騒動 3
同じクラスって、つまりはそういう事だよな?
この世界に来てから。
学校なんて学園以外通ってないし。
その時のクラスメイト。
二十年以上は前だ。
それも、学園に通ってた期間は一年も無かったはず。
よく俺の事なんて覚えてたものだ。
……いや、覚えててもおかしくは無いのか?
逆に。
一年も経たずに辞める子とか珍しいだろうし。
そもそも俺は庶民なのだ。
初めから目立つ存在ではあった。
学園の生徒なんて貴族や金持ちばかりだったからね。
普通な事が。
そこではある意味特殊っていうおかしな環境。
そんな存在が、停学くらってそのまま退学か。
確かに目立つな。
インパクトとしてはかなりの物だ。
こう羅列して見れば。
俺も同級生にこんな奴いたら忘れないかもしれない。
いや、誰1人覚えてない男の言葉なんて。
信用皆無かもしれないが。
実際に覚えていたかは置いておき。
集団から、明らかに浮いてはいたのだけど。
そういう変な奴の方が、ね。
記憶には残る物だ。
クラスメイトだと理解した上で。
彼女の事は思い出せないままなのがなんとも……
ただ、こればっかりはね。
仕方がない。
俺から見ればただの同級生でしかないのだ。
そんなの覚えてる方が異常。
二十年前に数ヶ月だけ通ってた学校だよ?
当然の話である。
だから、忘れてるのは俺のせいではない。
まぁ、誰なら覚えてられたのかって聞かれると。
誰も覚えていないのだけど。
俺並みに目立つ子が居なかったのが悪い。
居なかったよね?
全く記憶にないせいで自信はないが。
覚えないなのだから、おそらく居なかったのだろう。
俺が特別冷たいとかではなく。
学校のクラスメイトなんて普通はそんなもんだと思う。
卒業して数年も経てば大抵の人間を忘れるし。
10年以上経てば誰1人覚えてないものだ。
前世でもそんな感じ。
……え、これが普通だよね?
「俺はまぁ、そこそこ元気にやってるよ」
「そっか良かったぁ」
「良かったって、当時仲良かったりとかしたっけ?」
「うんん。でも、心配だったから」
「心配?」
「はい、みんなも気にしてましたよ」
「そ、そうか」
心配ねぇ。
そう言ってはいるが、実際の所は不明だ。
いや、彼女は良い人そうだし。
素直に心配してくれていたのかもしれないけど。
そうでもないとね。
いくら記憶に残る生徒だったとはいえ。
20年前のクラスメイト。
見かけた所で声を掛けたりはしないだろう。
ただ、他はどうだろうな。
庶民って事もありうっすら嫌われてた自覚はある。
ソロが基本の俺で分かるぐらい。
つまりは結構な強度で嫌われてたって事だ。
心配するふり。
クラスメイトだしね。
違和感はない。
例え興味なくても。
「そっちは、学園を卒業して教師か」
「はいそうなんです」
おっとりしているが、学生時代結構優秀だったのかもな。
全く記憶にない。
ってか、短期間しかいなかったし。
基本単独行動だったし。
当時の俺もおそらく知らなかった物と思われるが。
教師なんて相当なエリートコース。
この若さ。
しかも女性で。
卒業した女子は嫁入りして家の事に専念するのが殆どだろうから。
貴族も商人も。
学園は伴侶を探す場所でもあるのだ。
学生時代からすでに突出した才を持っていた物と思われる。
ちなみに、教師の経歴としては一般的。
学園の先生なんて相当な教養が必要だからね。
それを学べるのなんて。
この国だとほぼほぼ学園ぐらい。
教師の学歴は殆ど学園卒だろう。
成績優秀なエリートが送る人生としては。
年齢から見ても。
モデルケースのような例に思える。
ノアの様な。
他で成功して外部講師として招かれるパターン。
そっちの方が珍しいのだ。
「そうだ! この後お茶しに行きましょう」
「え?」
「私、ずっと気になってたことがあったんです」
「はぁ……」
「ロルフくんと色々お話ししたいです」
ずっとゆったりしてたのに。
突然、名案でも思いついたみたいに声のトーンが上がった。
お茶へのお誘い。
唐突で少し不意を突かれてしまった。
満面の笑みだ。
別にお茶しに行くことに抵抗なんかはない。
おっさん騙して壺でも売りつけようという雰囲気でもないし。
ただ。
急に声を掛けてきて、飲みに誘うとか。
言ってるセリフとしては。
まんまというか。
これ、やっぱりナンパだったのかもしれない。
ってのは冗談としても。
彼女、天然でおっとりしてるだけじゃなくて。
ちょっと強引なところもあるようだ。
提案に少し圧を感じなくもない。
わがまま。
とまではいかないか。
久しぶりに再会したクラスメイトだもんな。
本人曰く心配してくれてたらしいし。
でも、と。
周囲に視線を向ける。
「いや、忙しいんじゃないの?」
「大丈夫です」
「え、本当に大丈夫?」
「はい!」
「……」
「それに、せっかく再会出来た事ですし」
まぁ、俺としては仮にナンパでも断る理由は無い。
本人がいいと言うならいいのだろう。
周りは忙しそうにしているが。
その中で立ち話してるって状況がすでにアレだったのに。
ここからお茶って……
そう思わないでもない。
学園としても色々やることはありそうな物だけど。
でも、本人がこう言っているのだ。
俺にそれを否定するようないわれも無いし。
多分大丈夫なのだろう。
「それじゃあ、」
「ストップ!!」
彼女の誘いに乗ろうとした所。
いきなり、横からノアが抱きついてきた。
ずっと黙ってたのに。
突然。
不意の出来事だったからか。
かなりの衝撃。
結構びっくりした。
おい。
不意打ちは勘弁してくれ。
心臓に悪い。
「僕も行きます!」
と思ったら、唐突に宣言。
あぁ、そういう。
下心なんてないと思うけどな。
「ノアさんも? まぁ、それは是非」
ほら、やっぱり。
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