第3話約束
コポコポコポ…と僕のお気に入りの紅茶がティーカップに注がれる。
あぁ、なんて今日は素晴らしい日なんだろう。
いつもは薄暗くて鬱蒼とした雰囲気しかないこのアジトも今日はとても明るい。
その理由は明らか。
やっと彼女が手に入ったから♪
「♪♪♪」
「あ…あの…」
「ん?なーに?」
「ここは、、?」
「あー、僕のアジト。殺し屋なんだよねぇ、僕。」
「こ、殺し屋!?」
あ、これ言っちゃダメだった?
青い顔して隅っこに逃げちゃった。
なにも取って食べたりしないのに。
「大丈夫、安心してよ。君の事は大切にするよ?えーっと…」
「ガタガタガタ…」
「名前、何かな?僕はテノン。君は?」
「マ…レ…」
「マーレ?海??はははは!」
「ビクッ」
いやぁこんな事もあるんだ!
何もかもが前世と同じ。
初めて君を見た、あの時と同じなんだ!
「ごめんごめん!壮大でいい名前だと思うよ。ねぇ、マーレ。もう1度言うけど僕のモノになってよ。」
「い、いや…あのっ」
「ん?」
「わ、私にそんな価値…なくて…」
「…」
「私…とろいから…きっとあなたもイラつかせちゃう…」
「くす。そんな事気にしてるの?」
死のうとしたキッカケの出来事でも思い出してるのかな?
手を胸元で強く握って俯いてる。
トロイとかそんなの、僕からしたら皆そうなのに。
「そんな事なんかじゃ…」
「ねぇ、マーレ。僕は君をとても綺麗だと思ってる。」
「ーっ。」
「生きてる君に会えて本当に嬉しいんだ。トロイとかそんなの、どうでもいいんだよ。」
「…だめよ…きっとあなたも私を嫌いになるから…」
んー。思ったよりネガティブだなぁ。
それほど酷い事されてきたって事かなぁ。
だって目が死んでるもん。
なんにも映してない。
それは許せないよね。だって目の前に僕がいるんだから。
「それはどうだろうね?でも今言える確かな事は僕が君を愛してるって事。」
「…」
「いいじゃん?君は借金が消えてラクになるんだ。もし僕と別れても普通の生活に戻れる。いくら僕でも、破局だけで君を殺さないよ?」
「…あなたは…分かってない…」
「なにが?」
大きく息を吸って、意を決したように顔を上げた。
眉は下がっていてとても悲しそう。
何を理解していないって言うの?
「愛した人に…嫌われる怖さ。」
「??」
「もう…愛してもらえない現実がどれほど辛いか…分かってないよ。」
「ヤダなぁ…これでも分かってるつもりだよ。」
だってここで君を失ったらショックが大きいからね。
それに僕は1度、君を手に入れられない悔しさを味わってるんだ。
同じ想いはしたくないだろ?
「嘘よ。簡単に別れた後の話だってできるじゃない。」
「メリットを教えただけさ。手放すつもりはないから無駄な情報だけどね。」
「そ、それに。一目惚れって…ありえないよ。」
「なんで?」
「もっと素敵な女性がいっぱいいるじゃない。私なんか…」
「んー。」
これは時間かかるなぁ。
どうしたら信じてもらえるだろう。
あ、そうだ!この子をこんなに傷つけた男を殺しちゃう?
普段はお金貰わないとやらないけど。それで信じてもらえるなら全然アリだね。
「じゃぁさ、提案。君を苦しめた男を殺して来てあげるよ。」
「えぇ!?なんでそうなるの!?」
「だって信じてくれないんでしょ?僕は普段、お金を貰わないと殺しなんてしない。でも君の為ならその男の居場所突き止めて殺すくらい訳無いさ。」
「だ、だめ!!そんな事しないで!!」
「なんで。」
あれ?これは意外な反応だな、てっきりOKでると思ったのに。
まさかまだ未練あるとか?
それなら余計に殺す気湧くけど。
「私の事情で…手を汚さないで…」
「は?」
「あなたの為にもならないのに。手を汚すなんて…ダメだよ…」
「ーっ。」
僕の手を握って泣きそうな顔で止めてくる。
それって僕の為なら殺ってもいいって事?
なーんだ、安心した。
「じゃぁさ、君のお金だけ取り返してあげるよ。それくらいいいだろ?」
「で、でも…」
「言ったでしょ?君を大切にするって。君が望まないなら殺さないさ。でもお金は別だろ?」
「…」
「だから前向きに考えてみて。僕は真剣だよ。」
ツツツって指を滑らせた唇はとても血色がいい。
初めてキスした前世とは比べ物にならないくらいだ。
君は照れたみたいでちょっとだけ頬を染めて、そして申し訳なさそうに目を泳がせて言ったんだ。
「あの、それじゃ…お願い、します。お金だけ…」
「ん。了解♪回収方法は任せてもらうよ。天罰ナシはさすがに許せないから。」
「絶対に殺さないでね?約束…」
「分かってる。君も僕がいない間勝手に死なないでよね?そんな事したら許さないから。」
「うん…」
不安の残る顔してるけどこれでも約束は守る方だよ?
さ!これから少し忙しいくなるぞ♪張り切っていかないとね!
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