散策 10
断る理由も無い。
というか、立場的に断れないし。
掃除してもらう事に。
スタッフの娘は結構慣れた手つき。
去年は居なかった。
まだ新人のはずだけど。
もうちゃんと戦力になってるらしい。
凄いな。
しっかりしてる娘だ。
春とか夏に入ったのかもな。
その時期は客も多い。
雪の降る冬とは移動の難易度が段違いだからね。
この温泉街自体が繁忙期。
当然宿に泊まる人間も増える。
思ったより経験を積んでるのかもしれない。
玄関の清掃もやってたしね。
宿泊客が一番初めに目に入る場所だから。
雑な仕事は許されない。
そこをほぼほぼ任されてるらしい。
ちゃんとプロフェッショナルである。
さっきの、尋ねてきた様子は不慣れな感じでてたけど。
じきにイレギュラーにも慣れていくのだろう。
獣っ娘の教育も任されてるっぽいし。
女将のような出来る女に成長していくのかもしれない。
人間って実は結構成長するからな。
無理にでもやらなければならないとなれば、その環境に適応するものだ。
俺はその環境に置かれないから。
転生してから、まるで成長してないのだが。
いや、だって頑張るのって大変じゃん。
獣っ娘も、慣れない動きではあるがお手伝い。
新人スタッフに教わりながら。
見様見真似で頑張っている。
なかなか微笑ましい。
女将に速攻連れてかれちゃって。
相談するタイミングちょっと失敗したかと思っていたが。
せめて一度抱いてからにするべきだったとか。
そんな邪な思い。
でも、この光景が見れるなら全然アリだな。
尻尾が左右にふらふらと。
視線が誘導される。
別に、お尻を見てる訳じゃないよ?
何となく。
ほら、よく動いてるからさ。
人間目を惹きつけられがち。
目を逸らしても、今度は新人ちゃんの方へ。
女の子2人が掃除してくれてるんだよ。
そりゃ、ね。
しかも掃除で腰を屈めるから。
少しゆったりめの宿の制服が体に張り付いて。
ラインがしっかり確認できる。
いや、これを見るなって方が不可能だよね?
そういえば、この尻尾……
俺が知る限り、この宿のスタッフに獣人はいない。
尻尾が出てるのは特別仕様。
おそらく、女将が縫い直してくれたのだろうか。
忙しいだろうに。
預けて数時間しか経っていないはず。
本当に良い人。
そして、仕事の出来る人だ。
「お邪魔しました」
「いえいえ、掃除ありがとね」
一通り掃除を終え。
新人スタッフが帰っていった。
もともとそこまで汚れてたりなんかなかったが。
空気が綺麗になった気がする。
掃除のおかげか。
女の子が2人同じ空間にいたからか。
いや、この思考はちょっと気持ちが悪いな。
セクハラおじさんみたい。
まぁ、それを気にするのは今更過ぎるかもだけど。
視線を戻す。
獣っ娘が所在無さ気な様子で部屋の中央に。
ちょこんとお座り。
……あれ?
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