第2話再会

あれから。


僕はまた新しく命を宿した。


今度の人生も殺し屋。


少し違うのは前世と違って、チームで動く事もあるってとこ。


暗殺集団にうんと小さい子供の頃からお世話になってる。


ヨーロッパ調のこの世界は前世の僕がいた世界とはまた違った世界なようだ。


「って事はあの子は見つからないかもしれないんだよなぁ。はぁ。」


あの時見つけた死体の子。


名前はたしか…マーレだっけ?


とても綺麗だった。


生まれ変わったら絶対手に入れるって意気込んでいたのになぁ。


神様は無慈悲だよ。


「ん?あれは…」


まぁ文句言ってもさ、会えないんじゃどうしようもないから仕事するけど。


そんな僕の手にはさっき始末し終えたターゲットの死体が1体。


前世と同じように人の寄り付かない森の中で埋めるか燃やすかしてやり過ごしてる。


今回も同じ。


死体を燃やそーとして森の奥深くに入った。


帰りの目印にしてる一際大きな木があって、いつもその辺で後処理してる。


その目印の木のところ。


鮮やかなオレンジ色のスカートをはいた女の人が立ってるんだ。


「まさか…あの子?」


よく見れば手には縄が握られている。


震えてるのかな?足場に乗った彼女は縄に首を括った姿勢のまま動かない。


確認しなくちゃ。


あの子だったら止めて僕のモノにするんだ。


「ストーップ。ねぇ、何してるの?」


「へ?!ーっあ!!」


ありゃ、驚かせたかな?


勢いよく振り向いた反動で足場から落ちちゃった。


でもその縄、とっくに切ってるから首を吊る事はできないけどね。


ードサ!


「きゃっ!〜〜っいったい…」


「はは!吊らないでよかったぁ。ねぇ、君ここで死ぬつもりだった?」


「あ、え、えっと…その…」


「ーっ。」


尻もちついて痛そうに腰をさすってた彼女が顔をあげた。


間違いない、あの時の死体の子だ。


また泣いてたのかな?


目が少し腫れてる。


それでも僕は心臓を鷲掴みにされたような感覚に落ちて、彼女の魅力にどっぷりハマってしまった。


「その…見逃して下さい…わたしっ」


「やっと…見つけた…」


「え?」


「ねぇ、なんで死のうとしたの?教えてよ。」


胸がドキドキしてうるさい。


今すぐにでも抱きしめたい。


でもそんな事いきなりしないよ?


嫌われたらヤダからね。


「ひ、人様に話す事では…」


「いいでしょ?死のうとしてたんだし僕他人だし。聞かせてよ。」


「ーっ。」


あぁ、ポロポロ涙流して辛そうに唇をかみしめてる。


そんな顔していてもとても素敵だ。


きっと笑ったら僕の心臓は止まってしまうんだろうね。


「ね。泣かないで。僕を見て。」


「あ…ぅっ。ひっく…」


「はは!僕は重症だぁ…」


彼女の顔を持ち上げて目を見れば、綺麗な勿忘草色。


涙を反射してキラキラと見えるそれはまるで海だ。


「わたし…っ」


「うん」


「もう、こうするしか…」


「なんでさ?こんなに泣いて。言ってごらんよ。」


「お…おかねっ」


「お金?」


んー?どういう事かな。


ひゃくりあげちゃって言い出せないみたい。


お金ないとか?


カサ…


「あ、これ。」


「ま、まって!!見ないでっ」


「遺書だ。なになに?んー。へぇなるほど。男に借金背負わされて全財産持ち逃げされたんだ。ドンマイだね。」


「ぅ…っく…ふぇ…」


あぁ、余計に泣かせちゃったな。


顔を覆って蹲っちゃった。


それで命をねぇ。


「なるほどねぇ、うんうん。いくらなの?この借金」


「もう…やめてください…放っておいて…」


「ねぇ。いくら?って僕は聞いてるの。」


「やめて下さい!!何が目的なんです!?こんな…っ憐れむなら私が死んでからーっんぐっ」


「死なせないよ。絶対。」


ははは!すごく驚いた顔!


怒っちゃったから口を手で塞いだけど、顔ちっちゃいねぇ。


ほっぺもフニフニだぁ。


「なん…でも…私にはどうしようも…」


「僕が払うよ。大丈夫、金は腐るほどあるからね。」


「…えっ!?いや、そんなわけには!!」


「いいのいいの。それで君は死ぬのを止めるんだろ?使う予定もないしね。だから、いくら?」


できるだけ優しく、ニッコリ笑って問いかけてみる。


呆気にとられた顔も可愛いなぁ。


さて、答えてくれるかな?


「いち…おくです。こんな大金…」


「1億?ははは!とんでもなく使い込んだねぇ。いいよ、払う。どこに渡せばいいのかな?」


「だ、ダメです!こんな大金をそんなサラッと…見ず知らずの私のために使わないで!!」


「僕の金をどう使うかは僕の勝手だよ。それに…一目惚れなんだ。」


「…?」


「生きてる君が手に入るなら安いものさ。」


「なっ」


あ、今度は顔真っ赤♪


コロコロ表情が変わってずっと眺めていたいよ。


さてさて、僕のやる事も決まったことだし。


この子連れて1度アジトに帰らなくちゃ♪






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