王都 5
受付嬢に同意する訳ではないが。
ギルドを通して手紙を送るのなんて、普通にあることではない。
そんなサービスは無いし。
無理を通してる形だ。
まぁ、Aランク冒険者ならそこまで無茶じゃないのだろうけど。
ノアは別に権威を傘にきてとか好きではない。
実際、以前は他の方法で手紙と荷物送ってた訳で。
そこそこ急ぎの用事なのかもしれない。
その場で手紙の内容を確認。
予想通り。
前回の話の続きだった。
なんでも交通手段を用意してくれるらしい。
気が効くな。
俺がめんどくさがるの読んでた説もあるが。
再会して数ヶ月しか経ってないのだけど。
適当なのがバレてる可能性……
まぁ、素直に受け取っておくのが吉か。
多分自分が呼び出したからってことなのだろう。
ノアの親切心って事で。
それに、用意してくれたのもなかなか良さげな方法。
馬車とかならお断りだったが。
そんなチャチなものじゃ無い。
さすがはAランクだ。
これならいいかな。
ってか、ノアがこうやって用意してくれるのなら。
余計なこと考えなくても良かったじゃん。
転移がどうとか。
今となっては完全に無意味である。
なんだかんだありつつ。
今だに、俺のこと尊敬してくれたままっぽいし。
気を遣ってくれたのかもな。
冬の移動が大変なのも分かってるだろうから。
いい後輩を持った。
受付嬢も見習ってくれてもいいのよ?
視線を向けると、目が合う。
手紙の内容が気になっていたのか。
なんとか覗こうと四苦八苦。
懲りないやつめ。
バレたのが分かると気まずそうに目を逸らされた。
お前、そういうとこやぞ。
で、日付は……
あれ?
今日じゃね?
手紙に書いてあった出発日。
今日の日付だ。
なんでそんな近々に。
手紙届かない可能性も普通にあったのでは?
あ、そっか。
俺が出発してしまう前になんとかって事か。
普通にそろそろ出ようかと考えてたし。
その説が濃厚だな。
ギルド経由とは言っても、ね。
必ず間に合うとも限らない。
最悪、手紙が届かなかったとして。
商人に伝言頼んでおけば。
手紙が遅れても出発前に伝えられるか。
それで、早め早めでって事なのだろう。
これって、完全に俺のせいなのでは?
めんどくさがって返事遅れたから。
いや、ね。
嬢の後押しもあって、手紙もらった日の夜には行く事自体は決めてたんだけど。
ちょっと書くのが面倒で。
手紙を出すのが遅くなってしまったのだ。
だからだろう。
俺としては向こうが移動手段手配するとは思ってなかったし。
行くことだけ事前に伝わればいいかなと。
まぁ、完全に言い訳だな。
でも、少し待ってほしい。
俺って前世から宿題とかギリギリまでやらないタイプで。
夏休みの最終日に慌てて、それでも終わらず。
学校始まってから提出日までに詰め込む人間だった。
返事を書いただけ偉いまである。
褒めてくれてもいいのよ?
俺の返事が届いてから、速攻で準備してくれたらしい。
よく間に合ったものだ。
ってか、それも考えてのギルド経由か。
他の方法だと間違いなく遅れるし。
特に今の時期なんて。
なんか、そこまで付き合いも長く無いのに結構な部分を把握されてる気がする。
普通はいいことなんだけどね。
ちょっと恐怖感が。
これ、前の嵌められた記憶があるせいだろうな。
ギルドの外に出る。
受付嬢もついてきたそうにしてたけど。
君は今仕事中でしょ。
それに、多分ノア自体は来ないと思うよ?
忙しいだろうし。
時間の指定はない。
でも、こういうのは大体は昼頃なはず。
そろそろだと思う。
まぁ、間違いなく街の中には入れないだろう。
門を通り壁の外へ。
詳しい場所の指定はなかったが。
大雑把でも大体分かるか。
それぐらい目立つ手段だし。
実際、街の外に出るまでもなく強力な魔力を感じる。
魔眼を使うまでもない。
魔力の塊。
それが街の上空に。
普段だったら嫌な予感しかないが。
今日は心当たりがあるからね。
これが今回ノアが用意してくれた移動手段だ。
巨大な生物が、街のそばの草原に降り立つ。
トカゲやら恐竜に近いか。
それに巨大な羽が生えた生物。
ドラゴンだ。
こいつに運んでもらう。
ドラゴン便で移動か。
豪華だな。
なんせ、めっちゃ高くつく。
同じ距離の移動だとして、馬車の数百倍とか?
もしかしたらもっと高いかも。
当然だ。
強い人間じゃないと扱えない。
それに調教も手間だし。
ま、ドラゴン便とは言いつつおそらく飛竜なんだろうけど。
本物を手懐けられるのはね。
勇者とかそういう人間だけだ。
英雄譚の中のお話。
それでも化け物な事に変わりはない。
もちろん、値段に見合うメリットも多い。
地面の影響とか受けないし。
空を飛ぶからね。
雪が積もってるからなんだって話。
それに、飛竜が強いから移動中も比較的安全。
何より早い。
上位貴族御用達の移動方法である。
料金はノアが出してくれるらしい。
ありがたい。
でも、いいのだろうか?
今は講師しかしてないだろうに。
名誉ではある。
給料も高い。
ただ、Aランク冒険者の依頼料ほどではないし。
余裕で払える金額でもないような。
そこまでして呼びたいのか……
ノアのそういうところ、たまに少し怖くなる。
前のノートの件もそうだし。
執着心が強いのだ。
いや、好かれてるのは嬉しいんだけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます