学祭 8

 闘技場の中に入り、適当な席に着いた。

 入場料は無料。

 さっきのカフェとは偉い違いである。

 少し不思議な感じもするが。

 これって、運動会の延長線上の様なものだからね。

 一般に公開して客を入れてる訳でもないし。

 むしろ、値段を取る方が不自然か。


 だからなのか、座る席も自由らしい。

 一応招待席的なところがあるが、そこは入れないようになっていた。

 扉の前に兵士が2人。

 他にも、中に何人もいそうな雰囲気がする。

 おそらくはVIP用なのだろう。

 ここにいる人間は俺みたいな例外を除けば大抵VIPなのだけど。

 その中でも飛び抜けてる人達。

 王族とか上位貴族とか、そこら辺の人間が座るのだ。

 学園の中で上流階級ばかりとはいえ。

 流石にね。

 そこの警備は更に力を入れて然るべきだろう。


 あまり前の方に陣取るのもあれだし。

 ちょうど中間辺りの席を確保。

 チートのおかげで、視界を遮られたりしなければ観戦に問題はないからね。

 これぐらいでいいのだ。

 自分の子供や友人が出場する訳でもない。

 そこの席は譲るべきだろう。

 後、周りが応援ガチ勢とかだと着いていけないし。

 貴族ばかりの学園で?

 と疑問に思うかもしれないが。

 親バカってのは身分に関わらず居る物なのだ。


 席に着いて、少しして何やら始まった様子。

 いきなり戦い出したりはしない。

 流石に、そんな蛮族のイベントではない。

 開会式的な。

 選手が入場して宣言して、そんなオーソドックスな物。

 挨拶的なものもあった気がするが。

 すでにその内容を覚えていない。

 ついさっきの事なのに。

 教師の話がつまらないのはどこの世界も共通らしい。


 トーナメントは低学年の部から始めるっぽい。

 ってか、そんな分類あったんだな。

 まぁ、小学生と高校生とか戦わせたら危険だしね。

 格闘技ですらそうなのだ。

 魔法を使う今回の場合より危険度が増す。

 考えてみれば、当然の話ではあるか。


 メスガキは多分低学年の部かな?

 そこら辺の話を聞いた覚えはないが。

 見た目から。

 小学校高学年程度ぽかったし。

 なんとなくだ。

 あ、いた。

 ノアに連れられている。

 他にも数人。

 ノアの担当している生徒なのだろう。


 講師とはいえ、少し少ない気もするが。

 強制参加でもあるまいし。

 他の集団も大体それぐらいの人数。

 そういう物なのだろう。

 多少年齢で分けたとしても危険は危険だからね。

 出たがらない子の気持ちも理解できる。


 メスガキは事情がありそうな事言ってたしな。

 結局、詳しく聞かなかったから。

 どんな事情か把握はしていないけど。

 魔力の制御が不安定な状態でも出るつもりだったっぽいし。

 危険を覚悟した上で出場する。

 それだけの理由があったってことだ。

 こんな所でやらかしたら講師の方にも評価響きそうな気もするが。

 危険だと却下しても問題ない。

 そんな状態ではあった。

 それでも通して、わざわざ俺を頼ってどうにか。

 ほんと教育熱心だな。

 今年始めたばかりだというのに、真面目なやつめ。


 そんな事を考えながら眺めていると、ノアと目があった。

 手を振られる。

 あ、そんな感じでいいのね。

 想像より緩いらしい。

 まぁ、観客は保護者がメインだからね。

 そんなものか。

 振り返す。

 にしても、さすがはAランク冒険者。

 客席から距離があると思うんだが。

 特にここ、中途半端な席だし。

 そんな中でよく俺のことなんて見つけられた物だ。


 メスガキの肩を叩き、俺の方を指差すノア。

 それ、あんまりやらない方が……

 一瞬目が合う。

 一応手を振ってはみた。

 ぷいっと、そっぽをむかれてしまった。

 ノアが困惑している。

 それ以上に哀愁漂う雰囲気を纏わせるメスガキ。

 やめてあげて。

 これから戦うって言うのに。

 すでに心の方がボロボロである。


 まぁ、俺が言えたセリフではない気もするが。

 流石にね。

 ちょっとメスガキが可哀想になってきた。

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