始末 13
俺と同じクラスだったのも何となく理解出来る。
元公爵令嬢な以上、王族と血縁関係。
でも、既に家からは勘当済みで。
ただの下級貴族。
なのに、母親の貴族社会での影響力は絶大。
学園からしても。
これ、扱いが難しいったりゃないな。
派閥意識してクラス分けするとか言うし。
委員長やってたぐらい。
他に有力な家の子供もいなかった。
わざとだろうな。
同じクラスに突っ込んで。
変に揉められても収集つかなくなるから。
庶民な時点で、俺も大概面倒な相手だったろうけど。
多分。
それ以上の爆弾だったのでは?
せめて一緒に見張れるよう、同じところに放り込んだと。
まぁ、片方早々に騒ぎ起こして。
停学の上。
即姿くらませた訳だが。
学園的にはどうなのだろう。
不安の種が減って、気が楽になってそうではあるが。
ってか、俺が速攻停学くらったのも。
ひょっとしたら。
下手に飛び火して炎上さたくなかった説もあるな。
犯人がどうとか。
俺が庶民だからとか関係なく。
巨大爆弾抱えて。
ちょっとした火花すら命取りである。
まぁ、色々と話を聞いて衝撃的ではあったが。
納得でもある。
なるほど。
相当破天荒な血筋らしい。
フィオナもかなりだが、お母さんはそれ以上だな。
ルーツが分かり。
逆に安心したような。
いや、別に安心材料には全くならないんだけど。
公爵家に生まれてたらこんなことしないって言葉も。
信頼度落ちた気もするし。
だって、ねぇ。
お母さんは実際に。
と言うか、王子と婚約した上で浮気するとかいうもっとヤバい事やってる訳で。
本人は母親とは違うと言いたげだが。
客観的に見て。
かなり似てる部分があるように思えるから。
もし、何かの間違いで浮気がバレず。
そのまま王族になってたら。
王女のフィオナがどこまで我慢できてたのかは疑問。
にしても、お母さんもよく死ななかったな。
もちろん勘当された後が大変ってのもそうなのだが。
この世界。
女性が1人で生きてくのには厳しいとこあるし。
ただ、それ以前に。
不貞。
これが前世以上に重罪なのだ。
しかも、王子と婚約した公爵令嬢が複数回とか。
打首ものだろ……
勘当どころか、実家から刺客送られても文句言えないレベル。
ここまで話聞くと。
実際に打首になりかけたのを、どうにか手を回して。
退学と勘当。
そこまで緩和したようにしか見えん。
……こっわ。
どんだけやり手なんだよ。
それに、フィオナの父親。
話に出てきてない。
母親は婚約破棄以降ずっと独り身らしく。
フィオナ自身も知らないとの事。
庶民、貴族。
どっちでも違和感はない。
気になる。
しかし、藪蛇な気もする。
だって、王子の元婚約者なんだろ?
婚約者ってことは、やることやってるよな。
婚前交渉しないとか。
そんなタイプじゃないだろうし。
となると……
いや、これ以上掘るのはやめよう。
フィオナは王族でもましてや公爵やら侯爵でもなく。
ただの下級貴族だった。
だから、何の心配も要らない。
それでいいじゃないか。
うん。
余計なことは不用意に考えないに限る。
それで何の話してたんだっけ。
あ、そうだ!
