A級 9
ま、あの時売ったノートも別に無価値ではない。
そもそも紙が高いしね。
どうやったって無価値にはなりようが無いって説もあるが。
だから、お礼参りとかは勘弁していただけると……
え、純粋に情報としての価値?
内容に関しては、まぁ人それぞれって所かな。
真の意味での情報商材みたいな物で。
それを活かせるかどうかは、完全に本人次第。
別に嘘が書いてあったりはしないし、情報の精度としても高い方ではあると思う。
ただ、当時巻き上げたほどの値がつくかは微妙。
俺はそれ以上の金を掛けてこのノート作った訳だが、有用だったかと言われればそんなことなくて。
金と時間がかかった割に大した価値は感じなかった。
紙の価値的に、これを作る前の。
それこそ、何も書かれてないノートの方が高い説もある。
視線を彼に向ける。
満面の笑みだ。
別に、裏とかはなさそうなんだけど……
何故だろう。
ちょっと、いやかなり怖い。
俺も人のこと言えないな。
受付嬢の同類。
なんか、サイコパスに見えて来た。
気にはなる。
当時の事、あのノートの事。
今どう思ってるのか。
めっちゃ気になる。
が、本当の所を知っても大した意味はない。
表面上笑顔ならこれで。
下手に突いて怒らせたくないし。
辞めておくべきだよな。
と言うか、話が脱線し過ぎた。
これも俺がノアのこと忘れてたせいなのだろうが。
話をしに来たんだよな。
講師、だっけ?
予想と全く違った訳だが。
少なくとも盗賊とかポーションの事は関係なさそう。
俺としちゃ都合もいいし。
出来るだけそっち方面で続けてもらえると。
「話を戻すけど、さっき言ってた講師って……」
「あ、そうでした。すいません」
「いや、俺がノアの事すぐ思い出せなかったのが悪いから」
「実は学園の方で講師をしないかって話が来てて」
ん?
俺に?
って、な訳ないか。
学園って、王都にある貴族の子息ばかりが通うあそこの事だよな。
そこがDランク冒険者に講師を依頼するとか……
無い無い。
卒業生とかならともく、俺は卒業してないし。
そもそも、いくら学園とはいえだ。
たかが伝言にAランク冒険者なんて使わないだろ。
「ノアにって事だよな?」
「あ、はい」
やっぱり。
「それで、代わりに先輩がどうかなと思って」
……は?
こいつ、今なんて言った?
俺に、代わりに学園で講師をやれと。
そう言ったのか?
「えっと、」
「すごい事なんですよ!? 学園なんてほとんど貴族しかいませんから、そこの講師に抜擢されるなんて。給金は勿論ですが、名誉だって」
断りそうな雰囲気を感じたのか、すごい勢いでメリットを並べ立ててくる。
いや、確かにそうだろうけど。
冒険者が学園に関わりを持てるなんてとんでもない名誉。
しかも講師だなんて、尚更。
Aランク冒険者どころか、その中でも評価が高くないと回ってこない話ではある。
上手くコネを作れれば、低位かもしれないが貴族への道だって開けるかもしれないし。
そもそも、学園の中に入る事自体庶民には一生不可能な事なのだ。
俺の事を本当の所でどう思ってるのか分からないが。
まぁ、昔お世話になった先輩へのお礼としては最上級もいい所だろう。
少々過剰気味な気もするけど。
普通は万々歳。
二つ返事で受ける人間も多いだろう。
だからこそ、
「自分でやればいいじゃん」
そもそも、この評価自体別に俺への物じゃ無いし。
代わりに講師になるなんて不可能じゃね?
いくらAランク冒険者と言っても、そこまでの権力はない。
学園なんて、普段から貴族連中を相手にしてるのだ。
法律を多少無視出来てしまえるような王侯貴族でも容赦なく縛る校則。
昔、公爵家の令嬢が退学になりかけた事があったとか。
あくまで噂でその後どうなったのかは知らないが、それぐらいの強権があるということ。
少なくとも学園の内部に関しては。
Aランク冒険者が貴族並みに権力があると言っても、ねぇ。
あそこじゃ外で言う一般人と何も変わらない。
しかも、まだ講師にもなってない状況。
ただの部外者である。
俺みたいなDランク冒険者を捩じ込むなんて、土台無理な話だ。
あと、単純にやりたくないし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます