第21話 ウミの過去
「っぶねー!」
ウミがエクスカリバーを篭手に当てた時点で何かあると思った私は、掴んでいた手を離して距離を取り、爆破の炎を剣を振り払った。
「さすが騎士長様……あ!」
ウミが剣を置いて私に近づき、服を脱いで私に着せてきた。どんな変態プレイだよと思って拒んだが、ウミに自分の姿を見るよう言われた。
「――――!」
爆発で私のワンピースはボロボロに破け、胸元や足の際どいところなどがあらわになっている。
さすがの私もこれはとても恥ずかしい。女の子だもん。
「あ、おおお俺はまた今度で大丈夫なので、ふ、ふ服を着替えましょう騎士長様」
傍観していたソラが目を逸らしながら、震えた声で戦いの延期を提案してきた。こんな状態じゃ手合わせ所ではない。
「ごめんなさい騎士長様!」
ウミは地面に思いっきり頭をつけて謝ってくる。舐めてかかったのは私だし、悪いのは私だよ、と伝えても聞く耳を持たない。めちゃくちゃ謝ってくる。
私とウミの戦いをチラチラ見ていた周りの訓練兵や騎士達もこちらに寄ってくる。
私は恥ずかしいけれど、でもちょっと面白くなってきてウミの耳元でこう囁いた。
「責任取ってね」
ウミはその瞬間体をおっ立て、私をお姫様抱っこして走って戦闘修練所を出た。ウミの目がなんだかキマってて面白怖い。
私はそのまま下層にあるウミの実家へと連れていかれた。中層から下層へ私を抱いたまま走れる体力と走力がすごい。やはりこいつは訓練兵の枠に収めておくには勿体ない。
――――ウミの実家――――
「ここまで運んでくれたのはありがたいけど、あれは嘘だよ?」
ウミが風呂に行くと言い出し、そろそろやばいと思ってネタばらし。ウミは安堵と落胆の入り交じった、なんとも言えない表情をしていた。ごめんよ。
私のボロボロの服を見て、改めて謝罪をし、とりあえず自分の服を着てから帰って欲しいと彼に言われた。私は彼の言葉に甘えて服を借り、帰る前に彼の身の上話を聞いた。
騎士の父と専業主婦の母を持つ彼は、厳しくも格好良い父の背を見て、自分も将来騎士となり、子供が出来たら父のように格好良い背中を見せたいと思っていたそうだ。
しかし彼は幼い頃病弱で、よく風邪をひいていた。母からも友人からも騎士は無理と言われ、とても悲しかったのを覚えているらしい。
でも父と幼なじみのソラは違った。この2人だけは自分を応援してくれて、夢を掴む手助けをしてくれていたそうだ。
小さい頃に父が教えてくれた稽古を今でも1人で続けているらしく、病弱な体も改善されてきて、去年ようやくソラと一緒に訓練兵になれた。
去年といえば騎士長が私に変わり大混乱が巻き起こった年だが、ウミとソラは私の騎士長就任式を見ていたらしく、女の人でも騎士長になれるのかと修練を甘く見ていたらしい。
しかしウミは、私の戦い、指揮、仕事、何を見ても尊敬の念しか湧いてこず、私のように強くなりたいと思うようになったそうだ。
照れる。
「こんなくだらない話に付き合って頂きありがとうございます」
「いやいや、全然くだらなくない。よく頑張ったな」
私は隣に座る彼の頭を少し撫でる。照れくさそうにしながらも、ウミはへへへと笑っている。
「さ、私はそろそろ帰るよ。夕日になりかけてきたから、風邪ひかないように体冷やすなよ」
私は大きめのウミの服を借りて玄関を出る。見送ってくれたウミに礼を言い、私の家へと向かった。
――――自分の家――――
家まで帰ると、私の家の前に男が3人と女が1人立っていた。よく見ると、女の方は見慣れたマキュリーだったが、男の方はよく分からないヤツらだった。
私は関わりたくないと思いつつも、家の前に変なヤツらが居るのは嫌だったので話しかけることにした。
「邪魔なんだけど」
私の声を聞くなり、マキュリーはすごい速さで私の方を見た。ジロジロ舐め回すような視線をしながら私を凝視し、しまいには近づいて匂いを嗅いでくる。顔面にもう1発欲しいのだろうか。
「騎士長様のその格好と男の臭いはこの際不問とします。それより、コイツらが中々興味深い事を言ってきたんですよ」
その男達は私を見ると急いで走り去っていった。とても慌てた様子だったので、犯罪者の類を疑ってしまう。
「あぁ行っちゃった……」
また良からぬことを考えてるな。
「ま、後ででいっか。それより騎士長様ー」
抱きつこうとしてきたバカを蹴り飛ばして私は家に入った。
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