王都 6
にしても、かなりの視線を感じる。
一応、街の外ではあるのだが。
門を出てすぐ側。
森との間に広がる草原だからね。
視線がよく通る。
こんな所に飛竜が降りてきたらそらそうなるか。
一口に視線とは言っても、内容はさまざま。
門番なんかは明かビビってたけど。
まぁ、いざとなれば戦わなきゃならんし。
無理もないか。
この街でドラゴン便使うやつなんていほぼ居ない。
せいぜい領主が本当に急ぎの時に使うかどうか。
その程度の数じゃね。
一目で判断できないだろうし。
警戒するのも頷ける。
それに比べ、住民たちは呑気なものだ。
壁の外には出て来てないが。
それでも門のすぐ内側に集まっている。
兵士と同じでドラゴン便だとは分かってなさそうだけど。
飛竜なんてそう見るものでもないしね。
他の魔物ならともかく、ここまでくると現実味が無い。
認識が麻痺しているのかもしれない。
前世でも似たようなの見たことあるな。
犯罪とか災害とか。
危険な場所に集まって、結果被害が拡大するとかいう。
野次馬根性猛々しい。
いや、俺も住人の立場なら野次馬してた可能性大だが。
それはそれ、これはこれである。
完全に注目の的だ。
ま、仕方ない。
これで目立つなってのが無理な話なのだ。
ノアとの件で既に手遅れ感もある。
転移バレでギルドやら国の注目を買う方がめんどくさい。
誰が用意したのかってのも。
薄々勘付かれてるだろうし。
この方向なら許容してもいいかな。
せいぜい、また受付嬢に絡まれる材料が増えたぐらいだ。
……それが狙いでは?
だとしたら、ノアなかなかの策士である。
自信なさ気だったあの頃とは大違い。
良いのか悪いのか。
完全に外堀を埋めに行かれてる気がする。
ま、一線超えた時点で手遅れ説。
別に束縛してくる感じもないし。
匂わせみたいな物だ。
これぐらいなら別に不都合もないからね。
可愛いものだ。
「ロルフ様でお間違い無いですか?」
「はい」
飛竜の背中から青年が降りてきた。
調教師なのだろう。
ドラゴン便の御者さん。
結構なエリートだ。
強さで言えば、英雄の領域一歩手前ぐらいの実力かな?
魔力量的にもそれぐらい。
冒険者で言うならB程度って所か。
うちのギルド長と同等。
……そう思うと大した事ないように感じる。
「何か、身分を証明するものはお持ちですか?」
「これで大丈夫かな?」
「ありがとうございます。確認いたしました」
身分証を求められて、とりあえず冒険者カードを提示した。
これぐらいしかないし。
Dランクのカードなんて証明になるのか微妙な所だが。
普段ならともかく。
ドラゴン便なんて高級品だし。
ただ、そこら辺はノアの方から事前に伝えてくれていたのだろう。
問題なく受理された。
ま、他にも容姿とかも聞いてるだろうしね。
そこと合わせて。
事前に伝わってるのと同じなら十分って事なのだろう。
「このまま出発してしまって問題ないですか?」
「大丈夫です」
今着いたばかりだが、もう行くらしい。
飛竜の体力ならそんなものか。
どこから来たのかは知らないけど。
休憩は不要。
飛ぶ事自体は大して疲労もしないのだろう。
御者に促され、車内に乗り込む。
流石に背中に乗ったりはしない。
危ないからね。
なかなか豪華な内装。
普段使うような安い乗合馬車とは大違いだ。
座席もふかふかしてるし。
ソファーなような感じ。
これなら腰を痛めることもないだろう。
まぁ、貴族とか豪商とかがメインのお客さんだろうし。
値段も値段だからね。
そこらへんもしっかり気を使っているのだろう。
「飛び始めだけ少々揺れます。お気をつけください」
それだけ言うと、少ししてふわりとした浮遊感。
もっと揺れるものだと思っていたが。
本当に少しだけだな。
羽ばたいてこそいるけど、羽で飛んでる訳じゃないしね。
メインは魔法。
羽は空中でのバランスを取っているに過ぎない。
だから、だろうな。
仮に羽で飛んでいたなら車内でもみくちゃになってた。
ぐんぐんと高度を上げていく。
街が見える。
もうかなり下。
全体を見下ろすように。
小さな街だ。
いや、他と比べればこれでも大きいんだけど。
少なくとも、港町や温泉街よりは。
前世と比べるとって話。
どうしても街全体を壁て囲う必要があるから。
魔物が危ないし。
規模も小さくなってしまうのだ。
空を飛ぶというのは気持ちがいい。
自分で飛べない訳ではないが。
それとこれとは話が別だ。
ゆったりと腰掛け、窓の外を眺める。
贅沢なひと時だ。
この速度なら王都まで数時間もかからないだろう。
便利な乗り物である。
値段的に普段使いしようとは思わないけど。
多分、この利便性は前世を超えてると思う。
滑走路とかいらないし。
飛行機よりよほどお手軽。
あ、でもヘリって選択肢もあるのか。
経験ないからなぁ。
どっちにしろ。
庶民の乗り物じゃはないって点では同じだな。
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