散策 13
にしても、何故そこまでって感じだが。
奴隷相手だ。
止められる言われはない。
ただ、女将の方も手伝う必要はない訳で。
獣っ娘に頼まれたからってねぇ。
「不思議そうなお顔」
「あ、いや」
バレてしまった。
思いっきり顔に出てたらしい。
そりゃそうだ。
顔に出ない訳ない。
だって、その通りだし。
「何故そこまでしてくれるのかなって」
「お世話を任されましたから」
「……え?」
「奴隷のお世話と言ったら、そっち方面もでしょう?」
当たり前とでも言いたげな。
そこまで頼んだ覚えはないが。
そう言ってくれるなら。
別に、訂正する必要はない。
「と言うのは、流石に建前です」
「?」
「この娘、可愛いですからね」
女将が獣っ娘の頭をわしゃわしゃと。
気持ちよさそう。
ごろごろ喉を鳴らしている。
「頼られてしまっては断れません」
そう言いながら微笑む。
獣っ娘を撫でる手はそのまま。
女将、猫派だったらしい。
いや、この世界じゃペットを飼ってる人間自体ほぼ見ない。
危ないし。
だから、猫派も何もない気がするが。
それでも人間が社会を築き生活をしているのだ。
根本的な思考はそう変わらない。
猫のペットとしての歴史は紀元前まで遡るとか何とか。
しかも、犬とは違い狩猟には使えない。
始めから愛玩目的。
本能に刻まれているのだ。
可愛いと。
そして、可愛いは正義。
これは人類に共通したただ一つの真理なのである。
話がズレたが。
つまりはそういう事。
ただの奴隷。
されど、断り難し。
女将もその魅力にやられてしまった訳だ。
「それにしても、ちょっと嫉妬しちゃうわ」
「嫉妬?」
「私には積極的に来なかったのに。この娘には男らしく行くのね」
視線、俺の下半身の方へと向く。
改めて格好を思い出した。
ほぼ、咥えさせてるような状態。
確かに、無理やり迫ったように見えなくもない。
と言うか俺が買ったわけだし。
常識的に考えればそう。
「いや、違って。むしろ俺が襲われたと言いますか」
「え?」
「こいつが突然ズボンに手を掛けてきて」
「あら、そうなの?」
女将の問いに獣っ娘が頷く。
頭を少し動かしただけ。
心なしか恥ずかしそう。
さっきまで俺のこと追いかけ回してたくせに。
女心ってやつはよく分からん。
「意外と肉食なのね」
おっとりと笑っている。
これは酷い。
完全に全肯定である。
というか、まだ撫でられたままだ。
いつまで撫でてるのだろうか。
表情が心なしか蕩けてきてるような。
「貴方も、いいもの持ってるのね」
「へ?」
「お風呂で見た事はあったけど、臨戦態勢のは初めて見るから」
そりゃそうだ。
なんどか立ちそうになった事はあったけど。
流石にね。
マナー違反もいいところだし。
「昨晩断っちゃったのもったいなかったかしら」
「昨晩?」
「あら、忘れちゃった? 背中流すって言ってくれたでしょう」
「あ、あぁ……」
「それとも、冗談だったのかしら?」
「そんな事は」
あれ?
この感じ、もしかして。
ワンチャンある?
見られるだけかと思ってたけど。
いや、それでも十分過ぎるほど興奮するんだけど。
それ以上も。
「年上の女性はお嫌い?」
「いえ!」
「今日はしっかり仕事終わらせてきたわよ」
そうだ。
昨晩、仕事があるからって断られたんだ。
って事は?
いや、あれはただの断る建前だったのかもしれないけど。
どちらにしてもだ。
わざわざ口に出したって事は。
そういう事と理解してよろしいな?
言っとくけど、止まれないよ。
「ぜひ!」
「むぅ……」
痛っ。
俺が元気よく返事をした瞬間。
息子に痛みが。
下を見ると。
獣っ娘に少し歯を立てられた様子。
「こら、嫉妬させちゃダメですよ。メインはこの娘なんですから」
そうだそうだとでも言いたげな。
獣っ娘が頷く。
いや、今のは女将さんのせいじゃ……
いえ、何でもないです。
俺が悪いです。
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