第2話 やはりここは貞操逆転世界だった。
え、なに?俺、いつの間に別世界に来ちゃったの?
あの貞操逆転世界に!?
「ところで、警護官は一緒じゃないの?」
おそらく世の中の危険から守るための所謂、男性警護官ってやつだろう。貞操逆転世界によくあるSPみたいな。
「警護官? 居ないと思いますよ」
「えっ、そんな人いるの!?」
信じられないと聞こえてくるような反応をする女性。
俺も信じられないよ。別世界に来ちゃったなんて。
ふとスマホなど持ち物はどうなっているのかと思い、カバンを見る。
中身は無事のようだが、スマホを起動すると、圏外と表示されていた。
「あれ? 圏外か……」
あっ、そっか。別世界だし、リンゴの会社はないのかもしれない。
「それ、スマホ? 見たことないデザインだけど」
さらっと隣に座り、スマホを覗き込むようにして言う。
「はい。ただ、圏外ですけど……」
「今までの反応もそうだし、君変わってるね。まるで別の世界から来た人みたい。普通ならこんな近距離で初対面の女と話そうとしないものよ?」
常識がないような言い草だなぁ。まぁ、実際に別世界だろうし、仕方ないか。
「そうなんですか? ……初めて知ることばかりだ」
「もしかして、あなた、本当に別の世界から来たの? それなら、全て辻褄が合う気がするけど、そんなことないよね」
「正直、俺もそう思っています。聞いたことない情報がニュースから流れてきていたし」
彼女は深く息をつき、カウンターの向こうからグラスを二つ取り出した。そこにコーヒーを注ぎ、一つは俺の前に、もう一つは彼女が飲んだ。
「ありがとうございます」
ちょうど飲み終わっていたから、ありがたい。
「ふぅ……。そしたら、とりあえず一般常識を教えていた方が良さそうね。このままじゃ危なそうよ」
それはありがたい。
「まず、男性が一人で出かけることは無い、これは断言できるよ。いたとしてもよっぽどの馬鹿だろうね」
「自ら襲われに行ってるようなものか」
「そうそう」
「あとは色々と義務がある代わりに生活が保障されてたり、一人以上は必ず男性警護官が付く法律があるね」
あ、もう法律で決まってるんだ。
「義務と生活が保障?」
「うん。毎月、国から一定のお金が支給される仕組みになってたはずだよ」
一通り話を聞きた感じ、男女比や男性周りの法律など以外は元の世界と変わらないようだった。
そして、男女比はこれからもっと減るんじゃないかと言われていると……。
「やっぱり、これは一般人の手に負えない気がするよ」
女性はそう呟く。
そして、ポケットからスマホを取り出して、
「……ちょっと警察に連絡してもいい?」
と言った。
「それは……」
少し躊躇してしまう。
ここの警察が信用できるのか……?
それに、ここが別の世界なら俺の戸籍も何もないはず。そうなると早めに自己申告しておく方がいいか?
しかし、貞操逆転世界だからなぁ。
しばらく考え、俺は電話してもらうことにした。
「お願いします」
俺がそう返答すると、すぐにスマホを手に取り、電話をかけ始めた。
「もしもし、今、店に男性が居るのですが……。はい、それで警護官を連れてないようでして……」
しばらく話は続き、電話を切るとこちらを向いた。
「すぐに向かうって!」
「分かりました」
それからしばらくして、店に二人の婦警が入ってきた。
「こんにちは、男性課 警部の
青いカッターシャツに黒いスカート、警察帽を被った黒髪ロングの女性。
「巡査の
元気な声で話す同じ服装を纏った女性。
警察手帳を提示しつつ自己紹介をする2人。
「ご連絡頂いた
女性へ視線を向け、そう問いかける。
「はい、そうです」
「ではこちらが……」
「どうも、
「ふむ……。確かに、変わっているな」
警察の橘さんが俺の返答に対して考え込み、『変わっている』と言ってきた。
初対面で言うことか!?
にしても、そんなに変わってんのかな? もしかして、この世界の男は初対面で名乗らんのか?
「あぁ、ごめんなさいね。一般的な男性の反応ではなかったから」
大袈裟に、また、おどけた様子で言う。
些か、警察らしくない言動が目立つ気がする。
「それでは念の為、署までご同行願えますか?」
え? なんで?
「あっ、別に逮捕するわけでは無いですよ。ただ、戸籍などを調べるためと何かしらの事件に巻き込まれている可能性があるからです。何卒ご容赦ください」
どうやら不安や困惑が表情に出てたみたいだ。
「分かりました」
「ありがとうございます。では、表の車に搭乗願います」
「了解。————あ、ありがとうございました。えっ〜と……」
「成瀬。成瀬 鈴華よ。また会えるといいね〜」
元気で、と言うように手を振りながら名前を教えてくれる。
そういえば、貞操逆転世界なのによくある反応じゃなかったな。
話しやすかった。また会いたいものだ。
「そうですね。また来ます」
橘さんと山口さんが運転席と助手席に乗り込み、俺は後部座席に乗り込む。
別世界とはいえ、初めて警察署に行くなぁ。
それからしばらく走り、目の前に十階はありそうな建物が見えてきた。
横にも広そうだな。
「着きました。正面入り口は目立つため、このまま駐車場に入ります」
「はい」
敷地内に入り、地下駐車場へ景色が変わる。
建物に入った後、部屋に通され、お茶を出される。
「あ、ありがとうございます」
お茶を受け取り、飲む。
「それではまず、戸籍についてなのですが————」
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