聖女は俺に気があるけど、俺は困ってる…

| アークII | 第四章: 危機一髪

 考えるだけで腹が立つわ！アル！バカ！

 昨日アルが突然出発したの…とても心配だった。彼が消えたかと思ったら…後で手紙で冒険に出るって知ったのよ！手紙よ！

 …で、でも内容は甘かった…『きゃー~えへへへ~』あ…！私は今のところ彼を許すべきかな~

 不満げに頬を膨らませて月を見つめた。彼は今何をしているのだろう？無事かしら？食事はしたのかな？もう寝ちゃったのかな？

 …彼のことを考えすぎて狂いそう！アル、バカバカ！もう会いたい！

 ベッドでゴロゴロしながら寂しさを感じつつ…また月を見つめる。

 …彼もこの月を見ているのだろうか？

 「アーッ！」と私はうめき声を上げ、頭を抱えた。

 彼のことを考えずにはいられない！

 枕に顔を埋めて、彼のことを考え続ける。会いたい…二日しか離れていないのに…。

 「アル、会いたいよ…。」

…

…..

…

　同じ月を見上げながら、アルムは窓から差し込む月光の中で周りの死体を見つめていた。彼は拳を握り締め、落ち着きを取り戻し、周りの人々を見つめた。

　少年と少女は彼のコートにしがみつき、自分たちが救われたことを実感していた。アルムが現れなければ、自分たちも同じ悲惨な結末を迎えていたことを考えると、恐怖を感じた。

　彼は優しく彼らを撫でて、「もう大丈夫だ」と慰めの言葉をかけた。

　他の人々に目を向けると、彼らはこの二人ほど幸運ではなかった…彼らの目は空っぽで、無気力だった—すべてを諦めていた。そして…アルムは彼らに何も言うことができなかった。彼ができることは、彼らの傷を癒し、清めることだけだった。彼は彼らに服を与え、いくつかの人々は意識を取り戻し始めた。

　しかし….

　「アッ…アアッ！？！？？」

　一部の人々は涙と絶望に打ちひしがれ、泣き崩れた。

　（彼らは一生心理的なトラウマを抱えることになるだろう…）アルムは思いながら、見守ることしかできなかった。

　しかし、それでもいい…今は全部吐き出してもらって…まあ、しばらくの間だけど、彼らは移動する必要があり、アルムは[Abyssal Depth]を無限に維持することはできなかった…。

　（このローブを脱ぐべきだろうな…）アルムは彼らを安心させようと考えた。

　結局…彼らがアルムを見ると、丸まって泣いてしまうからだ。だから…ローブを脱いだ後、彼らは少しパニックになりにくくなった。彼らはアルムが自分たちを救ったことを理解し、できるだけ早く移動する必要があることを理解していた。

　そして…その場に留まると、彼らの絶望の記憶が蘇ってくるだろう。

　アルムが彼らを廊下を通じて安全に導こうとする中、電気を帯びた槍が彼らに向かって飛んできた。アルムは簡単に避けることができたが、それでは他の全員が死んでしまう。彼は選択の余地がなく、すばやく[マナブレード]を実体化させて攻撃をキャンセルしようとした。

　攻撃が彼の[マナブレード]と接触しようとする瞬間、彼は非常に悪い予感がし、キャンセルするのではなく、それをそらした。

　（デプスカッターを出していなかったのは失敗だった）彼は攻撃の軌道を変えた際に腕の骨がいくつか折れたと感じた。壁が爆発し、巨大な穴が開いた。

　「くそ、お前が厄介者か？」男が言った。「これらの無用な役立たずども。」彼は後でアルムの方を見ながら言った。

　彼の視線は軽蔑に満ちており、彼は「おや？君はこのカップルの玩具を救ったのか？」と興味を示し、「その点については感謝するよ」と笑った。「本当に、あの馬鹿ども！なぜあのような馬鹿が私よりも重要な地位にいるのか全く理解できない！」

　アルムは彼の演説を聞かず、状況を分析し、最適な脱出方法を見つけようとした。彼は[Static Field]を通じてカルト教団が彼らを取り囲んでいることを感じた。そして彼らのマナを考えると、今回はより能力が高いと判断した。アルムは困っていた…。

