港町 9

 受付を済ませると、最上階の部屋へと案内された。

 廊下からして、他の階と作りが異なる。

 一番人気の娘を朝までとか言ったからだろうな。

 完全に上客認定である。

 部屋に入ると、そこはスイートルーム的な?

 明らかに普通の部屋では無かった。

 前世も含め、こんな立派な部屋に泊まるのは初めてだ。

 めちゃくちゃ広い。

 ホテルの一室というより、そのまんま家って感じ。

 億ションみたいな。

 実際、不自由しないどころか快適に暮らせるだろう事が容易に想像出来る。


 ……これ、宿泊代別で請求されたりしないよね?

 この世界の娼館だと女の子の料金に含まれてることがほとんどなんだけど。

 ここまで豪華な部屋だと不安になる。

 ちょっと、怖くなってきた。

 まぁ、そうなっても払えるとは思うが。

 今更確認するのも情けないし、その時は勉強代かな。

 スイートに泊まる経験ってのも、悪い物じゃないだろうし。

 金もどうせ盗賊からのドロップ品だしね。


 ソファーに腰掛け、テーブルの上の菓子を手に取る。

 別に腹が減ってる訳じゃないんだが。

 手持ち無沙汰なのだ。

 豪華すぎて落ち着かない。

 今腰掛けてるソファー、これも革張りの物っぽく見えるし。

 テーブルに至っては継ぎ目がなく一枚の岩からの削り出しっぽい。

 高級品を知らないせいで断言出来ないのが情けないが。


 これを家のインテリアとして使ってる人もいるんだろけど。

 果たして、リラックスできるのだろうか。

 なかなか疑問ではある。

 少なくとも、俺には出来そうにない。


 まだ、それほど時間は経っていないと思う。

 俺がこの部屋に入って比較的すぐ、ドアがノックされた。

 早いな、もうき来たのか。

 正直ありがたい。

 この空間に俺1人は落ち着かないし。


 開けると、女の子が1人。

 この娘がこの店の一番人気の娘か。


「おじさんが指名してくれた人。で、あってますか?」

「あぁ、そうだよ」


 これまた美人さんだ。

 一番人気というのも納得である。

 行きつけの娼館で良くお世話になってる譲とはまたタイプが違う女の子。

 敢えて分かりやすい所を上げるなら尻、だな。

 一目でパッと分かるぐらい大きなお尻をしている。

 ちなみに、多分胸は向こうの方が大きい。


 大体ではあるが、ウーヌとこの町じゃ人気になる嬢の傾向も違う。

 向こうで人気なのは色白の化粧をしっかりしたタイプ。

 こっちで人気なのは小麦色の肌で化粧が薄いタイプ。

 あくまで俺の経験則だが。

 この娘も例に漏れず、日焼けした肌に薄化粧。

 ギャルって感じじゃ無くて、どちらかと言えば元気そうな印象を受ける。


 港町、だからだろうか。

 海の側なのだ。

 魔物のいる世界で、ビーチで日向ぼっこなんて習慣はないが。

 それでも、男達は日頃から海に出ている訳で。

 健康的に日焼けしてる女の子の方が、魅力的に映るのかもしれない。

 俺としても小麦色の肌は大歓迎。

 偏見マックスでいうが、性欲強そうじゃん?

 そういうの大好きなんだよね。


 性に積極的な女の子ってやつ。

 実在するかはともかく、男の理想ではある。


「朝までって聞いたけど、本当にいいの?」

「ん、何が?」

「だって、ご新規さんなのに……」

「嫌だった?」

「全然。ただお金結構掛かっちゃうし、本当にいいのかなって」

「なら良かった」


 ちょっと、ドキッとしてしまった。

 一番人気の娘だからね。

 ただでさえ忙しいだろうし、この仕事は生活の為にイヤイヤ働いてる女の子も結構いるのだ。

 そりゃお金が入るなら歓迎って子もいるだろうけど。

 当然、長い時間は嫌って子も居る訳で。

 しかも俺って新規客だし。


 この子は単純に俺のこと気にかけてくれただけっぽいけど。

 これで嫌って言われたらどうしようかと。

 いやお金の問題ではなく、ね。

 心の方が傷を負ってしまうのだ。

 事情は分かっていたとて、お金を払った上で女の子に拒否られるのは結構来る物がある。

 それ超えてNGでも出されよう物なら、数日は引きこもるまであるな。


 本当はどう思ってるかは知らないけど。

 少しでも積極的なこと言って貰えると、こっちとしてもテンション上がるよね。

 エッチな娘なんだなって。

 たとえリアルじゃないにしても。

 それを見せるのが仕事だし、俺たちもそれを見にきてる訳だし。


「それにしても、おじさんってお金持ちなのね。凄いわ」

「んな事ないよ」

「え? 自分で言うのもなんだけど、私の時間って結構高かったと思うんだけど」

「まぁ、今日は予定外のボーナス入ったからね。それで散財してるだけ」

「ボーナス?」

「臨時の収入があったって事」

「おめでとう! で、いいの?」

「もちろん。おかげで、君みたいな美人と一夜を共に過ごせるんだからね」

「おじさん上手」


 隣に座り、しなだれかかる様に体重を預けてくる。

 やっぱり女の子の体っていいな。

 触れるだけで、幸福感で脳が満たされる。

 今日は久しぶりにまともに働いたからね。

 疲れを取って貰わないと。

 まぁ、疲れた原因は盗賊というより主に馬車のせいだろうけど。


 腰に手を回し、その手が徐々に下に落ちていく。

 いや、他意はないよ。

 体重を預けてきたから支えようとしただけ。

 そしたら、手が自然とね。


「……エッチ」

「ダメかい?」

「うんん。私も触っていい?」

「もちろん」


 彼女の手が俺の腰に伸びてきた。

 両手とも。

 そして、自然と向かい合う。

 俺の膝の上に向かい合って座る感じだ。


 尻の肉厚を感じる。

 後ろから突いたら、さぞ気持ちいだろうな。

 ま、そこは要相談だろうけど。

 正常位以外はマイナーもいいとこだからね。

 恥ずかしいとかそう言う話ではない。

 許可を得ずにやったら普通に豚箱行きもありえる。

 それぐらいのレベルだ。


 性知識ってオープンに話す物じゃないからね。

 この世界じゃ、自慰行為をすると死ぬとかって言われるほどじゃ無いけど。

 文明の発展度合いによっては、冗談ではなくガチでこうなる事があるらしい。

 昔、動画か何かで軽く見た程度の知識だけど。

 地球でもそんな時代があったのだとか。

 ネットとは言わずとも、本を誰でも読めるぐらいじゃないとね。

 性の発展はそう簡単には進んでくれないのだ。


 現代の常識を異世界に持ち込むと碌な目に遭わない。

 それは娼館でも同じって事。

 実際の所、お金さえ積めば結構許してくれる娘も多いし。

 前世ならノーマルなプレイなんだけど、嬢の反応が違うから背徳感も相まってより興奮するというか。

 常識が違うというのは、別に悪い事ばかりでもない。

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