第20話 白銀の狼vs爆炎の幼狼


 中層には修練所がいくつかある。『育成修練所』、『体術修練所』、『広域修練所』、『戦闘修練所』。その中で剣士に適した場所は戦闘修練所。


 私は彼らを戦闘修練所へ連れていき、訓練兵や修練中の騎士から場所の一角を借りた。私は私服で修練所に行くのはちょこちょこあるのだが、彼らは初めてだったようで動きが少し硬い。


「いつも通り動けなさそうなら服借りれば?」


 ウミとソラはそそくさと更衣室へ行く。私もワンピースでは少し動きにくいが、でもまだ訓練兵だろうと、舐めていた。


 服を動きやすい格好に着替えてきた彼らは、早速各々の武器を装備していた。


「様になってるじゃん」


 私は鞘に収まっている黄金の剣キャリバーンを構える。すると。


「俺からお願いします」


 ウミがタイマンを申し込んできた。てっきり私は2対1で来ると思っていたから拍子抜けした。でも、個々の能力を試すのに2対1は彼らもやりずらいだろう。


 ウミはエクスカリバーを篭手に当て、そのまま刀身を流す。ギャリギャリギャリ! と、篭手と刀身の擦れる音が鳴り、バチバチと火花が散る。散った火花が刀身に纏わり、やがて刀身が燃える刃に変わった。


 そして彼はすぐに私へ距離を詰め、燃えるエクスカリバーをなぎ払う。ボゥという炎と剣の振りが重なる音がし、私はそれを受け流す。


 しかし一振では終わらず、彼は受け流された勢いを剣に乗せて回転撃。


 ギィィン――


 剣と身体の重さが乗った良い一撃。私は回転撃を受けて鍔迫り合いになってしまった。


「自分だけ真剣はフェアじゃないです」


 ウミは剣を振り払って1歩下がる。


「でも真剣は危ないじゃん?」


 私は訓練兵の剣なんぞ当たらん、という裏返しになるこの言葉は、強くなりたいと願う彼の心に火をつけてしまったらしい。剣にも火ついてるけど。


「だったら鞘抜いてくれるまで攻めまくりますよ!」


 彼の動きが変わる。先程の様子見の動きとは違い、剣の速さも攻め方も数段上がった。


 燃えるエクスカリバーは私の前を縦横無尽に駆け回り、炎の軌跡が残るまでに彼の動きが速くなってきた。


 これは私からも攻めないとドンドン調子上がると思い、彼の攻撃の隙をついて一太刀入れる。


 すると彼は驚く事に、私の剣の振りを見てから避けた。動体視力と身体の使い方が良く育っていて、もう彼の動きは訓練兵のそれでは無い。


「遅いですよ騎士長様!」


 避けた態勢からウミは燃えるエクスカリバーを振るう。私も負けじと彼の動きを躱して受けて流す。しかし、段々と調子が上がっていくウミは、騎士剣技というより私の動きに近いような戦闘スタイルになってきている。


 剣にもより重さが加わってきて、昔の自分と戦っているような感覚になってきた。


「うぐっ……」


 エクスカリバーの炎が徐々に薄くなってきた頃、ウミは体術まで織り交ぜてきた。こいつは中々厄介と思った矢先。


「騎士長様、死なないでくださいね」


 私の頬に左拳を突き出してくる。私は咄嗟にその拳を掴んで受け止めるが、ウミは左腕の篭手に剣の刀身を当て流す。


 ギャリギャリ――


 バチバチバチ――!


 ドゴオオォォンッッ――!!


 彼の篭手から爆発が起こった。

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