ドラゴン便を用意してくれるって話で。
何で出来るんだと。
ここから広がったんだった。
「でも、いいのか?」
現実的に可能ってのは、十分に理解したが。
出来る出来ないと、やるやらない。
これはまた別の話だ。
彼女なら便を用意する事は可能だろう。
それは事実。
でも、需要が高まってるのも同じで。
数に限りがある以上。
割り込むような形。
どっちみち無理を押し通すことには違いない。
力が有ると言っても、独裁者やってる訳じゃないんだ。
むしろ、想像以上に危うげな権力者。
無理を押し通せば。
それなりの見返りが発生したり。
不和を産んだり。
そんなのが庶民の俺からして想像に固くない訳だが。
「ロルフくんには、良いスキャンダルもらっちゃいましたからね」
「?」
「今回の暴動の首謀者、元騎士団長の息子でしょ? ほぼ絶縁状態とは言っても家族は家族ですから」
「なるほど」
「しかも、もう1人騎士団崩れがいましたし」
「あぁ、強いって言ってた護衛か」
「騎士団の影響力が削れて、ウチの予算もがっぽりって寸法です」
フィオナ曰く、そう言うことらしい。
この理屈で王宮魔術師としての立場を使っても問題ないと。
お釣りが出るとの判断。
結構嬉しそうだ。
騎士団と仲悪いんだろうなとか、軽く聞いただけで察せる部分はありつつも。
まぁ、色々あるのだろう。
深入りをする気はない。
ドロドロしてそうでめんどくさいし。
後は、やはりお母さんの面影を感じる。
いやさっきの話がインパクト強すぎたせいかも知れないけど。
諸々のエピソード。
あれを聞いた後だと騎士団も御愁傷様としか。
徹底的に毟られそう。
それに、だ。
これきっかけに益々力増しそうで。
お礼言われることすら、なんか少し怖い。
「そう言えば、学園の仕事は断られちゃいましたけど。王宮魔術師はどうですか?」
そして、流れるかのように勧誘された。
ぶれないねぇ。
王宮魔術師、か。
結構買ってくれてるらしい。
嬉しいんだけどね、お断りである。
そもそも、だ。
「流石に、無理じゃね?」
名前からして、そうだ。
そもそも騎士団とも違う。
少数精鋭。
決戦兵器のような扱い。
魔術師の戦場における価値は計り知れないのだ。
当然。
裏切りなんかによる被害も桁違い。
学園も厳しそうだが。
外部講師なんて招き入れてるだけまだ解放的だろうか。
貴族以外。
そして、学園の卒業生以外が所属できるとは思えない。
俺はどちらも満たしてないし。
いくらフィオナのゴリ押しがあったとしても。
不可能に思える。
……え、不可能だよね?
仮に、ゴリ押しで入れたとして。
部下からの反発すごいだろうし。
結果、自分の力を削ぐことになって。
出来るとしてもやらない方が。
「ごもっとも。でも、私の部下には理解者がいますから」
良い部下に恵まれてるらしい。
いや、本当。
俺はあなた達親子が恐ろしいよ。
「あ、勘違いしないでください」
「?」
「私の理解者ではなく、ロルフくんのです」
へ?
「誰よりも……、ってのは過言ですかね」
そういいかけ、ノアを見て訂正した。
「でも、当時からあなたを評価してくれた人です。きっと喜びますよ」
「もしかして、」
えっと、誰だっけ。
ここまで出かかってるんだが。
ザ、何とか先生。
「はい。当時の私たちのクラスの担任だったザルクさんです」
あぁ、確かにそんな名前だったか。
昨日一回聞いてはいたのだが。
相変わらず、俺のオツムは残念な作りらしい。
言われて思い出した。
辞めてどっか消えたみたいな言い草だったが。
王宮魔術師やってたのか。
そりゃ、ね。
学園で教師やってたぐらいだし。
能力は間違いなく優秀なんだろうけどさぁ。
ちょっと責任を感じてはいたのだが。
俺が何も言わずに姿くらましたせいで先生辞めたって言うから。
別にそんなつもりは無かったんだけどなと。
いや、ほんとに。
名前は覚えてなかったんだけど。
でも、多少なりとも気にはしていたのだ。
これってただ単に出世しただけなのでは?
ボブは訝し(以下略)
まぁ、フィオナが救いの手を差し伸べたんかもしれないけど。
後から見たらって話。
心配して損した。
杞憂になったのなら、一応良かったのかな。
まぁ、どちらにしろ結論は変わらない。
「そうですか、残念です。あ、勿論便の方は用意しときますので」
「そっちはありがたくお願いしようかな」
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