第14話 門番を前に


 ヤアマとカウワンを前にして私は黄金の剣キャリバーンの力を使った。


 光の粒子が私を包み込み、詠唱を止めようとしてきた彼らの刃を弾いた。2人は武器が弾かれた衝撃でのけぞり、体制を立て直すため1歩引いた。


 私を包む光の粒子は段々と形を得ていき、淡く光りながら宙に浮く3本の直剣となった。


「さ、私を止めてみようか門番共!」


 槍と斧のコンビネーションはとても厄介だ。付かず離れずの槍で戦うヤアマと、ヤアマに近づこうとすると力強い斧で叩き伏せるカウワン。聖騎士に並ぶほどの戦闘力を持つ2人を、タイマンではなく同時に相手することの難しさはもう言うまでもないだろう。


 しかし、それを可能にしてしまうのがこの宝剣の力。


 展開された3本の直剣は、私の意思と思考に応じて宙を舞う。


 インファイトでカウワンと戦っている時、隙をついてくるヤアマの槍を剣で弾ける。ヤアマに近づこうとする私を剣がサポートし、それを邪魔するカウワンの邪魔ができる。


「騎士長きついっすよそれー」


 ヤアマが私の剣技と舞う剣に攻め続けられている。槍のリーチでこんなに攻められたらめちゃくちゃ戦いにくいだろう。


「この浮いてる剣ズルくないですか?」


 2対1のがズルいだろ。


 カウワンも2本の剣に気を取られ、彼らの得意な2対1の状況になかなか出来ていない。


 この状況が続けば勝機があるのは私の方だ。しかし、この『輝く粒星の置き土産アサルトメテオニウム』はものすごく集中力を必要とする。だから集中を欠くと、途端に剣の操作がおぼつかなくなる。


 集中を切らさずにコイツらをさばき、門へ入ることが私の勝利条件だ。


 さすがに王の城の門をぶっ壊すのは気が引ける。だから門から堂々と入りたい。


「もっと攻めないと私は崩せないぞ!」


 まずはヤアマをガン攻めして厄介な戦法を潰す。そうすれば、あとは私の得意な近接戦闘でカウワンをシバく。


 手練を相手に数分間集中を切らさないようにするのは容易い。しかし。


「騎士長その身長でよく俺を圧倒できますね。我が騎士長ながらちょっと引いてますよ」


 イラ。


 カウワンはヘラヘラしながら戦ってやがる。腹立つ。


「ロリ騎士長はいつも頑張ってて偉いですねぇ」


 イライラ。


 カウワンに同調してヤアマも舐めた口聞いてきやがる。しかしこの程度では私の集中力は途切れない。逆に怒りで剣が冴える。


 ガギィン――


 ギリリィィ――


 金属と金属のぶつかる音が響き、ヤアマとカウワンに防戦一方を強いている。


「良い感じに温まってきたぜお前ら。訓練と違って手加減しねぇからな!」


 戦闘は激しさを増してゆく。武器を打ち合う金属音が増え、彼らは私の攻撃を捌ききれなくなってきていた。


 このまま勝てる。と、思ったその時だった。


 ガクン。


 膝の力が抜け、刃が1歩ヤアマに届かなかった。宙に浮いていた剣も全て地面に落ち、光の粒子となって消えてしまった。


「オーバーフローですかね騎士長」


 地面にペタンと座り込んだ私を見下ろすヤアマとカウワン。その手には縄が握られていた。おそらく、私を拘束する気だろう。


「んじゃ、敵役には大人しくしててもらいましょうか」


 彼らの手が私に伸びる。


 ヒュッ――


「うぉっと」


 1本の矢がどこからか飛んできた。矢が刺さっている方向の逆を見ると、そこには大弓を持っている青いフードの青年がいた。


「弓兵長ピターと他4名、アーサー騎士長を助けにはせ参じました。門番は我々に任せて、アーサー騎士長は王のところへ急いでください」


 惚れてまうやろ。


 私は回復しつつあった足を動かし、ヤアマとカウワンの後方にある門へ走った。


 しかし彼らもバカではない。2人は私を止めようと武器を振りかぶってくる。


 ガギイィィィィンッッ――!


 ヤアマとカウワンの攻撃を受け止めるサンファー国軍の精鋭が2人。彼ら青い鎧を着ていて、それぞれが大剣を握っていた。


「先行ってくださいアーサーさん!」


 こいつらイケメンかよ。


 私は道を開けてくれた彼らを背にし、王の城の門を越えた。

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