第31話 ランスロット捜索
陰キャマキュリーを愛でる会との戦闘後、私は急いで中層へ向かっていた。その道中、とんでもない光景を目の当たりにした。
それは、下層の至る所で火の手が上がっていることだ。
火の海、とまではいかないが、家へ家へと火が燃え広がっている。考えられる原因は、お互いの集会所が爆破され、怒り狂った信者が手当り次第に破壊の限りを尽くしている。もしくは、潜伏していたどちらかの伏兵が火を放ち、事を大きくして混乱を招いている。
いずれにせよ、首謀者のランスロットを捕まえて全て吐かせる。
兵長候補のランスロットは普段、育成修練所で仲間と戯れているらしい。爆破実行日にいつも通りの行動をしているとは限らないが、行かなければ話にならない。
猛ダッシュで中層への大階段を駆け上がり、建物の隙間を縫って最短距離で育成修練所へと向かった。
――――育成修練所――――
育成修練所の門を開けて騎士の待機所へ行く。そこには数名の騎士がタバコを吸っており、私の姿を見るなり慌てて火を消した。こんな非常事態なのに呑気なヤツらだ。
「ランスロットはどこにいる」
私は騎士達に問いかけると、彼らは知らないと答えた。なんでも、マーリンという下層地区の騎士と揉めてからはめっきり姿を表さなくなったらしい。
その時の内容を聞いていた騎士によれば、ロリアーサーがどうの、陰キャのマキュリーがどうの言っていたらしい。ぶん殴りたい。
騎士達の中にはランスロットと仲の良い騎士が居て、彼がランスロットの宿舎まで案内してくれた。
ドンドン――
ランスロットの部屋を叩くが、中から反応はない。緊急事態のためドアを蹴破ると、鼻にまとわりつくような異臭と異様な光景が私を迎える。
(何コレきっしょ。てか、くっさ……)
壁一面に貼ってあるマキュリーの絵、ゴミ箱に捨ててある大量の固まったちり紙、等身大サイズのマキュリー像。何もかもがキモすぎる。
こんな異様な光景の中、机の上にポツンと日記があった。
内容はどれもこれもマキュリーに関するものばかりで、普段彼女をどんな目で見ているか1発でわかるような事が綴られていた。
しかし日記の最後のページに気になることが書いてあった。
『あの聖騎士様のおかげでここまで大きくなれた。あんなものまでくれて、本当に嬉しい。早速ふざけたロリアーサー教のやつらを皆殺しにしてこよう』
お前も十分ふざけてるだろ。
あの聖騎士様、あんなもの、と、不思議なワードが多い。それに、日記の日付が昨日で止まっている。
おそらくランスロットは既に、敵の本拠地へ殴り込みに行っている可能性が高い。あの建物の瓦礫に埋まっているか、地下があるのか。
戦地演習の時の、国民を余すことなく避難させた超巨大塹壕があるのなら、過激な宗教団体の本拠地に地下があっても不思議ではない。
「中層、上層の全騎士に通達だ。ろ、ロリアーサー教と、陰キャマキュリーを愛でる会の二宗教が民間人を巻き込んで争っている。これ以上被害者を出さぬよう、国民の避難と信者の排除を命じる。」
「……騎士長様ふざけてます?」
「ふざけてないわ! もう泣きたい……」
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