　（…その場合。）アルムは水を作り出し、それをドーム状に凝縮し、巨大的な穴の外に生存者たちを投げ出し、デプスカッターと強力なバリアを起動させた。

　説教をしていた男は彼の行動を面白がって見ていた。「ヒーローごっこでもしているのか？」彼は軽蔑的に言った。

　彼を詳しく見ると、その男は鎧に覆われ、金髪だった。

　「君が取り囲まれているのを知っていながらも彼らを守るとは、感心するよ」と彼はアルムの愚かさを称賛した。

　「....」アルムは何も言わず、彼らが動き出すのを待っていた。そして、その隙を利用して脱出し、より良い位置を取ろうとした。

　「おや？失礼、無礼なことをしたね！私の名前はウロス・アルケイだ。よろしく。」ウロスは偽りの笑顔を浮かべて言った。「君の名前は？偉大なヒーローさん？」とアルムをからかった。「...黙っているのか？」彼はうんざりしたように見えた。「まあ！君が無名のまま死んでも文句は言わないでね！」と叫んだ。「馬鹿ども！何をしている！？攻撃しろ！」

　ウロスは部下にアルムを攻撃するよう命じた。アルムは魔法で自分を強化し、来るべきことに備えた。しかしウロスはそれを問題視しなかった。しかし…ウロスはアルムが投げ捨てた短剣が特別なものであることに気付いた。

　しかし、アルムがそれを投げ捨てたのであれば、彼は何も心配することはないと考えた。

　（くそ…英雄ごっこしている間抜け。）

　しかし、取り囲まれていてもアルムは氷の剣を作り出し、それを自分の周りに浮かべて自由に動かした。剣は攻撃を防ぎ、壊れるとアルムはそれを置き換えた。

　しかしこれがウロスの気に障った。「無駄だ！何をしている！？」と叫びながら、彼も戦闘に加わった。

　ウロスは神の槍を実体化させ、アルムに容赦なく攻撃を仕掛けた。呪文を浴びせられ、危険な男に絶えず攻撃される中で、アルムは何とか致命的な攻撃を防ぎ続けた。しかし、これは良いことでもあった。彼らが攻撃を始めると、いくつかの隙が生じ、アルムは脱出を試みた。しかし、素早い動きにもかかわらず、彼らはすでに多くの攻撃を受けており、その動きは鈍っていた。

　（くそ…彼らは私が脱出しようとするのを許さないのか？）アルムは思った。

　彼は廊下を駆け抜け、避けながら進んだが、[Static Field]の助けを借りてなんとかやり遂げた。カルト教団の一人が彼の前に現れ、頭を切り落とそうとしたが、アルムは手を結晶化させてその攻撃を防ぎ、液体化した氷の糸を使ってそのカルト教団を引き離し、[Drop Bullet]でとどめを刺そうとした。しかし、その攻撃は彼らの[マナアーマー]を貫通しなかった。

　（彼らの[マナアーマー]はかなり頑丈だな）アルムは考えた。

　しかし…彼はこの特定のカルト教団を殺すために特別な努力をするつもりはなかった。多くの呪文が彼に向かって飛んでくる中で、アルムは廊下を駆け抜け、多くの敵を容易に倒していった。しかし、彼のマナは尽きかけていた。

　彼はマナの回復速度が速いが、それでも完全に回復していなかった。そして、凝縮された水を使って敵を殺すことで、いずれマナが尽きるだろう。

　疲れを感じ始めた彼は行き止まりに突き当たった。前方にはガードがいて、武器を構えていた。カルト教団とは違い、彼らは無実であり、殺すことはできなかった。

　（もうダメか…？）アルムは脱出方法を模索しながら考えた。

　彼が近づくと、ガードたちは彼に向かって突進し、攻撃を受ける準備をしていた。しかし、彼らはアルムを狙っていなかった。彼の後ろを走り抜け、カルト教団を切り倒し始めた。

