第8話忠告
日差しがとても強い今日。
アジトの中にいても窓から入ってくる太陽の光が憎らしいほどに暑くて辟易としてしまう。そんな日に僕は喧嘩を売られた。
「やぁテノン。お仕事かい?」
「んー?えーっと…」
「はは!俺はアイン。同じ暗殺仲間だろ?名前くらい覚えておくれよ。」
あー。なんかいたなぁ、そういう人。
たしか女好きで有名で、娼婦ですら取っかえ引っ変えしてるっていう変態。
一見しただけだと30歳前半ほどの見た目だけど、実年齢は40歳を超えてるっていう変な外見のおっさん。
一体僕に何の用だって言うんだろうね。
「悪かったね、人の名前を覚えるのは得意じゃないんだ。それで?僕に何の用かな。」
「君にも不得意な事があってよかったよ。いやなに、大した用事ではないんだがぁ。聞きたい事があってね。」
「聞きたい事?もったいぶるね、なにかな。」
んー。そうだなぁ。ってニヤニヤした顔がすごく腹立たしい。
やましさが溢れ出てるこの男が言う事は、きっと不快なものなんだろうな。
聞きたくないや。
「言いたくないなら無理に言う必要ないさ。僕は忙しいから失礼するよ。」
「いやぁ待ってくれ。悪かったよ、ちゃんと話す。」
「はぁ。手短にね。」
「あぁ、そのつもりだ。本題だが、この前連れてた女の子は誰だい?」
「ピクッ」
「藍色の髪がまるで絹帯のように滑らかに波打っていた彼女だよ。」
それってマーレの事だよね。
なんでそんな事聞くのかな。
「答える必要は?」
「あるさ!彼女、とても質素だったがいい原石だ。磨くべきだと思うだろう?」
「くだらないね。話はそれだけ?僕は忙しいからもう行くよ。」
「そうなのか?なら仕方ない。」
あぁ、ムカつくな。一瞬だけだったけど眼光を鋭く光らせた。
ニヤニヤと汚らしく笑う顔が、何を考えているかなんて容易に考えつかせる。
この男ここで始末しちゃいたいよ。
「1つ、言っておくよ。」
「ん?」
「あの子は今、僕の部屋だ。そこから動かないように言ってある。」
「へぇ、そうなの。たまには外に出してあげないとだね?」
「僕がついていれば出すさ。大切な女の子だからね。誰にも指一本だって触れられるのは虫唾が走る。」
「それは珍しい!君は女になんて執着しないと思っていたよ。そうかそうか。いや、いい事を聞いた!」
「くす…。そうでしょ?珍しいでしょ。でもね、もしそんな彼女に指一本でも触れれば…」
ーチリ…「っ!!」
「僕はこのアジトの人間だろうが関係なく殺す。とても苦しむ方法でね?」
それで自然に笑ってるつもりだったのか。イカれた目で仰け反りながら鼻の下を伸ばすこの男にちょっと忠告。
ボロボロに錆びたナイフを首に押し付けてタラリと少し血を流させれば、瞬時に黙ってくれて本当によかった。
もし黙らなかったらこのまま…。
「じょ、冗談は止めてほしいな。仲間だろう?」
「君が僕を怒らせなければいい。仲間だとは思っていないが、殺すつもりもないからね。もちろん、なにもしなければ。」
「…。しないさ…。」
「そう、それはよかった。それじゃ僕は行くよ、これでも忙しくてね?」
「…。」
ナイフを首から下ろせばすごい大量の汗をかいて首を押さえるこの男。
ここまですればきっと大丈夫でしょう?
「イカれたガキめ…((ボソ」
はは!それはとんだ褒め言葉だ。この世界でマトモな感覚なんか持ってたらいの一番に死ぬだろうからね。
さてと。そんな恨み言をBGMにでもしながら僕は調査だ。
早くあの子を僕だけのモノにしないとね。
殺し屋の狂恋 ペンギン @Yun77
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