騒動 6

 突然、何を言い出すかと思えば。

 3人でって……

 つまりはそういう事よな?


 少し前まで夜遊びもした事なかったくせに。

 こんな事を言い出すようになるとは。

 嘆かわしい。

 この数ヶ月見ない間に都会に染まってしまったらしい。

 ……いや。

 流石にそれは違うか。

 どう考えても王都に行く前の影響だな。

 これ、完全に嬢の責任である。


 妹分扱いして可愛がってるのはいいけど。

 悪影響を与えるのは如何なものか。

 と言っても。

 多少、仕方のない面もあるのだが。

 しょっちゅう一緒だったし。

 初めての時も。

 俺が嬢とノアに嵌められた形だったからね。

 当然その場にいたのだ。

 そのせいだろうか?

 元の知識が真っさらだったのも相まって。

 認識の方がバグちゃってる様子。


「急に何口走ってんの!?」

「だって、」


 俺に突っ込まれると、少し照れて視線を逸らす。

 おい!

 自分で言っておいて何恥ずかしそうにしてるんだよ。

 なら言うなや。

 向こうさんもびっくりしてるだろ。


 そう思って見ると笑っていた。

 今のやり取りが何処か可笑しかったらしい。

 まぁ、そんなもんか。

 同級生だもんな。

 当然、俺と同い年。

 下ネタも、流石に耐性ぐらいあるか。

 良かった。

 ノアの発言も軽く受け流してくれそうな感じ。


「今のは冗談なんで、すいません」

「いえいえ」

「それで折角なんですけど、何かして貰おうとは思っていないので」

「え、どうして?」

「学園は自分で辞めただけですし」

「……そう」

「それに」

「?」

「今のままでも、それなりに楽しく暮らせてますから」


 多少哀れに見えるかもしれないが。

 今の俺からすれば天職だからな。

 他の仕事とか紹介されても、正直面倒なだけだし。

 楽しくやれているのだ。

 今の環境で十分。

 学園の教師とのコネなんて。

 本来なら大金積んででも得難い物なんだろうけど。

 俺には不要。

 少々勿体無い気もするが。

 まぁ、無理して使う物でもないだろうし。


「ロルフくんって意外と謙虚な人なんですね」

「意外って」

「いや、そんな性格だったかなと思って」

「へ?」

「当時はもっと……。もしかして、ノアさんの前だからカッコつけてたり?」

「えっと、あはは」


 え、俺ってそんな感じのキャラだったっけ?

 とりあえず笑って誤魔化しはしたが。

 全く記憶にない。

 そもそも、クラスメイトすら思い出せないほど綺麗さっぱり忘れているのだ。

 当時のキャラなんて覚えているはずもなく。

 意外と言われても。

 ちょっと、反応に困る。


 揶揄われてるんだか、本当に疑問に思ってるだけなのか。

 この教師常にふわふわしてるから分かり難い。

 でもまぁ、言われてみれば。

 どんな行動したか覚えてないけど、既に適当に生き始めてた気がするし。

 確かに、いわゆる真面目な生徒ではなかったかもしれない。


 ノアの前だからって事はないんだが。

 別にそう捉えてもらっても。

 特に支障はないし、否定する必要もないか。


「でも、残念。少し楽しそうだと思ったのに」


 ……!?

 今、なんて?


「ロルフくん、どうかしました?」

「いや、え? 今楽しそうって」

「そう言いましたけど」

「それってつまり、そういう事?」


 相手の目を見つめる。

 ダメだ。

 表情からだと、冗談なんだか本気なんだか。

 全くもって分からねぇ。


 俺が盛大に混乱していると、肩を軽く叩かれた。

 ノアだ。

 呆れたような視線を向けられる。

 やっと気づいたかとでも言いたげな表情。

 ん?

 もしかしてだけど、そもそも初めから誘われてたって事?

 ナンパがどうとか。

 言いがかりだと思ってたけど。

 本当にそういう感じだったのかもしれない。


 噂の、清楚系ビッチ的な?

 しかも女教師である。

 まさか本当に実在したとは。


 だから話してるの見てすっ飛んで戻って来たと。

 知り合いか詰められた理由もそれ。

 にしては、そこからしばらく静かだったような気がするが。

 あぁ、俺が学園通ってたとか言い出したから。

 それどころじゃ無くなったのか。


 しかし、なんで俺なんか……

 いくらビッチとは言っても好みぐらいあるだろうに。

 それこそ美人なんだし。

 貴族で女教師で、よりどりみどりなのでは?


 同級生だからか?

 心当たりなんてそれぐらいしかないし。

 でも、何故。

 これ、理由になるのか?

 もしかして、同級生コンプリートしたいとかそう言う……

 トロフィー的な。

 俺以外のクラスメイトは全員抱いたから最後の1人。

 辞めた年齢が年齢だからね。

 流石のビッチもまだ目覚めていなかったと。

 無いな。

 え、無いよね??


 顔を伺うも、相変わらず笑顔。

 何故だろうか。

 何も変わっていないのに、そう思って見ると。

 とんでもない痴女に見えて来た。


 体のラインが出ない服装も。

 逆にエロい気がする。


「ノア、いいの?」

「3人でなら、ですからね!」


 こそこそと確認。


 まぁ、俺が誘われたらどうなるか想像つくだろうからな。

 せめて自分の見ている前でやれと。

 そういう話らしい。


「前言撤回! 俺と楽しいことしましょう」

「……ロルフくん、その言い方は変態さんみたいです」

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