　薄暗い居心地の良い書斎で、アルムとルナはそれぞれ本を読みながら、お菓子とお茶を楽しんでいました。アルムはルナから贈られた本を読み、ルナは小説を読んでいました。静かな時間が流れ、お互いの存在に慣れてきました。二人ともこのような状況に慣れていませんでしたが、不快ではありませんでした。ルナはページをめくりながらアルムの肩に寄りかかり、心の中で暖かさとふわふわした感覚を感じました。それは彼女にとって慣れない心地良さでした。

　その一方で、アルムはルナから贈られた本を何度も読み返していました。彼は本に集中していましたが、ルナにも注意を払っていました。彼は普段の穏やかな性格のため、彼女が寄りかかってくることに特に気にせず、むしろその状況を不快に感じていませんでした。彼が何かの概念を理解するのに苦労したときには、ルナが説明してくれました。

　彼は以前、マナが体全体に均等に広がっていて、魔法を発動する際には想像力が重要な役割を果たすことを学びました。魔法の最も基本的な形は属性魔法であり、それは使い手の元素特性に依存します。この魔法の種類を使うのは、自分の体を動かすのと同じくらい自然なことです。

　アルムはそれをある程度理解していました。彼も初めてチェリーと出会ったときに何かを感じたからです。しかし、アメセリと出会った後、彼は異なる種類の魔法が存在することを学びました。インストラクション魔法はその一つです。彼はそれがどのように機能するのか完全には理解していませんでしたが、ルナの本の短い説明から、これは魔法回路をトレースすることで使用される魔法であり、マギテックで一般的に使われるものであることを学びました。

　それでも、この種の魔法は非常に難しく、属性魔法のように自然に使うことはできません。そのため、主にマギテックに使用されますが、属性魔法のように視覚化することで発動することも可能です。想像力を使って呪文を視覚化する代わりに、回路を視覚化し、マナでトレースするのです。

　—アルムもそのために精神的な負担がかかることを理解しました。

　もう一つの要素は詠唱です。これは必須ではありませんが、特定の呪文と体を結びつけるのに役立ちます。そして呪文の名前を通じてさらに安定させることができます。理由は明らかではありませんが、キャスターがマナと記憶を呪文の名前を通じてリンクすることができると考えられています。しかし、いずれかは必要です。ルナもまた、マナをコントロールする能力が必要であると付け加えました。

　アルムはまた、ヒーリング魔法が特定の属性を必要としないことに驚きました。しかし、光または水の属性が存在する場合、より効率的です。ただし、ヒーリング魔法は多くのマナを消耗し、実行するのが難しいため、高度なヒーリング魔法を学ぶ人は少ないです。

　属性魔法以外にも、無属性魔法があり、これは属性のない魔法です。これらのタイプの魔法は、身体強化やバリアのような強化魔法に関連しています。

　学問的には、これらのタイプの魔法が最も一般的に教えられ、最も一般的な攻撃魔法とともに教えられます。より高度な攻撃魔法は個別に学ぶか、軍事アカデミーでさらに教えられます。

　魔法は非常によく規制されており、許可されていないものは完全に破壊されます。言い換えれば、都市内での魔法の武器化はほとんど意味がありません。アルムはバリアがどのように機能するのか興味がありましたが、その情報にはアクセスできませんでした。彼は「ディロスフィア」というものがあり、それが星によって動力を供給されるスーパーコンピュータであることを知っていました。

　都市内では凶悪な犯罪者やクリーチャーはほとんど問題になりませんが、外の世界ではそれが横行しています。しかし、それらが大きな脅威ではないとしても、「ダーク・ボン・セルゲス」のような例もあります。これらのクリーチャーは非常に稀ですが、警戒を怠るべきではありません。アルムは、リゲルドと共に読んだレポートのおかげでその存在を知っていました。

　アルムは時間を費やして世界やその仕組みについての情報を収集していました。確かに他の人たちも同じことをしていましたが、彼らは何を学ぶかを選ぶことができませんでした。彼はルナと話すことでこれを確認しました。しかし、彼らはまた文化も学んでいました。そして、彼もそれを学ぶべきだと考えるようになりました…。

　しばらくの間、彼は書斎にいました。過去数日間の睡眠不足のために少し疲れていましたが、ルナの本を手に持ったまま勉強を続けました。

　ルナはアルムが彼女の肩に頭を預けていることに気付きました。彼女はこのように警戒を緩めることに驚きました。ルナも限界に近づいていました…。彼女は最近、首都近くで発生したアウトブレイクから戻ったばかりでした。結果的にカルト教団がその背後にいることが判明し、彼女のチームがそれを排除する任務を受けました。そして首都に戻ると、再び別の任務に送られました…ルナだけは新人の指導者として叔父の要請で残されました。

　今や彼女は新人の訓練を担当しており、少しはリラックスできるようになりました。しかし…彼女はまだ休暇を取りたいと思っていました…（これは少なくとも荒野で常に警戒しているよりはるかに良い）と彼女は思いました。

　彼女とアルムの本を脇に置き、ランプを消して彼に目をやりました。彼は穏やかに眠っており、完全に警戒を解いていました。ルナはこの光景を見て微笑み、彼らの絆が特別だと感じました。おそらく彼を友人と考えることができるでしょう。

　ルナは他人と仲良くなるタイプではありませんでした。主に彼女から何かを求められることが多かったからです。また、王族としての懐疑的な性格も一因でした。しかし、叔父が彼らがうまくやっていけるだろうと言ったとき、彼女はその言葉に眉をひそめました。その時、彼女はため息をつきました。叔父が鋭い目を持っていることは知っていましたので、この異常な状況にもかかわらず、彼と会うことに決めました。

　（…正気の叔父が自分の姪と夜中に会うように言うだろうか？しかも私のような王女に…？）

　まあ…もう一つの理由がありました。彼がどんな人なのか興味があったのです。彼に対する最初の印象が変わりました。彼との会話は楽しかったです。沈黙は陰鬱でも気まずくもなく、お互いの存在を楽しむことができました。

　彼女の人生の中で多くの人々が彼女の周りに集まり、彼女を偶像視しました。多くの賞賛を受け、多くの人々が彼女の周りにいましたが、彼女と他人の間には常に大きな距離がありました。彼女は叔父に感謝していましたが、彼は忙しい人でした…。

　（…感謝の気持ちとして書類の整理を手伝おうかな？）と一瞬考えました。彼女も限界に近づいており、アルムを見ました。（…これくらいなら大丈夫…だよね？私たちは友達だもの。）彼女は彼に寄り添い、ついに彼の膝に頭を預けて眠りに落ちました。

　…

　 …..

　…

　リゲルドは最後の書類を整理し、二人が会ったかどうかを確認するためにルナの書斎に向かいました。彼は二人が快適そうにしているのを見て驚きました。ルナはアルムの膝に頭を預けて、心地よさそうに丸くなっていました。

　リゲルドはその光景をカメラで撮影したかったのですが、デバイスを持っていませんでした。しかし、もし撮影していたら、ルナが彼のオフィスに怒鳴り込んでくることを考えると、二の足を踏みました。

　『まあ…これは驚きだな』と彼は呟きました。

　リゲルドは自分の行動に少し罪悪感を覚えました。アルムが聖アメセリに恋しているという噂があったからです。噂とはいえ、それが真実であることを彼は知っていました。彼は自分の目で見たのです。彼はそれが一方通行である可能性が高いと考えていました。アメセリは普段の時間には少し不器用で、困惑することが多かったのです。しかし、再度考えてみると、他の男性に対して彼女がそのような反応を示したことは一度もありませんでした。

　（初恋…）リゲルドはルナの代わりにアメセリであることを望んでいました。彼らがうまくいくのを見て、彼はルナが最高のものを手に入れることを望んでいました。おそらく彼の見解は間違っており、それが一方通行であるかもしれません。もしそうなら…（いや…ルナはそれを私のように見ているわけではない。おそらくこの親密な光景はロマンスとは異なるものだ…それは彼女だけが知っていることだ。）

　…

　…..

　…

　真夜中にアルムは見慣れた天井を見て目を覚ましました。壁には豪華なアートワークが掛けられ、多くの本棚と広大な作業スペースがありました。

　彼は眠れなかったので起きて目を擦りました。外は真っ暗で、月は暗い雲の後ろに隠れていました。彼はトイレに行こうと立ち上がりましたが、下の階から何か音が聞こえました。

　（…何の騒ぎだろう？）と彼は考えました。

　彼の頭はズキズキし、眠気を感じましたが、それは通常とは異なる感覚でした。もしかして疲れすぎているのか？アルムは普段真夜中に目を覚ましてもこのように感じることはありませんでした。したがって、何かが間違っていると感じました。

　（…錠剤を飲むべきか…）

　彼はゆっくりとドアに向かい、廊下の灯りが消えているのに気付きました。彼は重い木製のドアの取っ手を掴んで押し開けました。廊下は真っ暗で、出ても灯りはつきませんでした。

　（…ん？停電？発電機はなぜ動いていないのか？）

　彼は暗闇の中を歩き、少しつまずきました。廊下に居住警備員がいないのも不思議でした。彼は何が起こっているのかを少し疑い、完全に静かになるまで待つことにしました。

　彼は下の階に向かい、足元が湿っており、少し粘ついていることに気付きました。空気は鉄の匂いがし、悪臭が漂っていました。しかし、それにもかかわらず、彼は暗闇の中の障害物を確認することなく歩き続けました。

　しかし、明るいリビングルームに到着したとき、彼は凍りつきました。そこには見慣れない男が暗闇に包まれていました。アルムはその男の手に目を向け、冷たい鋼を見ました。刃は血で覆われ、滴が血だまりに落ちていました。彼は周りを見回しました。警備員たちは眉間に穴が空いて倒れており、彼の両親は拷問の結果として認識できない状態で床に横たわっていました。

　彼の呼吸は荒くなり、吐き気を感じました。空気は血の味がしました。彼は視線を下げ、自分も血まみれであることに気付きました。廊下の障害物は死体でした。彼は胸を抑え、膝から崩れ落ちました。呼吸が激しくなり、過呼吸に陥りました。男は彼に近づいてきました。男の目は冷たく、「あれ？子供か？」という声も冷たく不気味でした。

　その言葉が部屋中に響き渡り、男は笑みを浮かべながらアルムを見下ろしました。彼が過呼吸で動けないのを見て、男は彼を蹴り飛ばし、アルムの喉元に刃を突き立てました。

　彼は少年の目に恐怖を見ましたが…「良い…泣き虫じゃないのは良いことだ」と男は言いました。「ねえ坊や、貴重品の場所を教えてくれたら生かしてやるよ。どうだ？」と男は提案しました。「君は良い子だから教えてくれるよね？」

　アルムは状況を完全には理解していませんでしたが、頭がふらつき、思考がぼんやりとしていました。過呼吸か、男の冷たい刃によって死ぬかのどちらかでした。

　純粋な意志力でアルムは過呼吸を止めるために息を止めました。彼は心を固め、パニックを防ぐために感情を閉ざし、冷静に切り替えました。

　男は興味深げに彼を見ました。「おお？賢い子供だな」と男はコメントしました。男は立ち上がり、刃から血を拭き取りました。「それで？貴重品はどこだ？」と冷たく尋ねました。

　アルムは冷たく男を見つめ、ため息をつきました。「警備員たちを殺す前に聞くべきだったんじゃないか…でもここには大抵何でも価値があるよ。廊下はアートワークでいっぱいだ—」

　「つまらない！現金の場所を教えろ、絵画や彫刻なんて興味ない！」

　「…宝石や金で十分か？」とアルムは尋ねました。もう麻痺していない彼は立ち上がり、「それとも他に探している貴重品があるのか？」と言いました。

　「ふん、そんな口調で話すべきじゃないだろ？」と男は殺意を込めて言いました。

　アルムは冷たく男を見つめ返しました。そして彼の死んだ両親を一瞥し、その変わり果てた姿が彼の記憶に焼き付きました。「もう全てを失った」とアルムは答えました。

　「ちっ、変な子供だな」と男は舌打ちしました。「どちらにせよ、この家族が貴重なプロジェクトに取り組んでいたと聞いたが、それはどこだ？」

　（……）アルムは冷たく男を見つめ、「どのプロジェクトを指しているのか分からないが、プロジェクトがあることは知っているんだろう？みんなを殺しておいて今さら何を聞く？」と皮肉を込めて言いました。

