アンマーウーヤー
「子どもは幽霊が見えるとよく言いますが」
佐久田さんがそう話始めたのはこんな話だった。
その日佐久田さん家族はシーミーをするため墓に来ていた。
シーミーとは沖縄に昔からある行事で、墓の前で親戚一同でご飯を食べながら先祖に現況を報告するというレジャー要素の強い行事である。
シーミーにはその年亡くなった人がいる家族は参加してはいけないシキタリがある。
実は半年前、佐久田さん家族は葬式を行っていた。
しかし、亡くなった家族は飼い犬であったため親戚からも大丈夫だろうと判断されて招待されていた。
墓の前ではすでに食事の準備がされており、佐久田家一同が温かく迎えてくれた。
佐久田さんの親や弟家族も来ていた。
娘も仲の良い甥っ子を見つけて大はしゃぎだった。
みんな酒も入って盛り上がってきた頃だった。
娘が突然何も無い草むらに向かって、
「あっ!今ミルクがいた!」
と指を指して大声で言った。
ミルクとは佐久田さんの家で飼っていた犬の名前だった。
娘が言うにはミルクが顔を出してすぐ引っ込んだらしい。
「違う犬じゃないの?」
佐久田さんがそう聞くと
「絶対そうだよ、模様が一緒だった」
ミルクの名前の由来は白い身体に黒い模様があり、それが牛に似ていたからだった。
「子どもはやっぱり見えるのかな」
妻が笑いながらそう言った。
すると突然泣き声がした。
声の方を見ると弟の息子が先ほどの草むらを指差して泣いていた。
「これはアンマーウーヤーだからよ」
「これにも犬の幽霊が見えたんじゃないか?」
弟が甥っ子を抱き上げながらそう言った。
シーミーも終わり、片付けの途中だった。
佐久田さんの娘が
「ミルクを見たの?」
と佐久田さんの母に抱かれた甥っ子に聞くと
「猿がいた猿がいた」
とまた泣き出しそうになった。
その時、母の顔が変わって
「シキタリはやっぱり守らないといけないね」
と一言つぶやいた。
「もしかしたら娘が見たものと甥っ子が見たものは違ったのかもしれませんね」
佐久田さんはそう話を締めてくれた。
今では佐久田家のシーミーは亡くなった家族が動物でも1年は参加禁止だそうだ。
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