手紙 9
「そういえば……」
ピロートーク中。
嬢が何か思い出したかの様に切り出して来た。
いや、別に会話はしていなかったか。
ベットで横になってるだけ。
これ、ピロートークではないな。
いつもなら寝てるんだけどね。
今はほら、普段より時間も早いから。
疲れてはいるのだけど。
そんな気分でもなく、ぼんやりとしていた。
って、んな事はどうでもいいのだ。
「ロルフさんって、来月またこの街離れるんですよね」
「え?」
「またしばらく会えないのかぁ」
「??」
「そう思うと、ちょっと寂しいですね」
何を言い出すのかと思えば。
完全に予想外の話だった。
来月?
確かに俺は頻繁にこの街離れてるけど。
そんな話したっけ?
シンプルに、何で?
「あれ? ロルフさんは寂しくないんですか?」
「いや、そう言う話ではなくて」
「ん?」
「来月どっか行くなんて話したっけ?」
俺が虚を突かれた顔をしていたからか。
少し不安げな様子で聞いて来た。
まぁ、寂しいっていってるのにそんな反応されたら多少不安になるのも分かる。
常連だしね。
どうでもいいって事はないのだろう。
収入に直結するし。
別に会えなくてもいいって意味じゃないのだ。
単にそう思われてることが不思議で。
そんな事話した覚えないし、今の所そんな予定も立てていない。
俺なんてそもそもが適当なのだ。
日々思い付きで生きている。
先々の予定を立てる事なんて滅多にない。
ここの娼館も。
確かに常連ではあるのだが。
でも、毎日来てる訳でもないし。
今回みたいな、温泉街だと長い泊まりになるからあれだけど。
それ以外なら頻度に差は出ない。
頻繁に行ってる港町とか。
大体、数日で帰ってくるからね。
寂しいなんて言うぐらいだし、今回ぐらいの長期の予定の話だろうけど。
そんな予定は一切ない。
いや、温泉街にもまた行こうと思ってはいるが。
日付なんて決めてないし。
来月ねぇ。
そもそも今は冬なのだ。
雪が積もって馬車とかまともに動かなくなっちゃうし。
旅行には不向き。
もちろん転移でも行けはするのだが。
それだとちょっと味気ないし、旅の楽しみも半減する様な気がする。
だから、何かの勘違いだと思うんだけど。
「え、今度王都に行くんじゃないんですか?」
王都、王都……
あ、なるほど。
心当たり、あったわ。
でも何故それを?
俺、話してないよな。
「手紙、来てませんでした?」
何で知ってるのやら。
そこらへんにほっぽってたりとかは。
うん、してないな。
そもそもアイテムボックスの中だ。
嬢からは確認しようがない。
受付嬢がこっそり中身見て……
いや、この娘別にギルドとは関わりないし。
受付嬢とも面識はないはず。
そもそも封されてたし。
あの手紙を見たって事じゃなさそう。
ノアが別で手紙でも送ったのかな?
何故。
いや、俺がなぁなぁにする未来が見えたのかもしれない。
信用ないな。
まぁ、否定できないのがアレだけど。
確かにノアから手紙は貰った。
学園祭への招待だ。
学園があるのは王都だからね。
その招待に乗るなら、今度王都に行くことになる。
結構な時間空けることになるか。
そしたらまたしばらく会えなくはなる。
その話か。
後回しにしていた。
行きたい気持ちはあるが、王都はなぁ。
「もしかして、行かないんですか?」
「うーん……」
「旅好きなのに?」
うっ、
「可愛いノアちゃんの誘いを断っちゃうの?」
なんか、色々刺してくる。
いや、旅好きはそうなんだけど。
何故そう肩を持つのか。
疑問ではある。
「お前ら、ほんと仲良いよな」
「妹分なので」
「ノアは男だけどな」
えっへんと自慢げ。
少し前にあったばかりだというのに。
俺と違って完全初対面だし。
職業も全く違う。
何が波長があったのか知らないが。
謎にちゃん付けだし。
ま、楽しそうだから。
別にいいんだけど。
「行ってあげてください、多分寂しくしてますよ」
「王都ねぇ」
「可愛い後輩のおねだりじゃないですか」
「後輩……」
「ここは先輩らしく、その方がカッコいいですよ」
「まぁ、そうだな」
しゃーなし行くか。
あんまり王都。
それも学園には近づきたくなかったんだけどね。
講師やるように背中押したの俺だし。
先輩の役目か。
それに、酒とか食材とかたくさん貰っているのだ。
これぐらいなら別にいっか。
ノアの事だ、行かなかったからって送ってくれなくなる事はないだろうけど。
俺の気分の問題。
どっちみち行ってただろうが。
嬢にも押されたら、断る選択肢は無いな。
……久々に、母校へ帰るとしますか。
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