　「殺せ！」ガードたちは叫んだ。「一人も生かすな！」

　（…..）

　アルムは少し驚いたが、静かに微笑んだ。（なるほど…ジャンがやったのか）彼は息を整えながら思った。

　彼に近づいてきたのは、リーダーのような男だった。「ありがとう」と言って、戦闘に飛び込んでいった。

　その後、疲れ果てたジャンが近づいてきた。彼は血まみれだったが、怪我はしていなかった。

　「どうだった？」ジャンは尋ねた。

　「...まあまあだ」アルムは答え、「生存者を見つけて、バリアの中にいる。しかし…カルト教団がバリアを破ろうとしている」と言った。

　「なるほど….大広間の人々は助け出した。そして…なぜ彼らはバリアの中に入ろうとしているんだ？キャスターを捕まえる方が簡単だろう？」ジャンはコメントした。

　「...おそらく私の剣が欲しいんだ」アルムは言った。

　ジャンは首をかしげた。「なぜ？」と尋ねるような感じだった。まあ…アルムには感じていたが、ウロスはそれが神剣ではなく、何らかの高度なマギテックであることを知っていたに違いない。

　それでも…この村に入る前に、その剣にかなりの量のマナを注ぎ込んでいたので、問題はないだろう。

　「...それは神剣ではない」アルムは告白した。「それは非常に高度なマギテックだ…彼はそれが欲しいのだろう。」

　「なるほど。とにかく急ぐべきだ。」

　「同意する。」

…

…..

…

　アルムとジャンが残りの生存者の元へ走ると、ウロスと他のカルト教団がバリアを破ろうとしているのを目撃した。しかし、彼らはアルムとジャンが近づいてくるのを見て動きを止めた。

　「ちっ」ウロスは舌打ちし、「何をしている！殺せ！」と叫んだ。

　「...大物を任せられるか？」ジャンはカルト教団が近づいてくるのを見ながら尋ねた。

　「何とかする」アルムは答えた。

　ジャンは笑い、その目が赤く染まり、血に満ちた怒りが湧き上がった。彼の牙は伸び、耳がピクピクと動き、瞬く間にカルト教団の首にナイフを突き立てた。

　周囲のカルト教団は一瞬混乱し、叫び声を上げてジャンの周りに集まった。そのような奇襲は再び効果を発揮しなかったが、ジャンはそれでも彼らのマナ層を貫通し、装甲の薄い部分を狙って攻撃した。

　彼の強化された感覚を使い、ジャンは近づくカルト教団を次々と切り裂き、叩きつけた。彼は接近してくるカルト教団の頭をぶつけ合わせ、その勢いを利用して深い傷を負わせた。別のカルト教団がジャンに飛びかかったが、ジャンは彼らの腹を肘で打ち、顎を頭で打ち、後で他の攻撃から盾として使用した。

　その後、死角からカルト教団がジャンに攻撃を仕掛けようとしたが、アルムが彼らの関節を打ち抜いて妨害した。彼の[Drop Bullets]は彼らの[マナアーマー]を貫通しなかったが、一瞬のスタン効果はあった。

　「ありがとう！」ジャンは叫び、笑顔を浮かべながら、その隙に空中のカルト教団を掴み、他のカルト教団に投げつけた。

　「くそガキ！俺を無視しているのか！？」ウロスは叫び、アルムに突進してきた。

　アルムはほとんどのマナを使い果たしていたが、効率よく呪文を使用し、必要な時にだけ使った。[Static Field]、[マナアーマー]、[フィジカルエンハンス]を現在使用していた。

　ウロスは容赦なく攻撃を仕掛けてきた。左からの一撃にアルムは前方にダッシュし、[マナブレード]を先端に沿わせて攻撃を上向きにそらし、他の手をマナで結晶化し、ウロスの心臓を貫こうとした。

　残念ながら、ウロスはベテランであり、アルムがわずかにミスするように側にステップし、彼の背中を膝で打った。彼は鎧に覆われ、魔法で強化された鋼のプレートがアルムを空中に飛ばした。

