十四章
始末
「そ、それより暴徒の方はどうだったんだ?」
話を逸らそうと聞いてみるも。
返事はない。
……これ、本格的にヤバいのでは?
別に不自然な質問ではなかったはずだ。
実際気になっては居るし。
こんな距離で、聞こえてないって事もないだろう。
もしかしなくても。
これ、結構怒ってらっしゃる?
酒瓶の事も合わせて、このまま放置なんて事も。
そう覚悟したが、どうもそのつもりはなさそう。
返事はくれなかったが、ノアがスルスルと縄を解いてくれた。
そこは一安心。
おのれ、クソガキ……
今度あったらしっかり罰を与えなければ。
おかげでえらい目に遭いかけた。
ふと気がつくと、ノアの手が途中で止まっていた。
井戸からは外してくれたのだけど。
手は縛られたまま。
あれ?
視線を向けるもこれ以上何かするつもりはなさそう。
「あのー」
「……」
「まだこっちが縛られたままで」
ノアの方に縛られたままの手を差し出す。
いや、自分で解けるんだけど。
流石に今の状況で、ねぇ。
その勇気はない。
俺と視線が合うもノアは笑みを浮かべるだけ。
何もおかしな所はない。
ここ数ヶ月で見慣れた笑顔だ。
でも、俺の言葉に答えてはくれなかった。
……え?
それどころか、縄の端を手に持ち。
グイグイと引っ張られる。
解くつもりはない、と?
俺のことを縛ったままどこかに連れてくつもりらしい。
まるでペットの散歩である。
女教師もさっきのアイコンタクトで何か伝わってるのか。
この状況を見ておっとりとした笑顔を浮かべている。
逆に怖い。
ちょっと頼れそうにないな。
メスガキに目で助けを求めるが。
冷めた視線を向けられ、助けてくれそうにない。
そういや、学園行った時も飲んでたからな。
あの時は助けてもらえたが。
そのせいか。
信じてもらえてないらしい。
俺が飲んでたと思われてるのだろう。
自分たちが大変だったのに。
いや、主犯探しに行った後どうなったのか聞けてないから。
実際の所どうだったのかは知らないけど。
罰で縛って置いてった人間が飲んだくれてたら。
そりゃ、良い気はしない。
自業自得?
まぁ、強く否定は出来ない。
日頃の行いってやつか。
でも、こればっかりは本当に冤罪なのだが……
そのまま、貴族街の方へ。
縄を引かれて。
完全に見せ物である。
やめちくれ。
俺はそこまで羞恥耐性が高くないのだ。
昼間かっから飲んだくれてるのは平気なのに?
それはそれ、これはこれ。
普段の行動も視線を集めてる自覚はあるが。
別種の恥ずかしさがある。
ノアはいい。
いや、良くはないが。
嬢も含め。
色々あった仲だし。
恥ずかしいと言っても。
今更感がある。
そして、他人からの視線も。
知らない相手だ。
気にならないって訳ではないが。
どんな事を思われてたとて。
最悪、困りはしない。
王都だしね。
ノームと違って住んでる訳でもないし。
被害で言えば。
まぁ、たかが知れてる。
ただ、メスガキと女教師。
2人とも微妙に関わりのある相手だ。
過去も知ってるし。
見直してくれた雰囲気もあったし。
だから余計に。
俺の心が揺さぶられる。
「僕はこれからやらなきゃいけない事があるから、エリスもゆっくり休んで」
「……はい」
そして、学園の近くでメスガキとお別れ。
やらなきゃいけない事て。
それ、俺への何かですよね?
怖いんだが。
メスガキは何か言いたそうにしていたが、女教師にももう遅いからと言われ。
引っ込めたらしい。
チラチラとこちらを見ながらではあったけど。
そのまま、帰って行った。
……帰って行ってしまった。
一応、心配してくれているのだろうか?
学園で助けてくれた事といい、ほんと優しい娘である。
まぁ、信頼がないのか。
酒の事とか。
心配はした上で信じてくれてなさそうだったけど。
衛兵に引っ捕らえられたのといい。
今回の件といい。
なんか俺、冤罪かけられ過ぎじゃね?
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