第2話 見ていた者

「うわぁ。見ちゃったよ。これは、ほっとけないねえ。」


 それまでに感じたことの無いほど、純真無垢な者が近づいてきて、消えていこうとしているのを感じた。


 それは、とある公園にある大きな池の中程にある小島に祀られた小さな祠の主だった。

 池は白朔池と言う名で、祠は白朔様と呼ばれていたが、公園周辺の都市化が急速に進み、古い住民も少なくなった為、それらの名前も消えていこうとしていた。


 信仰されなくなった神ではあったが、かつては強力な神力を持っていたため、その貯金で存在を維持していたが、そろそろ、それも限界に近付いていた。


「今の私では、体を治してやる力は残ってないねえ。なら『あっち』に任せるか。

 でも、この世間知らずのお嬢ちゃんには過酷な世界だよ。とんでもない武力を与えてやれるほど、私の力も残ってないし。」


 面倒くさがって『顕現』を嫌がっているうちに、人々の信仰心は失われていた。それに従い、白朔の力も弱まっていたのだ。


「ならば、あの子自身の特性を力に還元してやれば、あの子にしかない力を発揮出来るだろう。それを上手く使えるようになれば。」


 しかし、ここに大きな問題が。


「あの娘、何にも知らないねえ。何もやった事が無い。病気で動けなかったんだから仕方がないけど、あっちの世界に持っていけるモノがほとんど何も無いじゃないか。」


 ここでふと気付く。


「逆にあれほど何にも知らないことこそ、あの子の特性なんじゃないかしら。ならば、それを力に変換する方法さえ与えてあげればいいんじゃない!」


 とっても良い事を思いついた白朔だったが、お◯るの◯ョージでも、きか◯しゃ◯ーマスでも、『良い事を思いついた』と言うのはろくでもない事をしでかすフラグなのだ。


「良い事思いついたし、なんか面白そうだし、私もここを引き払ってついていっちゃおう!」


 鼻歌まじりに荷物をまとめると、祠を出るのだが、


「あれっ? 『あっち』ってどっちだっけ?」


 何千年も神様業をサボったツケが溜まっているのだった。

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