散策 15

 獣っ娘との初夜を終え。

 数日が経過。


 その間しっかり満喫させてもらった。

 宿も獣っ娘も。

 しかし、そろそろ帰らないとな。

 ボーナスも結構使ってしまった事だし。

 ちゃんと働かないと。

 遊ぶ金と飲み代が無くなってしまう。


「じゃ、女将さんお世話になりました」

「また来てくださいね」

「もちろんです。この娘もいますし」


 宿代の精算を済ませ、女将にご挨拶。

 毎回お見送りに来てくれるのだ。

 本当、VIP扱いだよね。

 まぁ、別に悪い気はしない。


 そのまま帰ろうとすると、獣っ娘が引っ付いて来た。

 服の裾をギュッと掴まれる。

 いや、それじゃ帰れないんだが。

 寂しいらしい。

 ここ数日で結構仲良くなれた。

 初めから好感度高めだった気もするけど。

 ま、どちらにしろ悪い事ではない。


「別にもう会えなくなるわけじゃないから」

「でも」

「またすぐこの街に遊びに来る」

「……うん」

「それまで女将さん達と一緒に待ってるんだぞ」

「はい」


 ほら、見られてるぞ。

 女将さんと、例の新人スタッフの娘に。

 チラリと視線を向けるが、離れる気配はない。

 強情だ。

 恥ずかしかったりはしないらしい。


 仕方がない。

 そっと、彼女の手を服から剥がす。

 理解はしているのだろう。

 別に本気でしがみついてる訳じゃない。

 ただ、嫌だと態度で示してるだけ。


 連れて行ってあげたいけど。

 ダメだ。

 俺じゃ世話できないからね。


「君も、ありがとね」

「いえ」

「この娘のことよろしく」

「もちろんです」


 駄々をこねる獣っ娘を微笑ましそうに見つめる彼女。

 目があったので、一応。

 と言うか、もう新人スタッフじゃないか。

 後輩出来たし。

 先輩さんだ。

 多分、一番お世話になる事になるはず。

 可愛がってくれてるっぽいけど。

 上手くいくことを願おう。

 獣っ娘もそう悪い娘じゃないし多分大丈夫でしょ。


 我ながら楽観的。

 でも、そうじゃないと奴隷なんて買えないしね。

 となれば獣っ娘は死んでた訳で。

 そう考えると。

 この性格も悪いことばかりじゃない。


 置いていくが、別に不自由させるつもりはないし。

 街の外に出なければ何をしてもいい。

 そう言ってある。

 もちろん女将さんの言うことを聞くようにも言ってるが。

 そこはまぁ、言うまでもないでしょ。

 女将さんに逆らえる人なんて多分いない。

 別に怖い人では無いんだけどね。

 なんか、謎の凄みのような物があるのだ。


 街の外なんて危険だし、一生でない人間も多い。

 そう思えば、だ。

 この制限もあってないような物。

 奴隷にしては、結構自由な生活をさせてると思う。

 女将さんもお小遣いくれるって言ってたしな。

 同じだけ給料を払うとはいかないが。

 生活費を引いた分を支給してくれるらしい。

 信用を積み重ねたおかげだろう。

 俺ではなく、獣っ娘が。

 まだ数日しか働いてないけど、それだけ真面目にやってる証拠だ。


 ようやっと引っ付いた獣っ娘を剥がし終わった。

 俯いてる。

 そう泣くなって。

 慣れるから。

 でも、次再会した時俺の事うざいって思うのは辞めてくれよ。

 我ながら贅沢なお願いだが。

 奴隷相手だから、許してほしい。


 こんな懐いてくれて、本当買ってよかったな。

 絶対後悔してた。

 彼女のおかげで女将さんとも出来たし。

 万々歳だ。

 まぁ、結局あの一回だけだったんだけど。

 でも、獣っ娘1人相手にするのも体力使うからね。

 3人の後は放心状態だったし。

 助かったと言えばいいのか。

 それとも、寂しかったと言った方がいいのか。


 宿を出た俺に女将が寄って来た。

 何か忘れ物でもしたかな?

 いっつも適当にアイテムボックス入れるからね。

 手荷物とか確認してもしょうがない。

 たまに入れ忘れがあるのだ。

 この宿でも何度か忘れたことがある。

 いい人だから。

 次のシーズン来た時に渡してくれるんだけど。


 すっとさらに近づいて来た。

 顔が側まで。

 え?

 そのまま、俺の耳元に。


「あの事、他のお客様には内緒ですからね」


 見ると、普段と変わらない笑顔。

 確かにちょうど思い出してはいたけど。

 なぜバレたし。


 やっぱり、どこまで行っても女将さんには敵いそうにない。

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