港町 2
俺が住んでる街より一回り程小さな門。
それをくぐり、やっと到着だ。
ビバ港町!
ただ馬車に乗っているだけの予定だったのに……
盗賊のせいで無駄に仕事してしまった。
たとえ疲れなくとも、休日に仕事なんて気分的には大きな損失。
これは、たっぷり癒してもらわなくては。
さて、この街に来た目的だが。
ま、結局は旅行なんで大した物じゃない。
ズバリ魚を食いに来たのだ。
お魚さんである。
刺身に、焼き魚に、煮魚に。
想像するだけで、今から涎が止まらない。
と言うのも、だ。
輸送技術の問題で、鮮度のいい魚なんてのは港町ぐらいじゃないと手に入らない。
冷蔵なんて夢のまた夢。
魔術師同伴なら可能なのだろうが、値段が跳ね上がる。
その手の高級品は貴族向け。
庶民のもとには降りてこない。
氷で物理的に冷やそうにも、それも結局はコストが嵩む。
まぁ、川魚なら向こうでも手に入るんだけど。
バリエーション不足とでも言おうか。
別に味は悪くはないんだけどね。
現代日本、豊富な水産資源に恵まれて育った俺を満足させられるほどではなかったって話。
街のメインの通りを歩く。
かなり日が傾いてるのもあってか、飲食店の大半がすでに開いている。
どこに行こうか。
よく旅行にこそ来るが、別に行きつけの店がある訳じゃない。
行き先は未定。
せっかくだし、ハズレの店を引くのは避けたい所ではある。
まぁ、何度か行ったことある店はあるんだけど。
そこに行けば少なくともハズレはない。
だから、結局はこうやって店を物色しながら歩くのが好きなのだ。
後は、リピートするほどじゃ無かったと言うのもある。
美味いは美味かったんだが……
前世のせいで舌が肥えちゃってるんだろうな。
特に、魚介に関しては。
本気でハズレを避けるならギルドで飲むって手もあるし。
旅行先に来てそれはどうなのって話ではあるが。
ハズレは無いが、当たりもない。
ギルドに併設される大衆酒場。
あそこは、満遍なく及第点を取って来るって感じのクオリティーイメージだ。
普段飲むにはいいんだけどね。
低ランクの冒険者がターゲットだろうし。
どちらかと言えば、コスパ重視なのだ。
街を見て回っていると、やはり感じるものがある。
同じ国。
しかも、馬車で1日でつく程度の距離。
それなのに街並みがガラリと変わる。
情報の伝達速度も遅ければ、人の往来の難易度も段違い。
だから、隣街程度の距離ですら独自の文化って物が形成されやすいのだろう。
別にその事について調べたことがないから詳しくはしらないんだけど。
でも、個人的にはお得だと思う。
ちょっと移動しただけで、色々な物をガラリと変えられるって言うのは。
いい気分転換になる。
この街の雰囲気はお気に入りだ。
じゃなきゃ何度も来たりしない。
潮風も、海の香りも。
安心すると言うのか、ほっとするって言うのか。
昔のことを思い出す。
前世の、さらに昔。
幼かった頃。
しょっちゅう海に遊びに行っては、体をベトベトにしていた。
ま、移住する気はないんだけどね。
こういうのは旅行で来るからいいのだ。
住むとなると話は別。
いくら海が近くて新鮮な魚が食べられるとは言っても、ね。
天候は荒れやすいし。
津波も怖いし。
潮風は家の天敵だ。
多分、隣町ぐらいがちょうどいい距離感なのだ。
「やってる?」
「あいよー」
しばらく道をぶらつき、適当な店にあたりをつけた。
いい店を見分ける方法は単純。
ズバリ、現地のおっちゃんが入ってるかどうか。
並んでるなら、それがベスト。
九割方、これで成功するイメージだ。
たまに不発もあるが、少なくともハズレは無い。
軍資金もたっぷりあることだし……
久々に、遠慮なく行きますか。
ドカ食い気絶もたまにだったら体も許してくれるはず。
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