学祭 7

 カフェで紅茶をひとしきり楽しみ、退店。

 メイド服を着た生徒が頑張って接客をしていた。

 それを見るだけで結構面白い。

 別に変な意味ではなく。

 上流階級が頑張ってんなぁと。

 ま、俺以外は客も大抵そっち側の人間なのだろうけど。

 微笑ましそうに見ていた。

 そりゃ、基本そういう視線になるか。

 むしろ学園祭に部外者が来ることが珍しいのだ。

 最後はお見送りまでしてくれたし。

 十分、値段に見合う価値はあったかな。


 メイド喫茶にハマる人間がいるのも理解出来る。

 俺は行った事ないけど。

 まぁ、性質としては多少違う気もするが。

 オタクが手の届かない女の子に接客されて良い気分になるのと。

 本質的には大差ない。

 貴族様が労働してる姿というのは悪くはなかった。


 捻くれた見方だという自覚はあるが。

 そう思ってしまったのだから、仕方がない。


 そこから、また。

 生徒を遠巻きに眺めながら校舎を歩く。

 なんだかんだ時間が潰れた。

 高級品だからね。

 一杯を無駄にちびちび飲んでしまった。

 貧乏性と言うか、何と言うか……

 そろそろだろうか?

 廊下に貼ってあった予定表を確認する。

 劇だなんだと書いてあったが。

 そっちではない。

 トーナメント。

 もう少しで初戦が始まるらしい。


 これを見に来たのだ。

 ノアに招待された訳だし、流石に初めから見る予定ではある。

 学園祭の中でも一番デカいイベントだしね。

 仮にその事情がなかったとしても見るべきではあるだろう。

 性質上時間がかかるせいだろうか?

 結構早くからやってるらしい。

 まだお昼前の時間帯。


 校舎を出て、少し歩く。

 闘技場へ。

 学園の地図なんてすっかり頭から抜け落ちてしまってはいるが。

 これに関しては迷うことはない。

 なんたって目立つし。

 ここに来たのは3度目だろうか?

 確か、入試で一回。

 授業か何かで一回。

 今回ので三回目である。


 学園の内部にある施設のくせに、なかなか立派な外見をしてやがる。

 ハリボテということもなく。

 当然、その中身も外見通りの豪華さ。

 コロッセオ的な?

 石造りの巨大な円形の建造物だ。

 結構な収容人数を誇り、押し込めば学園の生徒が全員入るかもしれない。


 王都には他にも闘技場があるのだけど。

 そこよりよほど綺麗。

 流石に規模だけで言えば向こうのほうがデカいだろうけど。

 こっちの方が格は高い。

 向こうは汗臭いとでも言えば良いのか。

 機能優先。

 無論、そこから機能美的なものは感じるけどね。

 どちらかと言えば、庶民の施設なのだ。


 学園の施設を、一般公開なんて当然しない訳で。

 ここを使うのは学園の関係者のみ。

 そこにこんなに金使って。

 無駄では? と思わなくもない。

 誰に見せる訳でも。

 いや、生徒の親は見に来るのだけど。

 それだけ。

 まぁ、そっちの方が重要ってことなんだろうな。

 庶民用の娯楽施設なんかよりも。


 国の威信をかけた施設ではあるからね。

 同盟国とか。

 そこまで行かなくても仲の良い国の貴族が視察に来たりもするし。

 なんなら、学園に留学してきたりとか?

 そんなんも別にあり得なくはない。

 そういう意味でも。

 この豪華さにもある程度意味はあるのだろう。


 学園関係者の見栄っ張りとか。

 利権とか。

 そっちの方が強そうな気もするけどね。

 貴族だけじゃなく商人も通う学校だし。

 どこに建設をお願いしたんだか。

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