第17話 sideウミ
大規模攻城戦が終わり、俺は宴に参加していた。こんな貴重な経験は無いだろうと、今日の出来事を心に刻んだ。
先陣を切って中層へ向かっていくマーズ隊長とサンファー国軍の精鋭、国の城壁をボロボロに崩壊させたアーサー騎士長、隣で一緒に喰らい付いていたソラ。何もかもが非日常で、俺もあんな風になりたいと心から思った。
「ウミ、おまえすげえな!」
訓練兵仲間がワラワラと俺に寄ってきて褒めてくれた。褒められるのは慣れてなくてすごい照れくさかったが、あの騎士長と肩を並べて戦えた実感と周りの反応が、俺を高揚させている。
装備も剣もボロボロで、本当に過酷な戦いだったとしみじみ思う。
「最後かっこよかったんだぜコイツ!」
ソラが周りの訓練兵達に自慢げに話す。
「ソラだってヴェヌス聖騎士様の盾弾いてただろ」
俺がソラの話をすると、またもや周りが盛り上がる。
歌って踊って騒いで食って。厳しくて辛い修練の日々も、この一日のためにあったんだと思うと、俺はなんだか嬉しい気持ちになった。
――――実家――――
宴は夜まで続き、上層では未だに遊んでいる人が多い。俺のようにぼちぼち戻る人は少ない。
俺はあの戦いで奇跡的に残った自分の実家に戻り、今日の戦いを振り返っていた。ボロボロの装備を部屋に飾り、目を深く閉じて思い出す。
まさに白銀の狼だった騎士長様の動きを、その動きを自分なりに取り入れ、サンクロス王国騎士剣技と合わせていた自分の動きを。
自分は並だと思っていた。体力も剣技も戦闘時の思考も。しかし今回の戦いで自分への評価が変わった。
俺は中々動ける。この事を慢心する事無く、自慢することも無く、自己肯定感を上げ更なる飛躍の為に自分を認める。
騎士長様のような化け物じみた動きは出来なくとも、俺が目指すべき道と姿は何となく見えた。俺は聖騎士になり騎士長様の隣で戦いたい。
女性なのに騎士長という座に就き、男性顔負けの戦果を上げている。恋愛感情ではなく、尊敬と憧れで俺の心は彼女鷲掴みにされた。
「7つの宝剣があれば俺もあんな風になれるのかな」
世界に7本しかない特別な剣。
黄金の刀身と輝きは、光の具現と平和をもたらすと言われている。アーサー騎士長様の
宵闇のような黒くて深い色の分厚い刃を持ち、力と勝者の証ともされる、マーズ隊長の
紅く煮えたぎっている真紅の刀身が血を吸い、持つ者には永遠の命がもたらされると言われている『
撫でるだけで斬れてしまうほどの恐ろしい切れ味と美しい刃紋が特徴で、宝剣の中で最も所有者を選ぶという『
魔王が所持し、『魔法』と呼ばれる力で混沌と暗黒をもたらすと言われている『
どんな武装も破壊し、宝剣ですら破壊しかねない剣殺しの『
7つの宝剣で唯一未発見の雌雄一対の双剣。速さと想像性を持つ者の前に現れると言われている『
以上が世界に7本しかないとされている、人智を超えた力を持つ7つの宝剣。誰が作ったのか、何のために作ったのか、どのように作ったのか、全てが謎に包まれている。
持つ人を選び、選んだ人を英雄として歩ませる。大層な運命に乗っかる事になるが、騎士長様の隣に立ち、共に敵を打ちたい。
そんな思いにふけ、俺は眠りについた。
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