美鈴、用心した方がよさそうだよ

 ここは闘技場の特別観覧席。

 一般観覧席にいた美鈴とミィレインはここに案内される。


 そして現在美鈴とミィレインは、大きな覗き窓から会場を眺めていた。

 周囲には誰も居ない。だが扉の外には警備の者が見張っている。


「ねぇ、ミィレイン……ここ寂しいよね」

「そうねぇ。まるで隔離されてる気がするわ」

「うん、マルバルトさんの話だと……私を護るためって」


 そう言い美鈴は、ミィレインをみた。


「そうかもしれニャいけど、なんでそうする必要があるのか分からニャいわ」

「そうだね。それに……聞いても教えてくれなかったし」

「何か隠してる気がするのよね」


 それを聞き美鈴は、コクリと頷いた。


「ウチもそう思う」


 そう言い美鈴は扉の方をみる。



 ――場所は移り、ここはマルバルトが居る特別観覧席――


 マルバルトは行ったり来たりと落ち着かない様子だ。


「サグリヌ……やはり二つの派閥が動き出したか」

「はい、マルバルト様の指示通り……この三日間仲間と共に女神崇拝派と魔王崇拝派を調べました。その結果、両派閥共に自分たちのアジトに集まっているのを観測しています」


 そう言いサグリヌはマルバルトをみる。


 この竜人族の女性はサグリヌ・ドグカーン、年齢不詳。マルバルトの下て隠密に動いている者だ。他にもサグリヌのような者はいる。

 オレンジ色の長い髪を上でツインお団子にしていた。見た目はキツメである。


 それを聞きマルバルトは、難しい顔になった。


「なるほど……それで、内容までは分からぬのか?」

「マルバルト様の予想した通り、魔王崇拝派はミスズの命を狙っている様子です。それと女神崇拝派は、ミスズを引き入れようとしている……」

「やはり……両派共にミスズの存在に気付いたか。個別特別観覧席に隔離して正解だな」


 そう言い窓の外へと視線を向ける。


「……だが、もう少し増やした方がいいかもしれんな」

「では、手配を致しましょうか?」

「そうだな……気配を悟られぬ者を数名配置させろっ!」


 そう指示されサグリヌは、コクッと頷いた。その後、部屋から出ていく。


(このことはドラバルト達に知られぬまま処理せねばな。それに女神崇拝派は、ドラバルトを狙ってくる可能性がある。

 恐らく、この闘技大会に刺客を送っているかもしれぬ。まあ、ドラバルトのことは心配いらんと思うが……もしもの時のために見張りをつけといた)


 そう思いながら覗き窓のそばまでくる。

 そしてその後もマルバルトは、色々と考えていた。


 ✶✲✶✲✶✲


 そんなことが起きているとも知れずに美鈴とミィレインは、観覧席で話をしている。


「考えても分からないね」

「そうねぇ。今は何も考えニャいで、闘技大会を楽しみましょう」

「うん、そうだね。そうだ! ドラバルトとファルスって、どっちが強いのかな?」


 そう問われミィレインは、即「ファルス」と答えた。

 それに対し美鈴は「ドラバルト」と返答する。

 そして美鈴とミィレインは、その後「違う」や「そうだ」と言い合いを続けたのだった。

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