手紙 6

 薬草採取を終え、ギルドに帰ってきた。

 ついさっき、足早にここを出て行った所ではあるのだけれど。

 依頼を受けて、採取してきたのだ。

 当然ではあるが。

 報告しないことには金にならない。


 時間にして、大体1時間とちょっとだろうか?

 普段は一刻ほど掛かるのだが。

 早足だったこともあり、少し早めに終了。

 まだ冬が始まったばかり。

 薬草も森の浅い部分をさらってきただけだからね。

 そんなに時間は掛からなかった。


 別に急がなくてもいい時に限って早めに用事が終わるの。

 これ、あるあるだよね。

 さてと。

 彼がまだ居るのかどうか。

 普通はそこまで居座らないが。

 依頼を受けるだけだし。

 駆け出しなら、そこで臨時パーティーを組んだりするかもしれないけど。

 新人とは言っても、ねぇ。

 Cランクに上がったって言ってたし。

 流石にそれはないと思いたい。


 あ、俺の場合は例外。

 パーティーを探すとかでもなく。

 依頼を早々に終えた後。

 ギルドの隅に居座る。

 まぁ、酒飲み始めちゃうからね。

 仕方ないね。


 ギルドに入り、ぱっと見青年はいない。

 いや、実際の所だ。

 別に彼が居たところで何だって話だけど。

 ストーカーでもあるまいし。

 ノアとは違う。

 だから、別にビビってる訳ではないよ?


 カウンターへ。

 さっさと報告を済ませてしまおう。


「おじさん、もう終わったんですか?」

「あぁ、ほれ」

「普段から早いですけど、今日は特に早かったですね」

「依頼を受けたのは何時間も前だけどな」

「そうかっかしないでください」


 依頼を受けたのは呼び出しの前だからね。

 それだけで何時間拘束された事か。

 話題的に仕方ない部分はあるんだけど。

 2度目はごめんである。

 しかし、その後も受付嬢に渡された手紙を確認してたり。

 何だかんだしていたのだが。

 よく、普段より早く終わったの気づいたな。


 まぁ、こいつのことだ。

 ギルドから出てくとこもしっかり見ていたのだろう。

 無駄に視野広いからね。

 少し前も、新人に絡まれてたけど良いのかとか言って来たり。

 そういうところ、謎にしっかりしてるからね。

 担当冒険者の動きを把握してるらしい。


 って事は、アレも見られてたのでは?

 例の青年にいつでも声掛けてください(意味深)って言われてたの。

 受付嬢の表情を確認する。

 別に至って普通。

 薬草の検品をしている。

 でも、一度そう思うとなんかニヤニヤしてるようにも見えてくる。

 声は聞こえてないだろうし。

 多分、気のせいだとは思うんだけど。


「何か、いつにも増して雑ですね」

「うるさいよ」

「呼び出されてイライラするのはいいですけど。だからって、私に八つ当たりしないでください」

「はいはい、分かってます」


 なんだかんだ言われながら。

 依頼達成。

 受付嬢から金を受け取る。

 雑だったかな?

 そんなつもりはなかったんだけど。

 余裕のなさが出た説あるな。


 にしても、ちゃんとチェックしてるのか。

 意外だ。

 いや、確かに真面目な表情して検品してたけど。

 こいつの場合表情は当てにならないからね。

 そんな経験があるとかではなく。

 単なる偏見。

 真面目な表情で揶揄って来そうだな的な。


 まぁ、仕事だからしっかりやるの自体当然ではあるんだけど。

 流れ作業でやってるものかと。

 俺が普段から雑だから、真面目に見ざるを得ないという可能性もあるが。

 ……

 自分を下げるより、相手を上げる方がお得だからね。

 ここは前者だと思うことにしよう。


 受付嬢の性格でもギルド職員やれてる理由。

 おそらくは、そんなところにあるのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る