第15話 パーティーは突然に

「あぁー、疲れたぁ!」


 家の扉を開き、そのままリビングのソファへダイブした。

 今まで怒涛の出来事で息つく暇もなかったからなぁ。

 大体やらなきゃいけないことは終わっただろうし、だらだらしたい!!


「お疲れ様です」


 柊さんがそう労ってくれる。

 

 ソファでゆっくりしていると、ぐぅ〜っとお腹のなる音が聞こえてきた。

 視線を向けると、お腹を抑える遥の姿が見えた。

 どうやら遥の腹が鳴ったようだ。


「いい時間ですし、夜ご飯にしますか?」

「そうしようか」

「なぁ、ボク、ジャンクフードが食べたいんだけど……出前取らない?」


 ジャンクフード!? 食べたい!

 ピザやハンバーガー、揚げ物などが頭に浮かぶ。


 想像して俺もお腹がなってしまった。


「では、ジャンクフードで……何にしましょう?」

 

 柊さんはスマホを操作し、出前の画面を表示して見せてくれた。

 画面には、色とりどりのピザ、ジューシーなハンバーガー、カリカリのフライドポテトなど、見るからに美味しそうな料理がずらりと並んでいる。


「おおー、どれも美味しそうだなぁ」


 それにしても見たことのない店ばかりだ。MのハンバーガーもKF……のチキンもないみたい。


「どれがいいとかある?」


 見たことの無い店ばかりだったこともあり、遥と柊さんに聞いてみることにした。


「ボクはやっぱり、バーガーナルドは外せないと思う。あそこのハンバーガーとポテトはジューシーでカリッとしていて美味しいんだよね」

「私は……ピザ、ですかね。最近食べてないので食べたいなと思いまして」

「ピザかぁ、それもいいなぁ」


 悩む様子を見せる遥。

 確かに、どっちもいいよなぁ。


「いっそのこと、どっちも頼む?」

「はっ、その手があったか!」


 遥の反応は、ピコンと頭に電球が浮かぶ様子が見えるようなものだった。

 

「食べきれますかね……?」


 不安そうに眉を八の字にする柊さん。

 

「ピザ一枚を三人で分けて、バーガーのセットなら食べ切れるんじゃない?」

「ボク、これでも大食いだからね。食べきれなかったら食べてあげるよ」

 

 自身有り気に胸を張って言う遥。


「じゃあ、内容を決めましょうか。まずピザは……」

「このスペシャルピザってやつにしない? いろんな味があって楽しめそう」


 横から覗いていた遥が提案した。

 良さそうだな。


「阿宮様もそれでいいですか?」

「うん、それでお願い」

「分かりました。はい、注文完了です。次にバーガーのセットですね」


 画面が変わり、ずらっとセットメニューが表示される。


「俺はチキンバーガーセットにしようかな。ジュースはコーラで」

「ボクはテリヤキバーガーセットで! ジンジャーエールにしようかな」

「私はチーズバーガーセットに。ジュースは……コーラに」

 

 そして柊さんは注文を確定させ、画面をタップしていく。


「注文完了しました。届くまで10分ほどのようです」

「ありがとう、柊さん」

「いえいえ」


 その時、視界に入った遥がニヤニヤしていることに気がついた。


「どうしたの?」

「いやー、何でもないよ」


 いや、絶対にこれは何かあるだろ、・

 口角が上がってるんだもん。隠しきれてないよ、それ。

 




 

 ————10分後。


 届くのを待ちつつ、リビングのソファでゆったりとしたまま、遥とおしゃべりを楽しんでいた。

 すると、ついにピンポーンとチャイムが鳴った。


「来た! お、同時に来たみたいだね」


 インターホン越しに見にいった遥がそう呟く。


「それでは、私たちで受け取ってきますので、少々お待ちを」

「俺も行くよ?」

「いえ、待っていてください。宅配は男性にとって最も危険な状況の一つなんですから」


 と、有無を言わせない口調で言い、二人で受け取りに行ってしまった。


 宅配を受け取った瞬間、上がられてあららーって感じになっちゃうのかな?

 そんなくだらないことを考えていると、二人が戻ってきた。


「ただいま戻りました」

「お、ありがとー」


 ホクホク顔で帰ってくる遥の姿が見えた。

 よっぽど食べたかったんだな。

 

「こちらに並べますね」

「あ、手伝うよ」


 俺も手伝いに向かい、テーブルの真ん中にピザを、それぞれの目の前にバーガーセットを置いた。

 もちろん手拭きやストローを配るのは忘れてないぞ?


