第25話 幼狼③
「総員! 消火妨害並びに王国騎士に楯突く反逆者として、この者らを始末せよ!」
東地区の兵長が応援に駆けつけてくれていた。彼の号令で防戦していた騎士達は剣を抜き、白いローブの人達と次々に戦闘を始めた。
俺とソラも抜剣し応戦する。
消火隊は一時撤退し、周りが燃え盛る中金属の打ち合う音が響く。
ガラガラガラ――
爆破された建物が崩れ、正面に付いていたであろう看板が落ちてきた。そこには、陰キャマキュリーを愛でる会と書いてあった。
……は?
アーサー騎士長様と最初に向かった建物がロリアーサー教で、この建物が陰キャマキュリーを愛でる会。名前からして宗教団体だと予想されるが、この破壊工作は恐らく互いの根城に仕掛けられた物。
つまり、消火活動を邪魔しに来た白いローブの人達は、ロリアーサー教の者達という事になる。そうすれば、敵対しているであろう陰キャマキュリーを愛でる会の消火を邪魔するのにも納得がいく。
「おい、なんだよ陰キャマキュリーを愛でる会って……。気持ちわりぃな」
戦いながらソラが若干引いている。気持ちは分かる。
しかし、仮に俺の推理が正しいとして、この事件の首謀者は両宗教団体の教祖の可能性が高い。マーリンさんはロリアーサー教とかいうキモイ宗教の教祖だったのか。
「お、おい誰だアレ!」
重そうなハルバードを振り回す白いローブがひとり居た。体格も性別も分からないソイツは、次々と騎士をなぎ倒している。
しかもソイツはこちらの姿を確認するなり、真っ直ぐこちらに向かってきた。
ギイィィィンッ――!
重い一撃をなんとかエクスカリバーで受け止めたが、騎士でもなさそうな白いローブに力負けしそうだ。
俺は何とかソイツのハルバードを振り払い、篭手に刀身を置いた。
「アーサー騎士長様の変な宗教を作るだけでなく、俺達王国騎士に反逆した事、斬られてから後悔するなよ!」
俺は刀身を流して火花を散らす。火花は刀身に纏わり、エクスカリバーが燃え盛る。
俺の隣でミストナイトを持て余しているソラもいる。2人でなら力負けは無い。
「オラァ!」
先陣を切ったのはソラだった。素速く急所を狙った攻撃は俺でも反応が遅れるほどだったが、白いローブはこれに対応する。金属のぶつかる甲高い音が響き、俺もソラに続いて剣を振るう。
ギャイィン――!
空いている胴体目掛けて燃えるエクスカリバーを振るったのに、鍔迫り合っていたソラの双剣をズラし、俺の剣にぶつけて威力を殺した。
予想外な事に、コイツはただの信者ではない。戦い慣れしている騎士かもしれない。
「マジかよ――!」
白いローブの攻撃が加速した。しかも狙いは俺らしく、ソラの攻撃を受け流しても反撃はしない。コイツは、俺には明確な殺意のようなものを持って反撃してくる。
エクスカリバーの炎が舞い、それと踊るようにハルバードも動く。俺は段々とコイツの攻撃の重みに慣れてきて、いなして躱して受け止める。そうしているうちに、アーサー騎士長との手合わせを思い出してきた。
俺に負けじとソラも攻撃を差し込む。ソラも、より速く、より洗練された動きになってきていた。白いローブをかすめるだけだった刃が、徐々に薄皮を切り血を出させるまでになっていった。
「――――!」
白いローブはハルバードを薙ぎ払うと、俺達から背を向けて逃げていってしまった。
「待てぇ!」
ソラが石を投げるが、ヤツの足元に落ちるだけで当たらなかった。
俺達はハルバード持ちの白いローブの深追いを辞め、周りで合戦中の騎士達に合流し、ロリアーサー教の信者を斬り捨てていった。信仰のために人の命をないがしろにするヤツらを、片っ端からブチ殺す。
正義の敵はいつも正義なのだから。
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