港町 14
娼館を出る。
前回来た時、たっぷり搾り取られた訳だが。
また懲りずに指名してしまった。
そして今回も、しっかりと。
……いや、あの娘のテクニックは凄いね。
めちゃくちゃ積極的だし。
ただ連続だとこっちが持たないのがね。
そのせいで、町にいる間に多くは指名は出来なかった。
まぁ、楽しみを取っといたって事で。
今日はこの町を出る日だ。
だから、同じルーティーン。
大将の店で夕飯を食べて、例の娼館で一番人気の嬢を指名した。
今までこの町に行きつけのお店とか無かったんだけどね。
これから港町に来た時の鉄板になりそうだ。
大将に教えてもらって、酒も何本か買えたし。
なんだかんだかなり長居してしまった。
お金は結局余ってる訳だが。
まぁ、無理に使い切る必要もない。
次回来た時にでも、別のとこ行く時にでも。
稼ぐ手間を無視すれば、そりゃあればあるだけいいからな。
乗合馬車の停留所、そこに向かおうとして……
あれ?
見覚えのある人影を見つけた。
野営をするつもりはないので、例によってまだ早朝。
人通りは少ない。
娼館の店員であろう、上質な服を身に纏った男性。
それと若い女性が2人で話しをしていた。
確か、馬車で一緒だった。
ウーヌから女1人でこの港町に来ていた娘だ。
名前は忘れてしまった。
ま、この世界で身寄りのない女が稼ぐとしたらここぐらいしか選択肢はないか。
普通ならバッドエンドなんだろうけど。
よく利用してるからこそ分かる。
別に悪い選択肢じゃない。
お金はそれなりに稼げるし、体が商品だからある程度保護も手厚い。
ずっと売れなければその保護も無くなるだろうが。
彼女なら上手くやれるだろう。
なんとなく、そんな予感がする。
容姿も良かったしね、それだけで大きなアドバンテージだ。
だから、まぁ。
頑張って。
また今度、この町に来た時。
その時まだ働いていたら相手してもらおうかな。
名前の方は忘れてしまったが。
太ももの感覚ははっきりと覚えている。
……最低?
何を言う。
指名して長時間買おうって話だ。
嬢にとっちゃ、ありがたいお客さんだろう?
楽しみが増えたな。
声をかけることなく、振り返ることもなく。
その場を後にした。
乗合馬車の停留所。
向こうの街と同じく、いくつかの馬車が止まり人だかりができている。
「あ、ロルフさん」
「今回の旅路は大丈夫そうかな?」
「そうあって欲しいです」
商人に声を掛け、馬車に乗り込む。
行きと同じ商人の乗合馬車。
次も使うって、ただのリップサービスのつもりだったんだけどね。
まぁ、たいして本数走ってる訳じゃないし。
そりゃ被ることもあるか。
俺は最後の客だったらしい。
乗り込んで間もなく出発した。
馬車に揺られる。
良い旅だった。
途中、盗賊団に襲われるトラブルこそあったが。
おかげで小銭稼げたし。
それを差し引いても、ここ数年では最高だな。
帰るまでが遠足、的な?
俺はもうそんな年齢でもないけど。
移動中が危ないのはその通りだ。
どんなトラブルが起きたとしても、チートさんにかかればお手のものだが。
せっかくの旅。
最後まで馬車で行きたい。
途中で襲われて、対応遅れて馬車がおじゃんとか。
可能性はなくはない。
それで転移でひとっ飛びじゃ片手落ちだしね。
だから、珍しく警戒していた訳だが。
特に盗賊と出会わなかったし、近くにその反応もなかった。
ここら辺はあの盗賊のナワバリだったのかもしれない。
潰れたことに気づけばまた埋まるだろうが。
それまではしばしの空白地って所だろうか。
よかったな商人さん。
しばらくの間、少なくとも盗賊は気にしなくても良さそうだぞ。
そんなこんなで、帰ってきた。
ウーヌに無事到着。
大したトラブルもなく、のんびりとした旅路だった。
せいぜいちょっと腰が痛いぐらいか。
まぁ、馬車旅だしね。
これは仕方のない事だ。
冒険者ギルドにお土産でも渡しに行こうかな。
親しい冒険者は別に居ないんだけど。
酒場のおばちゃんには、かなりお世話になってるからね。
どぶろく擬きを飲ませてあげようかと。
あと、ついでに受付嬢も。
渡さないと文句言いそうだからね。
ま、一応お世話にはなってるし。
「おじさん!」
「ん?」
ギルドに入ると、受付嬢が俺を見つけるなり受付を飛び出してきた。
今、冒険者の対応してなかった?
めっちゃ焦ってるけど。
何か、あったのだろうか。
「どこ行ってたんですか!!」
「え、旅行に」
「そんなのどうでも良いんで、とにかくこっちです」
「いや、酷くない?」
「酷いも何もありません!」
「えぇ……」
「A級冒険者の方が、おじさんに話があるって」
「??」
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