第6話お買い物

街に出ればそれなりに活気のある賑わいが広がっている。


安売りの呼び掛けや酒屋のキャッチ、アイスクリームのイベントカーまでもが出ていて人も多い。


はぐれないようにしっかりと手を握っていないといけないな。


「まず何から揃えようか?やっぱり服かな?」


「わ、私はなんでも…」


「なんでもはナシね。ね、なにが欲しい?」


「あ、え、っと。」


うーんうーんって必死に考えてる笑


そんなに悩む事かな?こういうのって男の奢りなら女は飛びついて欲しい物をさらけ出すと思ってたのに。


君は本当に予想を外させてくれる。


「じゃぁ、その…」


「うん。」


「か、髪留め…」


「髪留め?そんなのでいいの?」


こくん。て躊躇無く頷くってことはそれほど欲しかったの?


そんなのいつでも言ってくれれば買ってくるのに。


遠慮しすぎだよ、まったく。


「髪、長いでしょ?何か欲しいなって、その…思ってて。」


「そういうのはちゃんと言いなよ?いつでも買ってくるし。なんなら依頼先の国でだって買ってくるんだ。」


「め、迷惑かなって…」


「僕は1度でも君にそんなの思った事なんてないけどね。でもいいや、せっかくだから気に入る物を見つけようか。」


「うん…ありがとう」


「!。どういたしたして。どんなのがいいの?」


今、初めてお礼を言われた気がする。


しかもちょっと笑ってなかった?


こんな事で笑顔を見せてくれるなんて。だったらもっと早くに贈るべきだったよ。


「シンプルなのがいいな。あまりキラキラしたのは好みじゃなくて、、」


「うん、そんな感じはするよ。ならあそこのお店に行こうか、シックなデザインが多くて僕もお気に入りなんだ。」


「うん」


さぁ行こうって手を引けば喜んでるみたい。


やっぱりマーレも買い物は好きなのかな?いつもより明るい顔だ。


カランカランって入店を報せる鈴が鳴って中に入れば一層目がキラキラしてるよ。分かりやすいったら笑


それでここが終わったら次は服かな。オレンジ色のスカートもいいけどもっと僕好みにしたいんだ。


「…あ」


「ん?いいのあった?」


「あ、えっ、ち、違うのっ」


「??…あぁ、なるほど。」


髪ゴムが見えないようにする銀色のバックルがついたシンプルでオシャレな髪留め。


そしてその横には溝の模様をしたポニーテールホルダー。


どっちも値段は1万ちょっとで髪留めにしては少し高いのかも。


でもコレが気に入ったみたいなんだよね、一瞬だったけど”いいな”って顔してた。


「その、他ので見るからっ」


「なんで遠慮するのか。おいで、マーレ」


「え?で、でも…」


「でもじゃない。つけてごらんよ。」


抵抗するマーレの手を無理やり引いて髪を結い上げてつけてみた。


カチリと装着できたのを確認して彼女を見たんだけど、、これは失敗だったな。


「に、似合わないから…大丈夫だよ…」


「なにを言ってるの?コレ購入決定ね。」


「え!?でも髪留め1つにこの値段はっ」


「値段じゃない。これこそプライスレスさ。」


いつもは髪を下ろしてるからとても新鮮に見える。


顔の周りを覆うものがないから彼女の色白さも一際目立つね。

大きくて不安に揺れている瞳もただのポニーテールを格段に美しく魅せているよ。


あとはそうだな、ピアスもつけてほしい。

もちろん僕とお揃いのピアスでね。


「あの。本当によかったの?」


「いいに決まってるでしょ。僕のマーレだよ?僕好みに染めるさ。」


「でもこれは私の好み…」


「くす。大好きだよ、マーレ」


「!?!」


髪留めは2つとも買ってお店を出ればマーレは申し訳なさそうだ。


それが君の好みなのは知ってるよ。


でもそれ、僕の好みでもあるんだよね。


あまりにも嬉しくて掬った髪にキスを落とせば今までで1番の赤面を見せてくれた。


純粋だよねぇ。それがいいんだけど。








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