第7話身辺調査

「さてと。じゃぁ帰ろっか。」


「え、あのっ!わ、私も持つ…」


僕の両手にはドッサリとマーレへの贈り物がぶら下がってる。


今は夕方、日もだいぶ落ちた頃だ。


あれから僕達は色々なお店を回って沢山の買い物をした。僕はとても満足だよ?だって全部僕好みだからね。


でも1つ。気に食わない事があるんだ。


「持たせるわけないでしょ、そんな細腕で怪我したらどうするの?」


「でも、すごい量だよ…」


「はぁ、そんな優しさがいらない虫を引き寄せちゃうんだろうね。」


「え?」


そう。今日1日、僕達の跡をつけてた奴がいる。


かなり若い男だ、ずっとマーレを見ていた。もちろん気づいてるよ。


本当に気に食わない。もしかしてストーカー?マーレに執着していいの、僕だけなんだけど?


「ちょっとお片付け。君は見ないでね、マーレ。」


「お片付け?なにを?」


「はは!そんな大層な事はしないよ?害虫駆除さ♪」


不思議がってる顔をしたマーレも可愛いな。


だから怖がらないように優しくニッコリ笑ったのになぜかその目には恐怖が映ってるんだ。


なんでかな?撫でた頬からは少し震えが伝わってくるよ。


「あの、、そのっ」


「んー?」


「えっと…」


「…少し待っててね。」


「あっ!」


あの男の気配が動くのが分かる。逃げる気?させるわけないじゃん、そんなの。


だって逃がしたらいつマーレに危害が加わるか分からないからね。


この子に目をつけた事、死んでも後悔させなくちゃ僕の気が収まらないよ。


ータッタッタッ!


「はぁっはぁ…!と、撮れた!撮れたぞ!」


ーポンー


「へぇ?何が?」


「え?うわぁ!?!」


逃げた男の肩を掴んで聞いてみればズシャァって派手に転がった。あんなに遅くちゃ走ってるなんて言わないだろ?


追いつくなんて簡単なのにオーバーなリアクションじゃない?


「そんなにビックリした?で、何を撮ったの?見せてよ。」


「え、は!?いやお前さっきそこにっ」


「僕はテノン。君にお前呼ばわりされる謂れはないかな?その手のカメラだよね?見せてくんない?」


「ふざけるな!!これは俺の大事な情報源だ。簡単に触るな!!」


大事な情報源?ってことはコイツは雇われって事かな。


別の誰かからの指示で動いてるのかも。


それは突き止めなくちゃいけないなぁ。


「ふーん?じゃぁ君が持ってるのは触らないよ。」


「お、おう。当たり前だ」


はね。」


「は?」


ードサー


「これで持ってないよね?じゃぁ確認〜。」


「え?え?」


はは!面白い顔!


でもこれは当たり前の反応なのかな?カメラ持ってた腕、切り落としちゃった。


これで持ってないってなるだろ?悲鳴はとても醜いけどね。


「中身はぁ。…へぇ?ぜーんぶマーレだ。君ストーカー?」


「ち、ちがっ!!」


「じゃぁなんで盗撮なんかしたの?この子僕のだよ?」


「依頼を受けたんだ!そ、その女の元カレがそいつの現状を調べろって!それでっ」


「へぇ?」


「俺は雇われなんだ!!この女に興味もねぇっ!本当だ、信じてくれ!!」


依頼内容をこんなにペラペラ話すなんて。なんて信用ならない調査員だろうか。


こんなのを雇うなんてさ。雇った人間もバカだよ。


「もちろん信じるさ。」


「本当か?!なら俺は帰っていいんだよな!?」


「え?誰がそんなこと言ったの?見逃さないって、君は見せしめね。」


「は?」


すごいマヌケな顔。この顔のまま首だけになるなんて可哀想だね。


さようなら。


「待って!!待って、テノン!!」


「ー!?…マーレ?」


「お願い、殺さないで!!」


僕の武器が男の首を落とす寸前。マーレが飛び込んで止めてきた。


なんで止めるのさ?こんなに息切らして…そこまでして守る価値あるのかい?


「マーレ、君は知らないフリでいいんだよ?」


「ダメッ!お願い、私が原因なんでしょ?殺さないであげて…」


「でも殺らないと君が危なくなる。コイツを生かしておく理由がないんだ。」


「それでもっ!わ、私にはテノンがいるから…ね?大丈夫でしょ?」


「…はぁ。」


そんな事、思ってもないってのは分かってる。


でもそう言われちゃったら殺さない理由ができちゃうよねぇ。


本当にズルい子だ。


「2度目はないから。伝えておいて。」


「は…はい…」


「まったく、マーレに感謝してよね。あ、それとちょっと失礼。」


ガタガタに震えて腰の抜けた男の耳元に声を近づける。


くれぐれもマーレには聞こえないようにコッソリと話さないとね。


ー近々君に会いに行くよ。首、綺麗にねー


「!?!」


「伝言♡頼んだよ。」


「伝言?」


わぁ、すごい悲鳴あげて逃げてった。


ちゃんと伝わるといいな。









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