港町 8
町が変われば人も変わってくる。
隣町なのにこの町とウーヌで文化が違うのと一緒だ。
距離はそれほど離れていない。
でも、人の入れ替わりがかなり少ないから。
そうなれば必然的に、ってね。
まぁ、流石に人種まで違うって事は無いんだろうけど。
いくら人の入れ替わりが少ないとて、俺が今日来たみたいに馬車はある訳で。
言うて隣町だ。
元が同じか、違うにしてもかなり近い人種ではあるはず。
だから、そう見えるのは文化からくる違いが大きいのだろう。
服の違いはもちろん、メイクだって変わってくる。
女はメイクで化けるなんて言葉もあるぐらいなのだ。
そりゃ、そこの文化が違えば同じ様な顔立ちの女性でもまるっきり別に見えるよねって。
まぁ、こんな理屈なんてのはどうでもいい。
本当のところは知らないし。
あくまで全部俺の想像。
街並みを楽しめるってのと一緒。
隣町なのに、全く違う女の子を楽しめるのだ。
なんてお得な事だろうか。
それが全て。
それで、良いのだ。
さっきの店、すでに大通りから外れた場所にあった訳だが。
そこから少し奥に入って行く。
大将の店と同じ様な、大通りのとは違う地味な外観の店が並ぶ。
しばらく行くと突然雰囲気が変わった。
さっきまでとは打って変わって極端に派手な印象を受ける店構え。
大通りの店以上だろうか。
それに、かなり大きめの建物が多く立ち並ぶ。
ここが目的地だ。
風俗街、とでも言えばいいのか。
町の規模としてはウーヌの方が大きいが、これ系の店はこっちの方が充実している。
向こうじゃ数店舗並んでるだけだったからね。
見た目も規模もまるっきり異なる。
港町だから、だろうな。
勝手な憶測だが、漁師は遊び方が豪快なイメージがある。
娼館であろう建物が何軒も立ち並んでいる。
値段もコンセプトも様々。
向こうの街だったら迷わず行きつけに行くんだけど。
こっちにその手の店は無い。
だから、この中から適当に選ぶことになるのだが……
旅行先で店を選ぶ際の鉄則がある。
単純にデカい所、そして外観が綺麗なお店だ。
理由は単純、女の子がそれ基準で働くお店を選ぶから。
自分が働くと思って考えてみれば当然の事ではある。
ボロい店で働きたくは無い。
隠れ家的な優良店は男の浪漫だが、娼館に限ってはそんなものほぼほぼ存在しないのだ。
ここでおじさん目線に立っても意味がない。
確かに客はおっさんなんだけど。
店の質を担保するのは女の子の方だからね。
良く知ってる地元ならともかく、出先で冒険する意味もないし。
金に糸目を付けないならこれでオールオッケーだ。
建物が綺麗でデカく料金が高い。
単純だが、この手の店に行けば大体が当たりだ。
この法則を使って変に安いとこ探そうとすると地雷踏むけどね。
見た目だけ立派で料金安い店とか。
確かに客としては魅力的だけど、その分どこが削られてるのって話。
当然、女の子の給料が安い訳で。
そりゃ、良い娘は居ないよねっていう。
適当に散策していると、やたらとファンシーな建物が目についた。
煉瓦造りでこの町の雰囲気とはだいぶ違う。
それどころか、周囲と雰囲気が違うこの風俗街ですら強い存在感。
……ここにしようかな。
「いらっしゃいませ」
立派な門をくぐり店に入る。
まさに扉を開ければそこは別世界って感じ。
前世で言う、高級ホテルの様だ。
こりゃ、高いだろうな。
行きつけの店とはだいぶ雰囲気が異なる。
まぁ、ウーヌの風俗街自体がかなり落ち着いた物だからってのはあるだろうけど。
にしても、だ。
向こうじゃこんな建物一軒も無い。
しかし、店員の見た目は一緒だ。
向こうだと、やたら上質な服装が少し不自然に感じたが。
こっちだと建物とベストマッチ。
全く違和感がない。
にしても、チェーンでもあるまいに。
なぜ揃いも揃って同じ様な服装をしているのだろうか。
謎だ。
ま、別にいいんだけどね。
「一番人気の娘って空いてる?」
「もちろんでございます」
「じゃあ、その娘をお願い」
「ご指名でございますね。お時間はいかがいたしますか?」
「明日の朝までとか、大丈夫?」
「承知いたしました」
迷わず一番人気をお願いした。
この店に知ってる嬢なんていないしね。
後、フリーはちょっと怖い。
多分指名料とか高いんだろうけど、今の俺は無敵なのだ。
なんたって、ボーナス入ったからね。
どんな娘が来るのか……、今から期待で胸が膨らむ。
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