騒動 7

 つい、勢い余ってしまった。

 前のめりになりすぎたらしい。

 笑われた。

 童貞でもあるまいに。


 でも、断られたりはしなさそうな様子。

 良かった。

 これでにべもなく振られたりしたら。

 1週間ぐらいは引きずるかもしれない。


 にしても……、本当に同い年だよね?

 クラスメイトらしいし。

 それは間違いないと思うんだけど。

 なんと言えば良いのか。

 年上の余裕を感じる。

 俺が成長してないってのも有るんだろうが。

 それにしてもだ。

 むしろ。

 俺の場合転生までしてるし。

 二倍以上歳食ってるはずなんだが。

 まぁ、冷静に考えて35歳は十分大人か。

 これ以降は老成とかそんなん。

 あれだな。

 大人って、年齢じゃないんだな。


 教師やってるからってのもあるのだろうか?

 子供を相手にしてるからね。

 自然と……

 ん?

 つまりは俺が子供扱いされてるって事なのでは?

 まぁ、別に。

 それが嫌ってことは無いのだけど。


「本当にいいのか?」


 確認してしまった。

 無粋だというのは分かりつつも。

 一応。

 3人って、ねぇ。

 普通ではないし。


 それに、俺としてもこれ本当に大丈夫なだろうか。

 別に美人局とかを疑ってる訳ではなく。

 相手は貴族だし。

 俺から体使ってまで取るような物なんて存在しないだろう。

 ただ、普通に。

 これぐらいの歳だと普通に結婚してる可能性あるよね?


 ……既婚者相手、か。

 いや、あくまで可能性の話だけど。

 これは聞けないな。

 聞いた上でヤるのはちょっと。

 面倒事でしかない。

 今ですらうっすらその匂いは感じてはいるが。

 引き返せと。

 声が聞こえてくる様な気がする。

 しかし、たわわな果実の誘惑には勝てない。

 シュレディンガーの猫だ。

 確認するまでは夫は存在しないって事で。


「むしろ、ありがとうございます」

「え?」

「恥ずかしながら、ノアさんには前に一度振られてしまったので」


 ……なるほど?


 まぁ、本当にビッチならノアに行かない理由はないわな。

 貴族相手は面倒なことになりかねないが。

 冒険者だからね。

 そういった事もないだろうし。

 最低限の理性はある様だ。

 久々に再開したクラスメイト相手にナンパするって行為が理性的かは置いておくとして。

 ん?

 やっぱり理性はないのでは?

 なんか生徒にも手を出してそうな予感。

 そもそも、ノアだって学園で講師初めて数ヶ月しか経ってないし。

 手が早いというか、なんというか。

 ただ、そういうことしをつつも保身はしっかりしてそうではある。

 生徒に手を出しつつも、貴族ではなく。

 商人とか貴族でも下級貴族とかそういう子を狙ってそう。


 うん、理性じゃないな。

 こういうのは悪知恵と呼ぶのだ。


 にしてもノア、モテモテだな。

 メスガキといい。

 教師といい。

 学園でフェロモンばら撒いてるらしい。

 ま、イケメンだしね。

 上級冒険者だし。

 そりゃ、モテもするか。


 ここまでくると、俺はおまけなのでは?

 って気もしてくるが。

 声掛けられたのも。

 思い返してみれば、ノアと別れた直後だったし……

 いや、ここ考えてもいいことはないな。

 無視だ無視。

 それに覚えててくれたのは本当っぽいし。

 俺を逆ナンした。

 たまたまノアもついて来た。

 そう言うことで。


 それに、どっちにしろ彼女が期待したようにはならないだろう。

 なんたってノアは童貞である。

 未経験では無いが。

 男2人に女1人ではありつつも、タチは1人しか居ないのだ。

 いや、嬢に奪われてる可能性もあるか。

 でも、妹分言ってたし。

 おそらく、そういう事はしていないと思われる。


 店を出る。

 会計を払おうとしたが、いりませんと。

 断られてしまった。

 奢りは悪いと思ったのだけど。

 これからそういうことする訳だし。

 流石に。

 と思ったら、どうもここ彼女の店らしい。

 店員さんにお金を渡すも。

 普通に受け取ってくれなかった。

 出資してるとかなんとか。

 本当優秀だな。


 そのままホテル街へ。

 明か浮いている。

 ノアを連れてこういう場に来た時もそうだったが。

 1人で来る時とは周りの視線が違う。

 今回はさらにもう1人増えてる訳だからね。

 そりゃこうもなるか。


 まだいまいち実感はないのだが。

 どうしてこうなった。

 いや、文句はないのだけど。

 むしろ今の状況万々歳と言いますか。


 幼馴染の貴族の女の子。

 現役の教師で、清楚系ビッチ。

 しかも人妻(推定)

 ……いや、エロ過ぎでは?


 と言うか、今更の話ではあるが。

 男2人、貴族を宿に連れ込むのは絵面やばい気がしてきた。

 犯罪の匂い。

 実情とは違うのだけど。

 俺は逆ナンされた側だし、ノアも声掛けられてたらしいし。

 むしろ俺らが連れ込まれてるまである。


 覚悟を決め、さぁ行くぞ!


 ホテルに入る直前。

 肩を叩かれた。

 2人のどちらかかと思ったら……


 誰だ?

 衛兵?


「詰所までご同行願います」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る