　男は肩をすくめました。「それじゃあ、金庫を見せてくれ。」

　「…地下にあるが、君のチームはすでにそこに入っているだろう。」

　「…君には友達がいないんじゃないか？退屈な子供だな。」

　「私の家庭教師は、友達は必要ないと言っていた」とアルムは冷静に答えました。彼は暗い廊下に歩き出し、「さて、来るかどうか？」と尋ねました。

　その殺人者は笑みを浮かべ、アルムの後に続きました。「君は大胆な子供だ」と彼は言いました。「それにしても、君は我々に加わらないか？君にかなり高い地位を与えることができるし、君を受け入れることができる。君は気に入ったよ、子供。」

　暗闇の中でも、アルムが男を憎悪の目で見つめていることが分かりました。「結構です」とアルムは答えました。

　「残念だな」と男は肩をすくめました。「それにしても、これからどうするつもりだ？」

　「…君は私を生かしておいてくれるのか？」

　男はくすくす笑い始め、興味深そうにアルムを見ました。「もちろんだ。君が約束を守るならな。」

　「なるほど」とアルムは無関心に答えました。

　アルムが男を貴重品の場所に案内した後、男は突然アルムの喉に刃を向けました。「我々は出発する。君は本当に来ないのか？」

　アルムは首を振りました。「いいえ。ここで死んでもいい。」

　「ふん、楽な方法を選ぶのか？」

　「…..」

　男はアルムに背を向け、歩き出しました。彼は振り返り、狂ったような笑みを浮かべて「うん、その目が気に入った」と言いました。

　しばらく経って、アルムは再び正気を取り戻し、膝をつきました。彼は拳を握り締め、出口に向かって憎しみを込めて見つめました。

　「くそったれ…」

　…

　…..

　…

　アルムはいつの間にか居眠りをしてしまい、首が少し硬直していました。ページをめくる音と、膝の上に感じる温かい感触が聞こえました。日差しが明るく、目を開けると、書斎が明るく照らされていました。

　彼は熱さのために少し不快に感じましたが、脚も痺れていました。その原因は他でもなく、ルナでした。彼女はアルムの膝に頭を乗せて、先ほどの本を読んでいました。

　昨日彼女が非常に冷たいか親密であることを感じていたので、彼女がこのような親密な位置にいることに驚きはしませんでした。それは彼女がアルムに対して非常に心地よい距離感を感じていることを示しているのでしょう。アルムもまた子供の頃から孤独でした。多くの人に囲まれていたにもかかわらず、彼は常に孤独でした。

　ルナの姿を見ていると、自分自身の若くて無垢な少年を思い出しました。愛情を求めたが、得られなかった自分を。

　突然、ルナは頬に暖かくて湿った感触を感じました。彼女は本から目を離し、アルムに視線を移しました。すると、彼が涙を流していることに気付きました。彼女は一瞬凍りつき、どうすればよいか分かりませんでした。しかし、彼の苦しそうな表情を見て、彼女はパニックに陥りました。

　「！？アル、どうしたの！？そんなに不快だったの！？もしそうなら、やめる！」

　ルナはできるだけ早く立ち上がりました。彼が首を横に振ったとき、彼女は安心しました。どうやって彼を慰めればいいのか分からず、彼女は優しく彼を抱きしめました。彼女も彼と同じくらい混乱していたでしょう。どちらも状況を理解していませんでしたが、何らかの理由でルナも涙を流し、彼の隣で泣き始めました。

　しばらくして、二人とも落ち着きました。アルムは彼女に感謝し、エミリーが彼のためにこれをしてくれた時のことを思い出しました。

　「私もなぜ泣いてしまったのか分からない…」と彼女は恥ずかしそうに視線をそらしながら言いました。

　アルムは少し笑いました。彼は彼女が予想以上に感情的だと思ったことをコメントしたかったのですが、ただ彼女の頭を撫でることにしました。「ありがとう、ルナ」と彼は言い、珍しい笑顔を見せました。彼女がそれを気に入っているかどうかは分かりませんでしたが、彼女の反応からすると、彼女はそれを楽しんでいるようでした。

　「小動物を撫でているようだと思ったでしょ？」とルナは問いかけました。

　アルムは微笑みました。「少しね」と彼は答えました。

　彼の答えを聞いて、ルナはふくれっ面をし、本を手に取りました。「…なぜやめたの？」と彼女は尋ねました。

　「…君がそれを気に入らないと思ったから」とアルムは笑いながら答えました。

　「嘘つき…」