第4話 コモド

「輝斗、これ見ろ」

そう言って歩きながら先生は懐から写真を数枚取り出した。

渡されたのは人の写真。

「なあに?それ」

「ただの魔人の写真だ」

「なんだよ、面白くないなぁ」

そらさんは興味がなさそうな顔をした。

僕は写真に視線を落とす。


どれも同じような写真だった。

全員白髪で、正気を失ったような目をしている。

何か叫んでいるものもいれば、死体となっているものもいた。

もうこれは人とは呼べないのかもしれない。

分けようと思えば2種類に分けれる。

角の生えているものと、頭の上に輪があるもの。


「先生、この写真は?」

「……」

「……」

なんで2人して黙るんだよ。


『それは輝斗たちの成れの果てだね』


写真を除き見てうんこが言った。

「それってどういう……」

「輝斗?お前の悪魔がなんて言ったんだ?」

「僕らの成れの果てだって……」

なんだよ2人して僕のこと見て……

「お前の悪魔は知ってたんだな、そのこと」

「え?」

「とりあえず、これは部屋に着いてから話すか」

気づいたら僕らはある部屋の前まで来ていた。

先生は鍵で部屋を開けて中に入れてくれた。

「俺の部屋だ、そこら辺にでも好きに腰掛けとけ」

そう言われて小さな机の前に座る。空さんはベッドに勝手に寝転んでた。

それにしても汚ったない部屋だ。そこらじゅうゴミ、ゴミ、ゴミ。何年掃除してないんだよ。ゴミの上からギターとか置いてあるし。ってかあの見た目でギターとか弾くんだな。

「さて、話の続きだ。お前の悪魔の言う通り、それは俺らの成れの果てだ」

「というと?」

「続きは私が話そうか、瑞雲みずも兄。何も知らないもんね。うーん、何から話せばいいか……。私たち『角憑き』、『輪っか憑き』にはそれぞれ合う合わないがあるんだよ。相性ってやつだね。んー、難しい話だけどね、その、相性が良ければ良いほど、私たちは悪魔、天使の力を使いこなせるんだ。相性が悪い人はまずまず使えない。相性が良い人は翼とかも借りれたりして空を飛べたりする者もいるよ。瑞雲みずも兄もその1人だね」

先生、空飛べるのか。どんな感じなんだろ。

「その代わり、制限がある。制限がなかったら今頃、私たちは最強だ。私たちはね、その力を使えば使うほど人間じゃなくなってくんだ。悪魔や、天使に近づいてくんだよ。それこそ、髪の色素が抜けたり、角が生えてきたり、天使の輪ができたり。そうして私たちの体が限界を迎えるとこの写真のような『魔人』と呼ばれるものになるんだ。簡単に言うとね、力を使えば使うほど寿命か縮んでくってわけ。あと、相性が悪いもの程早く死ぬね。瑞雲みずも兄も私も、そして、君も相性が良いからまだ死んてない。あぁ、私たちはあと何年生きられるんだろうね」

そう言った空は笑っていたものの、少しだけ寂しそうに見えた。

「俺は、あと5年は生きれる……といいな」

「先生、今年いくつですか?」

瑞雲みずも兄は29、私は22」

「まだ全然若い……」

「学生には言われたくないな。俺ら幹部はしょっちゅう使ってる。だから幹部の平均寿命は35弱と言われている。だから俺も生きられてあと5年って感じだ」

「……」

「……」

「……」


「あーあ、私こういう暗い話嫌いだからなぁ〜。もっと、気楽に行こうよ。……あ、そうだ!面白い話あるんだった!」

そう言って、さっきの暗さがなかったかのようにベットから勢いよく飛び降り、先生に飛びかかった。

「うわっ」

そんな情けない声とともに先生が倒れる。埃かは分からないが黒いものがぶわっと舞い上がった。

襲いかかった空の手には先生がいつもつけていたマスクがある。

「てるてる〜!見て見て!!」

そう言われてマスクを見る。

「違う、ちがぁう!そっちじゃない!瑞雲みずも兄の方!」

勢いよく先生の方を指さした。

「……何してるんですか」

……先生は必死にマスクで隠れてた手で口元を隠す。

「……なんでもない」

なんでもないわけないだろ、そんな必死に隠して。

「ほらほら、瑞雲みずも兄、そんなことしないで」

笑顔で言う割に、すごい力で先生の手を剥がそうとする。怖い。

「おい、やめろっ!!」

そう言って先生が空さんに押さえつけられていない方の手で空さんを殴った。当たったら大怪我しそう……。


「それ、幻像だよ、そんなのも分からないとは瑞雲みずも兄、視力落ちたんじゃない?」


先生の拳は虚しく空を切った。

「口からやっと手、離したね」

そう言って空ぶった手を楽しそうに捕らえた。

「ほらほら、見てよ!てるてる!この顎!」

顎?

「おい!見るな!!やめろ!あぁぁぁぁぁ」

そんな叫び声も虚しく、僕は先生には申し訳ないが、興味心に勝てず、見た。


「……C?」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「でしょ?面白いでしょ?瑞雲みずも兄、先週から顎にアルファベットでき始めたのww」

……ん?どういうこと?

「まず最初に、瑞雲みずも兄の悪魔がアルファベット占いとか言い出して顎に書き始めたんだってさ。ww幹部にもなってまだ自分の悪魔に振り回されてるなんて、恥でしかないよねww!!」

「うるせぇ!!笑うな!!お前もだぞ!輝斗!!」

仕方ないでしょ、笑うしかないよ、それww。しかもいい字体で書いてあるのがじわじわくる。

「最初は、確かGで、んで、その次がAで……」

「なんで知ってるんだよ!!やめろっ!話すな!!黙れ!!」

「で、そっから、ずっとCだよね、今日で9日目くらいだっけ??」

煽るように覗き込む。

「なんで知ってるんだよ!!個人情報!!プライバシー!!」

「逆に、マスク一つで私から隠せると思ってたなんてね」

「あぁ!!もう!!」

そう言ってマスクを取り返して部屋から出ていった。


「面白いでしょ?瑞雲みずも兄」

「そうですね、意外な一面が見れて良かったです」

先生には悪いが、面白かった。真面目になってるところが特に。

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