経験吸収


「(やはり、そういう事ですか)」


彼女は自分の出自を特殊だと思っていた。

白檮山家。

三十年前までは斬術戦法道場として名の知れた流派だった。

当時の当主が種無しであり、娶った妻に親交のある家系から胤を貰い、三十年を掛けて再興した。

そして、白檮山雪月花は斬術戦法を学び、天才とまで称された。


「(宝蔵院珠瑜、あの御方もまた強く、命懸けの戦いを通して経験を得た)」


奈流芳一以の斬術戦法と戦闘経験は、天才と呼ばれた彼女でも到達出来ない強さになっている。

その理由は何故か?それは彼女なりに考えた結果、と言うよりかは、強者こそが行う事であると勝手に察していた。


「(白檮山家でも行われている房中術…それと同じ事を、強者である二人同士で行う事で、天井知らずに強くなっている)」


と、彼女はその様に勘違いしていた。

白檮山の一族は再興の為に優秀な遺伝子を欲した。

血縁者を通じて、その身に子を宿し、増産を行った。

何時しかその行いが因習と化し、斬人としての能力向上を行う陰儀へと変わったのだ。

当代である白檮山雪月花は中でも特異な体質であると言われた。

それは、経験吸収と呼ばれる技能。

強者の胤を呑む事で、戦闘の経験を上昇させると言うもの。

昔からそれが出来て当たり前だった彼女には、これが出来ない姉妹を不思議に思っていた。


「(強き者は、性行為を通して戦闘力を高めている…今の私には、より強き者との経験が必要…同期の斬人では意味は無い…より強くなるには…)」


奈流芳一以の体液が必要だと…白檮山雪月花は思った。

しかし、無理強いはしなかった。

自分に興味が無いのならば、例え行った所で意味は無い。

興奮の大きさによって、経験吸収の獲得量は違うのだ。


「(しかし、今は、奈流芳師は私に興味を抱いている…であれば)」


まぐわいは、不可能では無いと、彼女は可能性を見出していた。


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