!!」
なんかちょっと違ってます。でも、私以上に困惑したのはう◯ちさんでした。
「な、なに、、このガキ、、、ぎゃあああああああっ! 目が、、目があああああっ!」
突然、悲鳴を上げたのです。私もあまりよくは見えなかったのですが、お顔に小さな針が沢山突き刺さったかのように、何筋もの血が流れていたようです。
目を気にされていたので、目にも刺さったのでしょう。とても気の毒です。
私を抱えていた腕の力も緩み、私は地面に落っこちる所だったのですが、いつまでたっても衝撃が来ないので、ゆっくり目を開けると、綺麗な女性に抱き返えられていました。
「でかしたぞ! ヴァイオレット!!」
辺境伯様の嬉しそうな声が上がります。
「者ども、かかれ!!」
少し離れた所からも声が上がり、
おおーーーーーーー!!
大勢の人達がそれに続きます。
私はと言うと、先ほどの綺麗なお姉さん、ヴァイオレットさんに抱えられたまま、その場を離れております。
「アルーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
かなりの速さで走るヴァイレットさんなのですが、物凄い速さで辺境伯様が追いついてました。
お声がどんどん大きくなって迫ってきます。ちょっと怖いです。
うっすらとですが、あの方がこの世界でのお父様である事が理解出来てきます。
ついさっき、前の世界の記憶が蘇ったのですが、なにやらゴタゴタしていたので、頭の中を整理する時間がありませんでした。
一際大きく、丈夫そうな扉の前に到着すると、ヴァイオレットさんは私を片手で抱き抱えたまま、反対の手で扉を押します。
すると、ギギギというか、ズゴゴゴというか、物凄く重いものを引きずった時のような音を立てながら、扉が押し開かれました。
そのまま扉に入ると、お父様も滑り込むように入って来ます。
扉はドガガガと凄い音を立てながら、勝手に閉まっていきました。
「アルは無事か? 怪我などしておらぬか?」
お父様はまだ少し取り乱しているようです。
「大丈夫です。どこもお怪我はありません。」
ヴァイオレットさんは至って冷静です。ヴァイオレットさんは私専属のメイドさんなのですが、元は兵隊さんだったそうです。
普通の兵隊さんとは違うチームにいらっしゃって、人体の仕組みにとても詳しいのだとか。お医者様の役割も担われていたのでしょうか。
とにかく、とても優秀だったので、私が生まれた時に、お父様が私専属のメイドさんに任命したのだそうです。
「やはり、君をA班から引き抜いておいて正解だったな! あの時は班長から随分と嫌味を言われたもんだよ。
君があの男を攻撃して隙を作り、アルを奪い返したんだな?」
「恐悦至極に存じます。ですが、私はアル様を取り返しただけでございます。」
「なに? あの男は顔面を負傷していたようだぞ?
一応、ぶん殴っておいたが、殴る前から血だらけだった。君がやったのでは無かったのか。
では誰が? 『影』か?」
いつのまに? お父様はう◯ちさんをぶん殴ってから追いかけて来たそうです。
「『影』は手を出せる位置にはおりませんでした。何より、あの状況でアル様を傷つけずにあの男の顔を攻撃する事は不可能です。」
「確かにそうだな。それでも君ならと思ったのだが、君が無理と言うのだから間違いなかろう。
では、何が起こったのだ?」
「私の目には、アル様があの男を攻撃したように見えました。」
ヴァイオレットさんの言葉に、お父様はとても驚きます。そして、私も驚いてしまい、はしたなくも、ついお漏らしをしてしまったのです。
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