15.三人の宿泊

 グレン達を見届けてアルスは部屋に入る。


「はぁ~、全く疲れる」


「あやつに巻き込まれたな」


 エルディスは笑う。

 アルスとグレンの関係性は客観的に見て、愉快なようだ。


「さて、さっさと寝るか。明日は調査だが、大半が戦う者だと思った方がいい。今回の魔物の特性から予想は出来ると思うが……」


「あぁ、分かっておる」


「は、はい。分かりました」


 明日の忠告をしてアルスから緊張が抜け始める。

 この宿屋は高級の部類に入る為、部屋は広く、ベッドは二つだがキングサイズ、バスルームもついている。

 そのため、身体を洗って寝ようとアルスはバスルームに向かうが、そうだ、と窓を開けて魔法を発動する。


「ん、アルス様、それは?」


 センシアが不思議そうに見る。

 アルスが発動している魔法は光を束ね、鳥へと形作っているからだ。


「あぁ、これは伝書鳩を元にした伝達魔法だ。用途として手紙を持たせるか、声を吹き込むかなんだが、俺は文字だ。家のノエ達に宿屋に泊まるって連絡するんだ」


 そう言い、魔力で空中に文字を描き、鳩の体内に溜め込む。


「よし、さあ、行け」


 窓の外、腕を出すと魔法の伝書鳩はアレフリード家へと飛び去った。


「ほう、風の言葉のようなものか」


 その名称にアルスは覚えがあった。


「それって、確か……」


「あぁ、エルフ特有のものだ。里があった頃、大森林に魔力が満ちている環境で使えた風に伝言を乗せるものなんじゃ」


「自然に生きた種族の使い方だな。いいな~」


「ほう、お主にそう感性があったとは」


「あぁ、人並みにはあるさ。さて、じゃあ俺は風呂に入る。二人はそれまで待機だ。部屋を出るな」


 そう言い、ベッドに脱いだ服を投げ、下着姿でバスルームへと入室する。


「……頭が回るようだが、女子おなごを先なんて思考はないようじゃな」


「し、仕方ないよ。わたしたちはアルス様の奴隷、なんだから」


 エルディスはセンシアのために奴隷という立場にいるため、この立場は不満だ。

 センシアは獣人という特徴なのか、主という明確な存在が現れたため、従順である。

 彼女が嫌じゃなければ、この関係を続けていくしかないだろう。

 確かに主であるアルス・アレフリードの人格は真っ当なもので、更に人間でありながら、自分を凌駕する可能性のある天才という下衆なんて言葉が見当たらない人物だ。

 もし、下衆なら即座に殺しているところだが、センシアも従順だ。

 エルディスとセンシア、お互い種族の中でも特異な存在であるからか、獣人の従順であるという特性、それは誰でも、というわけではない。

 その獣人にとって文字通り、命を尽くす対象となるのだ。

 ならば、アルス・アレフリードこそが……。


 そんなことを思いながら、センシアの方を見ると一つ気付く。


「ん、センシア。随分と汚れているの」


 今まで緊張をしていた気付かなったセンシアの様相は泥と魔物の血で汚れていた。


「あ、うん。動き回ったから」


「あの動きは良かったが、着地が問題じゃな。もっと初動と同じように軽くを目指さなければいけん」


 そう言い、エルディスはセンシアの服を脱がせる。


「え、エルディス?」


「なんじゃ?」


「何で脱がせるの?」


「んん、風呂に入る口実を思いつたのじゃ」


 そう言い、センシアの服を脱がして自分も服を脱いで、バスルームの扉に手をかけた。

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