　「アァーッ！」アルムは苦痛でうめき声を上げた。

　「うるさいガキが！」ウロスは叫び、黒い稲妻を帯びた槍をアルムに投げつけた。

　アルムは空中で姿勢を立て直し、足に[マナブレード]を作り、氷の魔法を注入して槍の軌道を変え、木に衝突した。

　ウロスはアルムの敏捷性に感心したが、それでもなお苛立っていた。「うるさい！うるさいバカが！」と叫んだ。

　彼は瞬時にアルムに接近し、暗い雷を帯びた足でキックを仕掛けたが、アルムはそれを防ぐことができないと気づき、すばやく糸を作って自分を引き離した。

　ウロスの攻撃は木に命中し、木の上部を数メートル飛ばした。

　（…危ないところだった）アルムは思った。

　アルムは[液体氷の糸]でウロスを捕らえようとしたが、ウロスはその糸を簡単に引き裂いた。アルムのほとんどの呪文は固定されていないため、使用するマナの量によって効果が変わる。これはアルムが非常に優れたマナコントロールを持ち、その場で呪文を調整できるからだ。しかし…時にはそれが裏目に出ることもある。通常、呪文には最適なマナの量が必要だからだ。

　アルムはマナが尽きかけており、その動きと呪文は弱まっていた。ウロスもそれに気づき、さらに攻撃を激化させた。彼は地面を引き裂き、巨大なガントレットを作り出したが、アルムはその攻撃をジャンプして避けた。しかし…ウロスは笑っていた。

　「捕まえたぞ」と彼は不吉に言い、攻撃が地面に命中して亀裂を走らせ、その亀裂から槍が飛び出してきた。

　『はっ！？』

　アルムはウロスが攻撃で地面にマナを広げ、その亀裂から岩の槍を作り出したことに気づいた。アルムはすべての防御を放棄し、[パーマフロスト]を使用して瞬時に地面の水分を結晶化させ、氷で覆ったため、地面の槍は貫通しなかった。

　アルムは地面に衝突し、立ち上がろうとした。彼の皮膚の一部は凍っており、足は氷に固定され、疲れ果てて息を切らしていた。彼は目を閉じて[Static Field]を使用し、周囲を感知した。この呪文は元々アメセリの攻撃に反応するために開発したもので、彼の目で追いきれない攻撃に対処するためだった。しかし…この呪文はまだ未完成であり、不完全だった。

　電圧は低く、非常に自然で、感知しにくく、妨害されにくかったが、それでも彼は人々の位置を把握し、[プラズマレイ]をウロスに向けて発射した。今回は直接命中し、彼の腕を溶かした。

　ウロスは激痛に叫び、黒い稲妻を帯びた槍をアルムに投げつけた。しかし、アルムはその軌道を正確に計算し、わずかに避けた。

　彼の動きはぎこちなかったが、それでも地面から飛び出す岩の槍の連続攻撃を何とかかわしていた。

　ウロスは激しい痛みを感じ、近接戦闘を避け、呪文を詠唱し始めた。「動き回るな、このごろつき！」と彼は土を通じて呪文を唱え続けた。

　アルムに攻撃を仕掛けながら、ウロスはさらに強力な黒い稲妻の槍をチャージした。今回は、直接命中させる必要はなかった。それが通過する際に周囲を溶かし、アルムの動きを予測して致命的な攻撃を放った。「死ね！」

　アルムはすでに強力な攻撃が来ることを知っていた。地面の槍のパターンが彼を特定の方向に誘導していたため、彼は片足を犠牲にしてできるだけ攻撃から離れようとした。

　「何！？ウロスは叫んだ。

　アルムは地面に倒れ込み、マナを流し込んで地面の水分を凍結させ、地面の槍が貫通しないようにした。

　『ちっ』ウロスは舌打ちした。

　彼は自分の状態が悪いため、近接戦闘に参加することを避け、アルムが狡猾なやつであることを知っていたので、リスクを冒さなかった。

　ウロスは周囲を観察し、部下が戦闘で劣勢に立たされていることと、ジャンによってガードを操っていた魔法使いが殺されたことに気づいた。

　（今すぐこいつを殺そうとすれば、多分自分が死ぬだろう…）彼は慎重に選択肢を考えた。

　「くそ…」彼はつぶやいた。

　それは、このごろつきを殺そうとするか、自分の命を守るかのどちらかだった。もちろん、彼は愚かではなく、後者を選んで森に逃げ込んだ。

　ウロスが逃げるのを見て、アルムはついにリラックスし、マナを完全に使い果たして意識を失った。