「よし、揃ったね。それじゃ、いただきます!」


 お腹が空いていたせいもあり、自然と声が弾んだ。


「いただきます!」


 遥も同じように、元気よく言った。

 柊さんも微笑みながら、同じように手を合わせた。


 まずはピザから。特製のトマトソースがたっぷりかかったスペシャルピザを一口頬張ると、チーズの風味と具材の旨みが口いっぱいに広がる。


「うわぁ、これ美味しい! さすがスペシャルなだけあるわ」

「ほんと? ボクも貰おっと」


 俺の感想に反応して、遥もピザへ手を伸ばす。

 そして口へ運び、頬張った。


「んん〜! 美味しい!」


 頬を抑え、顔が蕩けそうな表情になっている。

 

「とても美味しいですね」

 

 柊さんも微笑みを浮かべながら、一口一口をゆっくりと楽しんでいた。


 また、同時に飲むコーラが良いアクセントになる。


「ねぇ、バーガー、一口くれない?」


 遥がこっちを見て「食べた後で良いからさ」と付け加えながら言った。

 

「いいよ」


 まぁ、遥だし。変なことはしないだろ。


 チキンバーガーにかぶりつく。カリッとした衣にジューシーな肉、そして旨辛いソースが絶妙にマッチしている。


「おお、これも美味い!」


 早く早くと言わんばかりにこっちを見てくる遥。

 バーガーを持ち直し、遥の方へ向けた。

 遥は少し頭を下げ、食べた。

 

 俺がかぶりついた場所に。


 ……ッ!? や、やりやがった!


「ふふ、間接キスしちゃったね」


 ソースのついた口を拭きつつ、揶揄うように言ってきた。

 なんとも思ってないような表情をしているが、耳が真っ赤なの隠しきれてないからな?


 恥ずかしがってやるものか。

 狙ってやったなぁ? 自然と俺が食べたところを狙って食べやがった。

 恥ずかしがってやるものか。


「遥、したかったんだな。言ってくれたらさせて上げたのに。……ところで、耳が赤いけどどうしたんだ?」


 そんな返しをされると思っていなかったのか、遥は一瞬驚いた表情をし、耳に手をやる。が、それで分かるはずもなく、すぐに照れ隠しのように言い返してきた。


「ボ、ボクが照れてる? 変なこと言わないでよね! 他と違って警護官なんだから耐性がついているんだよっ」


 目が泳いでるぞ。


「ほら、柊さん! これ美味しいね」

「そうね」


  遥は話題を変えようと必死だ。


「どうしたの? そんなに慌てて」


 柊さんにも疑問に思われてら。


「な、なんでも無いよ!」


 それにしても、柊さん。食べるの好きなのだろうか? とても美味しそうに頬張っている。

 普段の生真面目な性格からは想像できないような雰囲気で……ハムスターみたいで可愛いな。

 と、感じた。


 意外な一面を知れた気がした。


 そして、ピザもバーガーもどんどん減っていく。


「ふぅ、満腹満腹」


 美味しくて食べすぎた気がするよ。


「さて、そろそろ片付けを始めましょうか」


 食事を終えた俺たちは少し休憩をし、残ったピザの箱やバーガーの包み紙を片付け始めた。

 テーブルの上をきれいにし、最後に台拭きで拭く。


「ねぇ、次は何する? 映画でも見る?」


 片付けを終えた遥が提案する。


「いいね、そうしよう」

「そうですね。何かおすすめの映画がありますか?」


 柊さんも興味を示している。


「そうだなぁ、ボクが最近見たのは……このアクション映画とか、日常系とかラブコメもあるよ」


 遥がスマホで映画のリストを表示しながら、みんなで相談することにした。

 どれも面白そうで、選ぶのに迷うね。


「このアクション映画、評判良さそうだよね。どう?」


 遥が一つのタイトルを指差す。


「いいね、それ見ようか」


 みんなの意見が一致し、早速リビングの大画面で映画を再生する。ソファに座り、リラックスしながら映画を楽しむ時間が始まった。




 ◆◆◆



 総再生時間、約二時間の映画が見終わった。

 そして、時間もいい感じになる。


 そろそろ、寝る頃合いかなぁ。

 遥もうとうとし始めてるし。柊さんはパッチリ目が開いているけど。


「ふあぁ……面白かったねぇ」


 眠たそうにしながらも、感想を言う遥。


「面白かったね」

「ですね」


 二人は「おやすみなさい」と言い、自室へと帰って行った。

 

 こう、ワイワイご飯食べたり、だらだらするのも良いなぁ。

 俺はそう感じ、満足感でいっぱいになった。


 明日はどこか出かけるのもいいかも。

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